バイトが終わると、直ぐに荷物を取りに行き、若井に会う前に外に出た。
若井から涼ちゃんが誕生日だと聞かされ、 何か買って行った方がいいかとも思ったけど、最近避けているから気まずさもあり、結局何も買わずに帰って来た。
大森
?
玄関の鍵を開けようとすると、いつも閉まっているはずの鍵が開いていた。
少し変に思いながらも玄関のドアを開けると、ドアの隙間から中の話し声が聞こえてきた。
藤澤
お願いだから帰って!
謎の男
なんで?
謎の男
折角寄り戻してやるって言ってんのに、酷くない?
涼ちゃんが誰かと言い争っているような感じだ。
謎の男
どうせ一人で住んでるんでしょ?
謎の男
じゃあ、最初の約束通り俺と一緒に住めばいいじゃん。
藤澤
やだ!離してってば!
ドアを全部開けて、最初に目に飛び込んできたのは、涼ちゃんが知らない男に肩を掴まれて壁に押付けられている光景だった。
大森
手ェ離せよ!
その光景に一気に頭に血が昇ったぼくは、気付いたら相手の男に掴みかかっていた。
謎の男
は?まじ?
謎の男
もう新しい男居んの?
大森
お前誰だよ!
大森
涼ちゃん嫌がってんだろ!
ぼくは涼ちゃんから男を引き剥がすと玄関の方に押しやった。
大森
出てけよ!
謎の男
なんなのお前?
男はお返しとばかりに、ぼくの胸ぐらに掴みかかってきた。
謎の男
てか、涼架は誕生日に家に居てくれないようなコイツの何がいいの?
藤澤
…じゃねーよ。
謎の男
なに?聞こえないんだけど。
藤澤
元貴に触ってじゃねーよ!
涼ちゃんはそう叫ぶと、ぼくの胸ぐらを掴んでる手をぼくから引き離し、玄関のドアを開けると男を押し出した。
藤澤
二度と来んな!!!
バタン!
ぼくはこんな声を荒らげる涼ちゃんを見た事無くて、怒りを忘れ何も出来ずにただ呆然としていた。