類
ここが…僕のいた研究所だ、
体中の細胞が、ここに入るのを拒絶しているのが分かる。
類
大丈夫……怖くない…僕はもう、人間なんだ…大丈夫、大丈夫…
もしもまた、人間じゃなくなってしまったら?
類
ッ……
怖い
怖い
怖い
類
落ち着け…大丈夫、大丈夫…
見たところ、廃墟になってから何十年も経っているようだ。
類
そりゃそうだ…僕がみんな、殺したんだから…
類
大丈夫…博士はもういない…僕に痛いことする人達は、もういない…
分かっていても、足は竦んで動かない
類
ぁ…
急に力が抜け、その場にへたり込んだ。
類
ぅ…うぅッ…
司
おい、大丈夫か?!
類
えっ……?
聞き慣れた声に思わず振り返る。
類
司……くん?なん、で…
司
寧々から聞いた。それより、どうしたんだ?!
類
あ…えっと、
類
怖…くて。動けないんだ…
司
…まさか、お前にも怖いものがあったなんてな。
司
肩を貸してやろう。立てるか?
類
あ……う、ん。すまないね。
司
このくらい構わん。ほら、帰るぞ。
類
うん…けど、行かないと…
司
何故だ?そんなに震えて…無理しなくていいんたぞ。
類
あそこには…絶対何かあるはずなんだ。それでこそ、「能力」について分かることがあるかもしれない。
司
「能力」について…とは?
類
僕の推測だけど、「能力」は潜在的なものだ。つまり、僕らが「能力」を持ったのには何か理由があるはずなんだよ。
司
む…「能力」を持った理由なら、俺が国も何もかも全てを憎んで奪ってやる…と思ったからじゃないのか?
類
それは「能力」が"発動した理由"だよ。持った理由じゃない。
司
むぅ……なるほどな。
類
よく考えてみて。そもそも、「能力」ってなんだい?
司
むぅ…考えたこと無かったが、確かにおかしな話だな。
司
なんの為に「能力」なんてものがあるんだ…?悪魔や魔人ならまだしも、俺たちは人間だしな…
類
「能力持ち」の人間なんて滅多にいない。なら…何故、僕らには「能力」があると思う?
司
う…うぅむ…
類
僕が思うに、全て仕組まれたことだったんだよ。「能力」を発動し、「終焉」の秘宝で願いを叶えるまで、全てが…
類
ん…?となると、「終焉」の秘宝で願いを叶えさせた理由はなんだ…?
類
「終焉」の秘宝は、「終焉」の悪魔の魂を四つ封印したもの…願いが叶うとそれらは消えた…ということは、封印が解けた?
司
類?
類
………………もしかして、
司
なんだ?何か分かったのか?
類
…僕らはとんでもない事をしてしまったのかもしれない、
司
?
類
もしこの推測が正しかったら…
類
第二次悪魔大戦が始まる。
司
な…ッ?!
類
もしかして最初から…いや、会う前から…
類
…完敗だね。
司
なんだ?!全く話が読めんのだが?!
類
ねぇ、司くん。おかしいと思わないかい?
類
カイトさんは、「終焉」の悪魔に魔力を半分与えられたから、悪魔と同等の力を手に入れたと言っていたね?
司
ああ…確かに以前聞いたような…
類
いくら「終焉」の悪魔とは言えど、魔力を半分与えられたくらいじゃあ、せいぜい500年程しか生きられない。
類
悪魔の平均寿命は1000年だからね。
類
けど、カイトさんは700年以上は生きてる。
司
…つまりは、何が言いたい?
類
カイトさんは多分_
カイト
……ふー、疲れた疲れた
カイト
あー…けど、これでもう終わる。
カイト
長かったけど…彼女との約束をようやく果たせる。
類
カイトさんは…悪魔だ。
司
んなッ…?!
カイト
ここまで全て計画通り…
カイト
だけど…困った。類くんには気付かれたかもしれないな…
カイト
ふふ、流石僕の弟子。優秀だね。
カイト
けど…厄介なのは冬弥くんだな。
カイト
あの子は彰人くんに執着している…僕の計画には協力してくれないだろう。
カイト
いっそ彰人くんを使って脅す…?
カイト
……いいや、冬弥くんに手を出したら彼女に怒られるな。辞めておこう。
カイト
どのみち、人間界は終わりだ。
カイト
彼女が望んだ通り…悪魔と人間が共存出来る世界を作り直すんだ。
司
カイトさんが…悪魔…
類
その可能性が高い。
司
それで、第二次悪魔大戦とはどういう事だ?!
類
恐らく、近々悪魔達がまた人間界に攻めてくる。
類
600年前と同じようにね、
司
何故だ?!
類
「終焉」の呪いを僕らが解いてしまったからだよ。
司
「終焉」の呪いを……?
類
願い事、叶えたろう?
司
まさか、あれが……
類
まぁでも、僕らは気にすること無いと思うよ。
司
な、何故だ?!戦争が始まるのにか?!
類
だって、秘宝に願ったじゃないか。
「俺は…俺たち4人が、幸せになれる世界を創りたい。」
司
!!
類
ね?
司
たし…かに、願った、
類
だから、僕らに危害が加わることはない。それに、僕らが幸せになるためには1度この世界を滅ぼした方がいい…そうも思わないかい?
司
…
司
なるほどなぁ、、
司
確かに…それはいいなぁ…
類
…司くん。僕はね、君が好きなんだよ。敵味方関係無くね。
類
だから…君が何を選んでも、僕は君の意思を尊重するよ。
類
ねぇ、君はどうしたい?
司
……俺、は
司
俺たち4人で…幸せになりたい…
類
うん。
司
けど……誰かが死ぬのは…嫌だ、
類
うん。
司
だから…
司
戦争を止めて、俺たち4人で幸せになりたい!
類
…「強欲」の君らしいね。
類
フフッ、仰せの通りに。
司
類、その為にはどうしたらいい?
類
そうだね…まず、えむくん達の所へ戻ろうか。
類
帰ったら、即刻作戦会議だ。
えむ
えぇえぇええ!?!?
えむ
せ、戦争?!そんなの、やだよ!!
寧々
て、てことは、世界滅亡も有り得るって事?
えむ
やだやだぁ!!みんなと一緒にいる!!
類
2人とも、落ち着いて。
類
僕らが秘宝に願ったこと、忘れたのかい?
えむ
秘宝に願ったこと…?
「私…ずっと、みんなで楽しく笑顔で過ごしたい!」
えむ
みんなで楽しく笑顔に過ごすこと!
類
そう。だから僕らが戦争に巻き込まれることは無いだろう。
寧々
そっか、秘宝に願い事したから…
寧々
でも、だったら私たちには関係ない話だよね。
類
そう、そうなんだよ。でもね、
司
…俺は、人が死ぬのを見たくない
えむ
司くん…?
司
だから、戦争を止めて、その後に4人で幸せになる。
司
お前ら、手を貸してくれるか?
えむ
もちろんっ!みんなでニコニコ作戦だね!
寧々
ふーん…まぁ、司らしいね。
寧々
嫌だなんて言うわけないでしょ?あんたの無茶振りは今に始まったことじゃないんだから。
司
お前ら……
類
それだけ、君の人望は厚いんだよ。
類
フフ、我らが座長さん♪
司
…ああ!
寧々
それで、戦争ってどう止めるの?
司
……………類!
類
はいはい。
類
まず、僕らの能力を取り戻そうと思う。
えむ
能力を?
寧々
けど…どうやって?
類
恐らく、「能力」自体はまだ僕らの中に潜在しているはずだ。だから、それをもう一度目覚めさせる。
司
もう一度…あの思いを、体験するのか?
類
……ああ。そうなるね。
えむ
ぇ…
司
…
類
さぁ、どうする?
司
やるに決まってるだろう。
えむ
私もっ!やるっ!
類
うん、そう来なくちゃ。
寧々
ねぇ、私はどうすればいいの?
寧々
私は類の「能力」のただの依り代。私に「能力」は潜在してない。
類
そうさ。だから、寧々には別にやってもらいたい事がある。
寧々
分かった。どうすればいい?
類
ちょっとした"おつかい"をして来てくれるかい?
寧々
ちょっとした"おつかい"…?
類
うん♪
司
それで…どうやって「能力」を目覚めさせるんだ?
類
ここに、それぞれの「能力」に合った部屋を用意したんだ。
えむ
わ〜!扉が浮いてる!
類
この扉の先には、当時とは違うけれど、「能力」を発動させるための条件が揃っている。
司
なるほど…
類
期限は3日。耐えられなくなったらすぐに扉から出ること、いいね?
司
承知した!
えむ
了解っ!
類
じゃあ…お互い、無事を祈るよ。
類
司くんはこの扉、えむくんはこの扉だ。
司
よし……
えむ
れっつごー!
彰人
なるほどな。結局、何も分からなかったのか。
こはね
うん…
杏
じゃあ、こはねのお母さんって誰なんだろう…?
こはね
分からないんだよね、
冬弥
もしかすると…小豆沢も、人では無いのかもな。((ボソッ…
彰人
え?
こはね
あ、青柳くん、それってどういう…?
冬弥
…分からない、
彰人
またお得意の"勘"か?
冬弥
そう…なのかもしれない、
杏
うーん、ハッキリしないねー
寧々
あ、あの…!
こはね
あっ、く、草薙…さん?
冬弥
ピクッ
彰人
こら、冬弥ステイ!
冬弥
…
杏
どうしたの?というか、1人って珍しくない?
寧々
えっと、あの、とにかく聞いて欲しくて…
寧々
青柳も…ごめん。あんたからしたら、私のこと許せないと思うけど、協力してほしい。
冬弥
…
こはね
協力って?何かあったの?
寧々
だ、第二次悪魔大戦が始まるかもしれないの…!!
杏
第二次悪魔大戦?!?!
冬弥
?!
こはね
え!?な、なんで?!
寧々
とにかく説明するね、
こはね
か、カイトさんが悪魔?!
寧々
これは類の推測…だけど、かなり濃厚な仮説らしい。
冬弥
悪魔…
彰人
なんか気付かなかったのか?
冬弥
悪魔の気配は、した。けど、それは祖母の魔力を半分も持っているからだと…
寧々
そう。だから類も気付かなかったらしい。
寧々
(類…相当悔しそうだったな。「あれだけ近くにいたのに」って)
杏
それで、協力って何すればいいの?!
寧々
私たちと、戦争を止めて欲しい
彰人
戦争を止める……
寧々
この戦争を止めるには「能力」が必要なの。だから……!
こはね
もちろん、協力するよ!
寧々
ほ、本当…?
こはね
うん!こんな能力だけど…少しでも役に立てるなら!
杏
私もこはねに賛成!
彰人
ま、俺も異議なし
冬弥
彰人が協力するなら、俺もする
寧々
あ…ありがとう!!
寧々
とにかく…私たちの基地に来て欲しい。そこで類に作戦聞かなきゃ。
こはね
分かった!
杏
よしっ!世界救うぞ!!
杏
…って、意気込んで来たけど、、
司
ヒュッ、ヒュッ…ゲホッ!
えむ
ぅ"ッ……グスッ、ヒグッ
類
カハッ、ゴホッ、ゴホッ!
杏
ど、どういう状況…?!?!
彰人
おいおい…な、何があったんだ?
寧々
えむ!!類!!司!!大丈夫?!?!
えむ
ね…ねちゃ、ヒグッ
寧々
何があったの?!
司
扉から部屋に入って…能力を目覚めさせようとしたんだ、ゲホッ
類
…再び目覚めさせようとすると、体が拒絶反応を示すんだ。だから、1度目覚めた時よりも、条件がしんどくてね…
寧々
わ、分かったから!取り敢えず落ち着いて…!!
寧々
お、お水とか持ってくるから!!
司
すまない……
杏
(凄いな…自分たちの野望のために、そこまで…)
杏
(…悔しいだろうな、)
能力「共感ーシンパシーー」発動
司
ゲホッ……ん?
類
ゴホッゴホッ……おや、
えむ
あれれ?
杏
え?!な、何?!
こはね
あ、杏ちゃん!今の…?
類
驚いた…「共感」は魔術も無効化出来るのか!
杏
え?!え?!
類
今のは君の能力だろう?
杏
そ、そうですけど!使おうと思った訳じゃなくて…えっと、そもそも私の能力は相手の心臓部分に触れなきゃ発動しないし…
司
ふむ…けど、今のは確かに能力だ。
えむ
杏ちゃんすごーい!!
杏
え、えへへ。そうかな?
彰人
けど、発動条件を無視するなんて出来るのか?
類
フフ、何言ってるんだい?君は僕達の能力を見たことが無かったかな?
彰人
はぁ?
冬弥
確かに…類さん達は、どこでも自由に能力を発動していたような、
こはね
た、確かに…けど、青柳くんも自由に発動してた気がするけど…
杏
そういえば、そうかも!
冬弥
いや、「虚空」も一応は条件付きだ。
彰人
え、そうなのか?
冬弥
ああ。ただ、その条件を簡単に満たしてくれる人が近くにいるから、自由に発動しているように見えるんだろう。
杏
じゃあ、なんで類さん達は無条件に能力が使えるの?
類
簡単だよ。君らより能力の扱いに慣れてるからさ。
類
僕らを大人とするなら、君たちはまだ赤子だよ。能力の扱いに関してはね。
彰人
…確かに否めねぇな
こはね
ど、どうすれば…
類
大丈夫。僕達がちゃんと教えてあげるから。
司
え、初耳だぞ
類
今決めたからね。
杏
教えるって?
類
まぁ待ってよ。その前に僕らは、「能力」を目覚めさせなきゃいけないからさ。
司
…ああ、そうだな。
えむ
…頑張る!!
類
寧々、僕の部屋にメモがあるから、それの通りに動いてくれるかい?
寧々
う、うん!分かった!
司
じゃあ…行くぞ!!
えむ
おー!
こはね
行っちゃったけど…大丈夫かな、
杏
なんか…カイトさんの試練思い出すね
彰人
うわ……確かに
冬弥
やめてくれ…思い出したくない、
続く