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第一話
「穏やかな午後」
(※背景画像はイメージです!)
ー談話室ー
談話室に、ゆっくりとした時間が流れていた。
任務はなく、 緊急連絡も入っていない。
こんな日は、彩祓堂では珍しい
蒼雷
ソファにだらりと背を預けながら、蒼雷(そうらい)がぼやく。
幻蛇
幻蛇(げんじゃ)はくすりと笑い、 紅茶を1口飲んだ。
幻蛇
幻蛇
蒼雷
そう言いながらも、蒼雷の視線は部屋の中央へ向いていた。
そこには──
エプロン姿の若葉(わかば)がいた。
若葉
机の上には不揃いながらも丁寧に作られたクッキーが並んでいる。
白氷
白氷(はくひ)が真面目に分析すると、若葉は嬉しそうに頷いた。
若葉
その様子を、少し離れた場所から静かに見ている男が一人。
紫苑(しおん)だった。
腕を組み、壁に背を預け、 表情は相変わらず読めない。
だが、若葉が転びそうになると1歩前に出かけて──止まる。
過保護だと自覚しているからこそ、踏み込まない。
紫苑
短く、低い声。
若葉
若葉は元気よく返事して、クッキーを1つ持ち上げた。
若葉
一瞬、談話室の空気が止まる。
紫苑
そう言いながら、視線を逸らす紫苑。
焔華(えんが)が、その様子を見逃すはずもなかった。
焔華
焔華
紫苑
即答だった。
だがその声はほんの 少しだけ──柔らかかった。
若葉はクッキーを食べ終えると、 満足そうに息を吐いた。
若葉
焔華
若葉
ぽつりとこぼれた言葉。
若葉
一瞬、全員が言葉を失う。
それは、戦い続ける彼らにとって、
あまりにも無防備で、
大切すぎる言葉だった。
紫苑は、ゆっくりと口を開く。
紫苑
その瞬間。
談話室の照明が、 一瞬だけ──揺れた。
幻蛇
幻蛇がすっと立ち上がる。
幻蛇
次の瞬間。
通信端末が、 鈍い音を立てて鳴り響いた。
──緊急信号。
表示された色は、濃く、歪んだ紫。
蒼雷
蒼雷が立ち上がり、影羽(かげは)は既に端末を操作している。
若葉は、服の裾をぎゅっと掴んだ。
その動きを、紫苑は見逃さない。
紫苑
若葉
紫苑は、若葉の頭に そっと手を置いた。
紫苑
若葉は不安そうにしながらも、 小さく頷いた。
若葉
その言葉を背に、 彩祓堂は動き出す。
──穏やかな日常は、ほんの少しの歪みで簡単に壊れてしまう。
だが、それでも彼らは祓う。
守るために。
すいそ。
すいそ。
すいそ。
すいそ。
すいそ。