コメント
14件
まぁた涙出てきた… もう主ちゃぁん😭 すおさんの妄想は甘くもあり苦くもあり…辛すぎる(()) 「一緒に痛い」もそうだけど、大切な人に触れられないってどれだけ辛いのか凄く実感?してる。
今回も素敵なお話ありがとうございます🙇♀ 面白い展開になってきましたね、伏線がどんどん回収されていって続きがとても気になります。 真実が明かされたところから涙が止まらなかったです。大切な人ほど失うのつらい。蘇枋はきっと彼のいない生活なんて考えられなかったんでしょうね🥲 他の話もどんどん最終話に近づいてますね、少し寂しい気持ちもありますが、楽しみにしてます✨ これからも頑張ってください💕
このままではダメだ。 このままでは、きっと蘇枋がダメになってしまう。このまま一緒に居てしまえば、俺も……
だからこれで最後にする。
あいつの前に現れるのも アイツが前を向く為にも。
学校終わりの放課後、静かに黙りこくっていた桜は、クラスメイト達が、帰宅して行ったのを確認し、口を開いた。
桜
蘇枋
人がいない教室は、蘇枋の甘い声が静かに響いた。 ビビッと恋愛センサーが何かを察知して、2色で色の違うアホ毛が揺れた。
桜
冒険?そう言い首を傾げた蘇枋に、何も説明せずに桜はそそくさと歩き出した。 桜を見失わぬ様、蘇枋が慌てて着いてきたのが、背で感じた。
二人とも、他愛の無い話をする事もなく、静かに、ただ静かに、桜の目的地まで、歩いていった。
蘇枋
蘇枋が、綺麗な蘇芳色の隻眼を 見開き、きょとりとした表情をした。 海風が赤みがかった蘇枋の髪を揺らした。ツンと海特有の匂いが鼻をくすぐる。
桜
桜
蘇枋
前にここに来たのは、 歩きではなく、バスだった。 二人何となくどこかに行きたくって、行く場所もなくって、乗り込んだ物がバスで、気づけばこんな所まで来てしまって、
成り行きで来た海は、二人を楽しませるには十分だった。 楽しくって、楽しくて、 また2人で来ようなんて笑いあった。
それが今、こんな形で 此処に来るとは。 いくら頭脳明晰な蘇枋でも、 桜の行動を予測する事はできなかった。 もしかすると、そういう所に惚れてしまったのかもしれない。 人間単純な生き物だ。 欲にまみれて、誰しも嘘つきで、
そう思っていたはずの人間に対しての印象は、全て桜によって、変えられてしまった。 揶揄うとすぐ赤くなって、 自分に真っ直ぐで、 かっこよくて、 それでいてとても素直で、
彼の好きな所を考えると、キリがないな。そう思い蘇枋は考えるのをやめた。 今はただ、彼の綺麗な横顔を、この目に焼き付けたい。
桜
蘇枋
どこか哀しそうに、桜はぽつりと呟いた。今の雰囲気では、桜を揶揄う気すら起きやしない。 潮風が、桜の2色で色の違う髪を優しく揺らした。 海の波が、2人の足元を濡らしていく。
桜
黙って海を見つめていたはずの桜は、ぽつり蘇枋に話しかけた。 蘇枋は、考えを何もかも放棄して、知らぬ振りを通した。
蘇枋
桜
桜
蘇枋の返答に、桜は少し不機嫌そうにこちらを見た。 綺麗なビー玉の様な、双眸を、ずっと見ていたいとすら思う。
蘇枋
蘇枋はふふっと、桜に向かって笑って見せた。その笑顔は、桜の笑う顔よりも、ずっとずっと下手くそで、 思わず桜は顔を顰めた。
桜
桜
桜
どこまでも桜の顔は、悲痛に歪んでいて、その頬に触れられないのが、とても惜しいとすら思う。
桜
蘇枋
桜
桜
蘇枋は何も答えなかった。 自分の妄想は、他の誰の妄想よりも甘くはないらしい。 桜だからこそ、現実を突きつけてきたのだろうか。
蘇枋はじっと目を閉じ、 過去を思い出した。
あの時、いつまで経っても教室に来ない級長を心配して、 蘇枋1人が桜の家へ向かおうと、 廊下を歩いている時だった。
ふと、窓の外をみると、 窓の外には自分の好きな人が、 ふわりと浮いていた。 その姿はまるで、大きな空に飛び込む様に、大の字で。 その落ちてくる姿が、スローモーションの様にゆっくり見え、まるで時間が止まったかの様に思えた。
蘇枋
校内に銃声の様な音が響いたと同時に、蘇枋の時は動きだした。 金縛りのように固まっていた体が、 その場にくずれおちる様に動き出し、 蘇枋は廊下に手をついた。
自分の口からこぼれ落ちるのは、 とても情けない声で、 とても窓の下を見る勇気などなかった。
そうだ。あの時に彼は死んだのだ。 フワリと宙を浮き、 空へと飛び込んだのだ。
もしあの時、開いていた窓から手を出せたなら、 彼の手に触れられていたのなら、 触れ合えていたのなら、
何かが、変わったのかもしれない。
この時からずっと、俺の時間が止まっていた様な気がした。何をするにも、やるきがでなくて、記憶も何も無くて、 あまりの俺の窶れ具合に、クラスメイト達が、心配そうな目をこちらに向けてきていた。
俺は逃げたんだ。彼の居ない現実から。 妄想したんだ。あの時ふわりと宙を舞う彼が、幽霊だったのなら。
あの時俺が、彼に触れられなかったのも、その所為だったのだと。
楡井
楡井
桜君のお葬式の日。 あの日俺は、屋上に居た。 彼が居なくなった現実が受け入れられなくて、彼が落ちたであろう場所で、1人憎たらしい位に晴天な空を見つめて。
蘇枋
嘘を着いた。 本当は、葬式になど行ってしまえば、彼が居なくなってしまったのを認めてしまう様な気がしたから。
楡井
楡井
茶色い瞳が、こちらを心配そうに覗き込んでいる。 彼には、1番心配をかけてしまっている気がする。 額には、うっすらと汗が滲み出ていて、息も少し荒々しい。 きっと、葬儀が終わったあと、ここまで全力で走ってきたのだろう。
ここに居ては行けない。 ここにいれば、彼と話して居れば、きっと嫌でも現実を見させられてしまう。 俺はその場を逃げる様に走った。 桜君が、俺を置いて行ってしまうと、言い訳を並べて。
楡井
蘇枋
急に走り出した俺に、楡くんはとても驚いた表情をしていた。 それはそうだろう。何も言わず、急に走り出したのだから。
蘇枋
楡井
きっと彼には、桜君の遺骨の事だと思われたのだろうな。 彼の遺骨は、すぐにお墓に入れず、しばらく彼の家に置くことになっていたから。すぐに高額な金額を出して、お墓を作ることも出来ないし、暫くは彼に直接会いたい人もいるだろうからと。 俺に決心が付いたのかと、勘違いしたのだろう。その目には、涙が浮かんでいた。 それでも俺は、知らないふりをして、いるはずの無い彼を追う。
桜
桜
蘇枋
蘇枋
こちらを力強く見つめる桜とは違い、蘇枋は弱弱しく呟いた。 ダメだと分かっていても、止められないのだ。自分の好きな人が死んでしまったという事実を、どうしても信じたくなくて。
桜
桜
きっと遺骨の事を言っているのだ。 本当に君は、例え俺の妄想であろうと、 どこまでも厳しいな。 そしてどこまでも優しい。 君の言葉は、まるで現実を見ろとでも言っている様だ。
蘇枋
きっと、お別れの時間も近いのだろう。蘇枋の視界が、段々とぼやけてきた。 頬に暖かいものが、伝って、 彼の顔が上手く見れない。
桜
桜の顔は上手く見えないのに、 その声は、まるで少年が笑うかの様に楽しげだった。 触れられない彼の手が、 そっと俺の頬に流れる物を拭おうとする。
桜
蘇枋
蘇枋
桜
蘇枋
桜
桜の優しい指からは、体温を感じない筈なのに、どこか暖かい。 思わず、擦り寄ってしまいそうになる。
桜
蘇枋
桜
最後まで自分の妄想はタチが悪い。 彼の顔で、自分の1番聞きたかった言葉を言わせるだなんて。 それでも、今だけはどうか、この都合の良い夢を許して欲しい。 どうか、彼をこのまま好きできることを許して欲しい。
蘇枋
蘇枋がぽつり返事をした時には、 もう誰もその場にはいなかった。
突然、ふと思い出した。 彼が宙を待っていた時の顔。 死に際の顔だ。 その顔は、さっき彼がしてたような、 とても優しくて、儚げな笑顔だった。