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真冬の冷たい風が、 教室のカーテンをなびかせる。
すっかりオレンジ色に染まった夕焼け空は、
私の胸を高鳴らせる。
新一
そう私の名を呼んだのは、
幼馴染の高松新一。
家が隣同士で、生まれた頃からずっと一緒に 過ごしてきた。
新一はここ数年で一気に身長が伸び、 声も低くなった。
あんなにずっと近くにいたのに、
いつの間にか大人になった新一を見て
少し焦る今日この頃。
RIO
新一
新一
新一
RIO
RIO
新一
新一
RIO
新一
目の前で笑った新一の顔が眩しい。
いつからだろう?
こんなにも彼を愛おしく想うようになったのは。
新一
RIO
──その時、外から何やら歓声が聴こえてきた。
新一
窓から下を眺めてみると、 校庭にはサッカー部員の姿。
RIO
男子生徒A
男子生徒B
男子生徒B
昴
男子生徒A
昴
昴
男子生徒B
男子生徒A
昴
昴
昴
男子生徒B
昴
昴先輩は、ひとつ上の学年で、 サッカー部ではキャプテンを務めている。
廊下で会う度に優しく微笑んでくれて、 全生徒にとっての高嶺の花だ。
RIO
RIO
新一
RIO
新一
RIO
呆れつつ、 少し拗ねたような新一の表情に 不覚にもときめいてしまう。
新一
RIO
新一
新一
RIO
そう言いかけて、やめた。
私に問い掛けたその声が、 いつもより真剣だったように感じたから。
RIO
新一
新一
途端に心臓の脈が速くなる。
少しでも近付いたら、 彼に聞こえてしまいそうなほど……
新一の目を見ることさえもままならない。
──どうしてそんなこと言うの?
──どうしてそんな顔をするの?
まるで私のこと、好きみたいじゃん……。
“ 好き ”
自分の一方的な想いだと 封じ込んでいた言葉なのに、 それが今にも溢れ出しそうになる。
期待と緊張が高まっていった。
けれど──
RIO
私は逃げ出した。
RIO
恋心に蓋をした。
これまでと変わらない温かい光を求めて。
気持ちを悟られまいとするかのように。
新一
が、その瞬間
新一の瞳が悲しげに揺れたのを 見逃さなかった。
新一
消え入りそうなほど細い声だった。
それでもこの教室に確かに響いた。
しまった、と思った。
気付いた時には、新一に腕を掴まれていた。
もう“ 男の子 ”ではない“ 男 ”の力。
RIO
新一のこんな顔、知らない。
言葉も出ない。
新一
次の言葉を待った。
けれど、新一もまた、何かを迷っていた。
期待した言葉が出てくることはなかった。
その時間は長かったのか、短かったのか。
私たちだけの世界のように思えた。
2人の沈黙を打ち破ったのは、 部活動終了時刻を知らせるチャイムだった。
新一
新一の一言で我に返った私は、 戸惑いながら小さく頷いた。
心の中で渦巻いているのは、 ちょっとした後悔と罪悪感。
私は今、新一に言葉を呑み込ませてしまった。
理由は分かる気がする。
要するに怖いのだ。
今のあたたかい関係が壊れるのが。
傷つくのが。傷つけるのが。
新一が好きであることは真実なのに。
それより大切なことなんてないはずなのに。
新一
RIO
新一
新一
冷たいようで優しさのあるセリフに 私の心は締め付けられた。
新一
新一
……うん。そうだ、いい。このままでいい。
今のまま、このままの心地よい関係が、 もうしばらく続いてほしい。
RIO
新一
あっという間にいつもの笑顔に戻って 教室を出ていった新一。
さっきの言葉の続きは分からないけれど、 ひとつだけ分かることがある。
きっと私も新一も同じなのだろう。
ただお互いが大切で、失いたくない。
RIO
外はもう、陽が沈もうとしていた。
行き場の無い感情を、 どこにどうぶつけたらいいのか
考えても答えは出なくて、 私は新一の机に “ ある2文字 " を書き残した。
少しラクガキがある机の左下。
気付かれないのではないかと思うほど 小さな文字で。
私は新一とのいつかの未来を思い浮かべながら 彼のあとを追った。
どうか、新一との明るい未来が続きますように
その時が来たなら、 文字ではなく言葉で伝えられるだろうか。
──新一が好きだと。
*END*