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Kn
人混みの中を掻き分けて、 ひとりキョロキョロと立ちすくむ彼の 腕を引いた。
ゆらりと揺れる白髪と、 無理言って着せた浴衣がはらりと舞う姿が 綺麗で、抱きしめたくなる気持ちを 抑える。
Kz
Kn
Kz
能天気に返す葛葉に怒りよりも呆れが勝ってしまう。でもいい、僕のところに戻ってきてくれるなら、僕は葛葉がどこに居ようと探し続けるから。
Kn
Kz
Kn
…なんだろ、これ。 違うな、変に胸が苦しくなる。
嬉しそうな葛葉も、僕は好きなのに。
Kz
Kn
好きなんだ、綿あめも、葛葉も。 なのに、誰かに優しくされる葛葉が嫌いで仕方がない。
葛葉に優しくするのは僕だけでいい。 葛葉を好きになるのも、傍にいるのも、 全部ぜんぶ僕でいい、僕がいい。
Kz
Kn
Kz
Kn
Kz
Kn
紺鼠の袖から覗く 、手の甲が熱くなっていく。
ぼぼ、と耳から首が赤く染まるのが、扇情的で愛おしすぎる。
Kn
Kz
Kn
無防備だ、すごく。 無防備すぎて攻撃してしまいそうになる。 優しくしたいのに、加虐心がうるさい。
Kz
慣れない下駄と浴衣に手こずらせながらも、僕の手を離さず着いてくる葛葉が鳥の雛のようでつい笑を零してしまった。
屋台通りに塗れる人混みに背を向け、人気のない河川敷へと葛葉を連れる。
Kz
Kn
Kz
下に向かれた顔がこちらに向いたタイミングで、強く葛葉を抱き寄せる。
あまりの驚きに身動きが取れないのか、はたまた抵抗する気力もないのか。 葛葉の心臓の音が信じられないくらい高いから、多分これは前者だろう。
Kn
Kz
Kn
ふつふつと湧き出るこの黒い感情が、 僕の身も心も崩していく。
Kz
かぷ、と葛葉の首に口付ける。 かわいい、可愛い。そしてなんかえろい。
Kn
ふー、と葛葉の耳に息を吹きかける。 わかりやすすぎるくらい怯えるから、虐めたくなるのに。彼はそれに気づかない。
Kz
Kn
Kz
Kn
照れた葛葉が僕の頭をぶっ叩いてきた。 悔しい、もう少しだったのに。
Kz
Kn
Kn
無数の花が、夜空に咲いては散っていく 花火だ。それも結構大きめの。
Kz
Kn
Kz
まあ、そんなつもりで連れてきたわけじゃないけど。なんて口には出さずに心の奥に閉まっておいた。
Kn
Kn
嘘じゃない。現に、こんな言葉で顔を赤くする彼が目の前にいるから。
Kz
Kn
Kz
Kn
ああ、綺麗だ。 こんな他愛のないくだらない話をしていても、彼は変わらず美しい。 人からかけ離れた整った顔立ちは白髪に際立って綺麗だし、髪はサラサラと風になびく。
猫目のような輪郭を描く瞳は赤で、ほっぺたと同じくらい赤い。可愛い。
Kz
Kn
相変わらず、人の視線に敏感だなあ。 好意には鈍感な癖に。
Kz
薄い唇からの言葉が、聞こえる前に消えた。 花火の音で掻き消された、
Kn
Kz
Kn
聞きたかったのに、上手く誤魔化されてしまった。
好きとか、愛してるとか、葛葉から言ってくれるようになるまで僕は待ち続けましょうかね。永遠に。
だって、今日も葛葉は可愛いし僕のものだから。まだ調子に乗らせてよ。
それくらいいいでしょう?