この作品はいかがでしたか?
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泉
とっさにポケットに手を入れて暖をとる。
もうすっかり冬だ。 朝の冷たい空気で鼻がじんじんする。
雪降ってるし… 傘を差す程じゃないけど。
駅員
今日の僕は、きっと死んでるのと同じだ。
なぜなら、いつものこの電車に 先輩がいないから。
それは先輩が今日学校を休むということを表している。
実際、さっき風邪で休むと連絡があった。
…今日は学校に鬼ほど行きたくない。 先輩がいないのなら、今日僕がする努力や我慢 全てが無意味だ。
だけどそんな僕を時間と電車は 待ってくれやしない。
先輩という、気力の糸を繋いでくれていた存在が急に居なくなるのは、 僕の一時的な死を意味していた。
……たった1日会えないだけで… ほんと…クソ弱いな…自分……
泉
すると、右肩にぬくもりを感じた。
普段ならこのぬくもりは きっと先輩のものだが、 残念ながら正体はハゲあがった ただのおっさんであった。
…寝ている。 ぺしぺししても起きないから 反対側に押し返そうと思ったが、 反対側には気弱そうな女子高生がいたのでやめた。
結果、最後までおじさんのぬくもりと共に通学するハメになった。
いや、マジ
泉
嫌なことは重なるということで。
電車を降りたあとも、やけに虫に遭遇したり、電柱にぶつかったり、いつもの道が工事中だったりと災難続きだった。
もう今日ダメだわこれ。 いや、わかってたけど。
俯きながら教室に入って席についた。
椅子が冷たくて若干イラついた。
泉
早く帰りたい……
会いたい…先輩に……
お昼になった。
いつもなら先輩がニコニコしながらやってくる頃だが、今日はそんな可愛い姿も見れない。
無心でお弁当を取り出して蓋を開けた。
ひとくちめを口に運ぶ。
味がしない。
ピロリン♪
泉
スマホから着信音が鳴り、 即座に確認した。
泉
先輩のLINEも確認したが、 僕が朝送った返事に既読はついていなかった。
泉
途端に寂しさが増す。
こういう時は、やけに周りの会話が耳に入る。
教室の人達
教室の人達
教室の人達
教室の人達
泉
泉
泉
泉
だめだ
これ、今考えちゃいけないやつだ
てか今まで考えないようにしてたのに
先輩の卒業とか、そんな
そんな、
泉
まだ一口しか食べてないお弁当を、 乱暴に鞄につっこんだ。
机に突っ伏して、 現実から逃げるように目を瞑った。
……
僕を呼ぶ声がする……
夢…?
だってこの声、先輩の……
先輩の声……
雪入先輩
涙で滲む視界の真ん中に、 先輩の姿があった。
雪入先輩
雪入先輩
キーンコーンカーンコーン…
雪入先輩
雪入先輩
慌ててコケそうになる先輩を 放心状態で見送った。
一瞬幻覚なのかと思った。 もともと幻レベルに天使な人だけど。
泉
泉
ぎゅっと拳を握りしめた。
溢れ出る喜びを抑えるために。
雪入先輩
泉
やべぇ……セロトニンやべぇ……
雪入先輩
泉
雪入先輩
雪入先輩
泉
雪入先輩
泉
手を握られた。
雪入先輩
雪入先輩
雪入先輩
泉
泉
そんなの、僕も。
雪入先輩
僕も僕も僕も僕も僕も僕も僕も。
きっと先輩が想像するより遥かに。
雪入先輩
てか僕も把握しきれないほど。
雪入先輩
先輩のことが
雪入先輩
先輩のことが
雪入先輩
泉
雪入先輩
泉
雪入先輩
雪入先輩
泉
雪入先輩
泉
泉
泉
雪入先輩
泉
貴方に言われたくないですけど!?
雪入先輩
雪入先輩
泉
泉
泉
泉
雪入先輩
泉
そんなかわいい顔で喜ばれたら… ねぇ…?
雪入先輩
泉
静かな廊下の踊り場に、 鉛筆の描く音だけが響く。
てか当たり前だけど… 今僕、先輩に顔めっちゃ見られてる状況なんだよな…
なにそれ今すぐ爆発したい…
ほんとは絵に集中してる 先輩の顔を拝みたいけど、 目が合うのが恥ずかしいので とりあえず横目で窓の外を見る。
朝よりも強く雪が降っている。 やべ…傘持ってきとらん……
……寒いけど、雪は嫌いじゃない。 先輩と出会ってから、 ちょっと好きになった。
……それにしても、 なんだか似顔絵の話を始めてから、 若干先輩の元気がない気がする。 気のせいかもだけど……
雪入先輩
泉
雪入先輩
泉
雪入先輩
泉
雪入先輩
雪入先輩
泉
そうして見せてもらったのは、 なんかスッッゴイ綺麗で 神々しくて、 実際より100倍くらい美化された 僕だった。
泉
クッッッッッソ上手いんやが…?
雪入先輩
泉
雪入先輩
泉
泉
雪入先輩
先輩の腕に包まれた。
いつもの事だけど、 未だに慣れない。
…肩が濡れた。
泉
雪入先輩
先輩が泣いてる。
泉
雪入先輩
雪入先輩
雪入先輩
泉
こんなに上手いのに…?
泉
雪入先輩
雪入先輩
雪入先輩
雪入先輩
ついに耐えきれなくなったように 絞り出すような掠れ声。
雪入先輩
まっしろな睫毛と青い瞳が 大粒の涙で濡らされた。
その粒は、逃げるように流れる。 先輩を一人残して。
雪入先輩
雪入先輩
ぼくは、
雪入先輩
素人が無責任に褒めたせいで 泣いている先輩に対して
雪入先輩
何もできなかった。
泉
雪入先輩
ぽふっ、と僕の肩に顔を埋めた。
雪入先輩
雪入先輩
雪入先輩
雪入先輩
しばらく静寂が続くと、 先輩はそのまま寝息をたて始めた。
泉
なんでって。
好きだから。
そう言ったら先輩は、
どんな顔しますか?
泉
_先輩の額にキスをした。
恥ずかしさや罪悪感より 先に涙が出た。
なんでずっとしたかったことが できたのに、こんなに悲しく なるんだろう。
1回すれば満足できると思ってた。 でも実際はもっとしたくなる だけで、つらくて、 つらくて、
つらくて
僕、もう
泉
泉
泉
泉
ただ、泣いた。 先輩がまだ眠っているうちに。
もっと早く、先輩と出会って いたかった。
こんな雪の日に泣いたら、凍る。
こんなことなら、最初から__ …なんて思ってしまった。
好きになってしまって ごめんなさい
先輩
コメント
2件
切ない…幸せになって…(;▽;) いや本当に絵が綺麗すぎる…😭 泉さんがどうやって今の自分になったか気になりますね…!