コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
まぶたの裏に、やわらかな光が差し込んだ。ぽんずの小さな寝息。その横で、まだ眠っている颯人の横顔が見えた。
静かで、整った呼吸。 長いまつ毛が、朝の光に透けて揺れる。
悠斗
いつもは無表情で、何を考えてるのか分からない。でも今は、少しだけ柔らかい。 見てるだけで、胸の奥がじんわり熱くなる。
昨日の夜のことを思い出した。 あのとき、ほんの少し手が触れた瞬間――
驚いたのに、嫌じゃなかった。 むしろ、その温度が落ち着くようで。
悠斗
幼なじみだから、距離が近くても平気だったはず。けど昨日の自分は、まるで別人みたいにドキドキしていた。
颯人
颯人が寝返りを打って、布団の端がふわりと動く。指先が触れた気がして、悠斗は慌てて視線を逸らした。
心臓が跳ねる。 まるで自分の鼓動が、空気を震わせているようだった。
ぽんずがあくびをして、ふにゃっと伸びる。その動きに救われたように、悠斗はそっと息を吐いた。
悠斗
……でも、もう戻れない気もした。
昨夜、あの優しい手が自分に触れた瞬間から、世界の色がほんの少し違って見える。
颯人
悠斗
颯人がゆっくりと起き上がって、寝ぼけた顔でぽんずを撫でる。
その仕草がいつも通りすぎて、逆に胸が締めつけられた。
悠斗
颯人
悠斗
颯人
ふっと笑う颯人の声。それだけでまた、心臓がくすぐったくなる。
悠斗
颯人
悠斗
颯人
悠斗
そう言って笑いながら、悠斗はぽんずの背中を撫でた。
でもその笑顔の裏で、自分の中に生まれた小さな“特別”を、どう扱えばいいか分からなかった。
悠斗
朝の光がカーテン越しに差し込んで、 二人と一匹の影を淡く照らしていた。
昼過ぎ、街は少しあたたかい風に包まれていた。颯人は白のロンTにデニム、悠斗はグレーのパーカー。並んで歩くだけなのに、どこか胸がざわつく。
悠斗
悠斗
悠斗がチケット売り場の前でふと振り返った。
颯人
悠斗
颯人
悠斗
悠斗は小さく笑って前を向く。その横顔に、颯人はまた言葉を失う。
──あの夜から、どこか距離が近い。
お泊まりして、同じ部屋で話して。何もなかったけど、心だけがやけに熱を持った。
映画館を出る頃には夕焼けが差していた。
悠斗
颯人
悠斗は沈黙のまま歩き出し、少しして立ち止まった。
悠斗
颯人
悠斗
その問いに、風が一瞬止まった気がした。 颯人は目を瞬かせ、そして苦笑する。
颯人
悠斗
悠斗は笑いながら誤魔化したけど、その指先がかすかに震えていた。
颯人はそれに気づきながらも、答えられなかった。心のどこかで、“名前を出したら戻れなくなる”と感じたから。
悠斗
颯人
悠斗の視線が落ちて、赤い夕陽が二人の影を長く伸ばしていく。
──その沈黙が、少しだけ苦しかった。
帰りの電車の中、窓の外はオレンジから群青へとゆっくり変わっていった。
悠斗はイヤホンを片方外して、颯人の肩に少しもたれかかる。
颯人
悠斗
颯人
颯人は、肩に感じる重さを意識しないように外を見つめた。けど、心臓の鼓動がやけにうるさい。
夜。颯人の部屋で、ぽんずが丸くなって寝ている。悠斗はその隣で、ベッドの上に座りながらスマホをいじっていた。
悠斗
颯人
悠斗
颯人
短く返すと、悠斗はうっすら笑った。
悠斗
颯人
悠斗
その言葉に、颯人の指が止まる。
颯人
悠斗は答えず、視線を落とした。代わりに、ぽんずを撫でる指先が震えていた。
颯人
名前を呼ぶと、悠斗はゆっくり顔を上げた。その瞳の奥に、迷いと、ほんの少しの期待が混ざっていた。
颯人は小さく息を飲み、言葉を選ぶように口を開いた。
颯人
悠斗の目が、かすかに揺れた。部屋の空気がやわらかく溶けて、時間が止まったように静かだった。
ぽんずの寝息だけが、穏やかに響く。 そのまま、ふたりは何も言わずに見つめ合って――心だけが、そっと近づいていった。