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あの日から数年。 綾玲輝燦灯(アレキサンドライト)は、 もう存在しない。
今の名前は—— 綾小路清隆。 中学一年生。 ホワイトルームの生徒だった。
試験管
教師が紙を机に置く。 清隆は目を向ける。 全科目満点。 運動能力もトップ。 いつも通りだった。
試験管
教師は満足そうに笑う。 だが。 清隆は何も感じなかった。
褒められても。
期待されても。
嬉しくなかった。
感情を出す必要がなかったから。 ホワイトルームでは、 感情は弱さだった。
友達もいらない。
家族もいらない。
愛もいらない。
ただ結果だけが求められる。 そんな世界だった。 放課後。 清隆は一人で廊下を歩く。
誰とも話さない。
誰も話しかけない。
それが普通だった。 部屋へ戻る。 机。 ベッド。 本棚。 無機質な空間。 そこでふと。 引き出しを開ける。 奥にしまわれている一枚の写真。 九つ子だった頃の写真。
母・愛麗。 アメジスト。 ダイヤモンド。 サファイア。 アクア。 ルビー。 レピドライト。 フローライト。 エメラルド。
そして自分。
清隆は黙って見つめる。 胸の奥が少しだけ痛んだ。 だが。 表情は変わらない。 泣かない。 泣けない。 泣き方を忘れたから。
綾小路清隆
静かな部屋。 誰もいない。 写真の中だけが。 昔のままだった。 しばらくして。 清隆は写真を戻す。 そして小さく呟く。
綾小路清隆
それ以上の言葉は出なかった。 会いたいのか。 心配なのか。 元気でいてほしいのか。 自分でも分からない。 ただ一つだけ分かる。 今でも。
忘れてはいない。
愛麗のことも。
兄弟たちのことも。
全部
心の奥底に残っている。 たとえ誰にも見せなくても。 たとえ感情を失ったように見えても。 消えてはいなかった。 窓の外を見る。 夕焼けが広がっている。 その空のどこかで。 兄弟たちも生きている。 そう思うと。 ほんの少しだけ。 胸が温かくなった気がした。
コメント
1件
第14話、読んだよ〜!🌙✨ タイトルからもう刺さる…「愛も忘れた天才」か…😢💔 清隆、完全に感情ロストしてる感じで辛いけど、でも写真を見つめるシーンが静かに切なかった…! 「みんな」って一言に、全部詰まってる気がするよ…。 忘れたわけじゃないって、ちゃんと心の奥にあるって分かってるのが、またエモい…😭 九つ子の頃の温かさと、今の無機質な部屋の対比がぐっときた。 続きもすごく気になる!清隆の本当の気持ち、いつか誰かに届くといいな…🌸