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第一章
馬鹿と殺気とドッペルゲンガー
澄んだ声が
俺の部屋にひとつ響いた。
それはあまりにも突飛な願いだったが
少女の瞳から迷いは窺えず
ただならぬ覚悟が伝わってくる。
真一文字に結ばれてた薄い唇は
決意の表れであろう。
ともあれ
まずは現状の把握が先決だ。
むさ苦しさが否めない真夏のワンルーム。
カーテンレールには洗濯物が吊り下げられ
過労死寸前のクーラーがごうごうと唸りを上げている。
そして俺は
パンツ一枚のあられもない姿。
そこに
同い年くらいの美少年が突然現れたのだ。
この状況下で放つべき最善の言葉は
これしかない。
紫
紫
紫
普通に注意されてしまう。
どうやら
最悪の選択肢を選んでしまったらしい。
俺は言われるがまま
パジャマを乱雑に掴み取った。
もぞもぞと袖を通しつつ
小柄な不法侵入者を観察する。
真っ白な肌に
ほんのりと紅潮した頬が映える。
くっきりとした紺碧の瞳は
見つめるだけで吸い込まれそうだ。
艶のあるピンクの髪も
少年のやや丸い輪郭とマッチしている。
まるで
童貞の妄想が具現化したような美少年だ。
身に纏う服装もポイントが高い。
桃色のパーカー自体はシンプルなアイテムだ。
だが
どこか奥ゆかしい雰囲気が漂う少年の魅力により
見事に昇華されている。
拡法が筆を選ばないように
美少年もまた服を選ばないのだろう。
少年が眉を顰める。
それさえも照れ隠しの演技に見えた。
殺してくれなどと言っているが
目的は俺だろう。
恐らく
脱兎の如く家路を急ぐ俺の姿に惚れ込んだに違いない。
古来より
足が早い男はとにかくモテるとされている。
『走れメロス』
が老若男女に愛されるのも
ひとえに足が速いからだと睨んでいる。
次回作❤×30