桃赤
死のう
ふと、そう思った
この気持ちになるのは初めてではない
定期的にそう思うのだ
その度にどう死のうか考えて、面倒臭くなって、諦めて、意味のない涙を流すのがいつもの流れだった
カーテンを申し訳程度に開ける
外は薄暗くなった空から無数の雫を降らしていた
赤
カーテンから手を離し、玄関へと足を運んだ
適当に近くにあった靴を履いて、重い扉を開けた
とぼとぼと歩き、エレベーターで1階まで降りる
エントランスを潜ると同時に聞こえてくるのはザーっという雨の音
ピチャ、ピチャと音を立てながら歩いて近くの公園に寄る
赤
ずっと足元を見ていた視線を少し上げて、周りを見回してたまたま視界に入ったベンチに腰掛けた
ボーッと一点を見つめる
暫くしてブルっと肩が震えて、鎖から手を離し掌を見る
指先は小さく震え、血の気が引いていた
背もたれに体重をかけ、天を仰ぐ
赤
目を瞑り、考えた
子供の頃は毎日のように死にたいと思っていた
でも大人になって、すとぷりに入って、生きたいと思えるようになって
でも、定期的に死にたいと思うようになってしまった
膝を立ててそこに顔を埋めて蹲る
赤
きっともう生きる事には諦めているのだろう
それと一緒で、きっともう死ぬという事にも諦めているんだろう
俺には生きる理由なんてないのに、周りが生きる理由を作るから
どんどん先をいくみんな
どんどん離れていくみんな
それが、とても苦しい
なのに、手を差し伸べてくるから
それが、とても泣きそうになる
赤
赤
プルルルル……プルルルル…只今電話に出る事が出来まs
桃
これで4回目、か
椅子から腰を上げて必要最低限のものをズボンのポッケに仕舞い込んで玄関に向かった
傘を取り出して重いドアの先へ一歩踏み込んだ
桃
思いつく限りの莉犬が行きそうな場所へと足を運ぶ
ピシャンと水が弾けてズボンの裾へと着く
いつもなら最悪と嘆いていただろうが今はそんなのどうだって良い
少し息を切らしながら、走り続けてふと視界の隅に映った
ピタッと足を止めてある公園に目を向ける
そこには役目を終えた人形の様に、立てた膝に顔を埋めて蹲る、小さくて頼りない影があった
桃
ゆっくりと近づいても、声をかけても、反応はない
昔、よく此処でお互い待ち合わせをして家に行くっていうのが当たり前だった
傘を閉じて莉犬の隣に腰掛ければ、布越しに冷たく湿った感覚が伝わって来た
接地面から体温を吸い取られていく気がした
着てきた上着を莉犬に被せて指先が触れた髪が冷たくなっていて、どれだけの時間ここにいたのか、と想像する
そこで初めて、莉犬は顔を上げた
濡れた髪はくしゃくしゃになって、焦点の合っていない目がゆらゆらと揺れている
桃
赤
鋭さも覇気もない、どこまでも平坦で威力の無い声が自分の名を呼ぶ
光の宿らない瞳から零れ落ちた雫が頰を伝い、1つ、2つ、3つ滂沱の涙となって流れていく
嗚咽すら漏らすことなく、ただ涙だけが留まる事なく溢れ続ける
何度も俺の名を呼びながら涙を流す
不自然な呼吸に、掠れていく声
そんな中俺の耳に届いた、1番小さくて、1番掠れていて、でも1番鮮明に
赤
肩を掴まれて、硝子細工に触れるかのように優しく頰に手を添えられる
ふわっと音もなく距離を縮めたさとみくんは
静かに俺と唇を重ねた
桃
微かに開いた距離から言葉を紡ぐ
桃
こっからどーしましょ〜……
友達のリクエストなんよねぇ…
続きが思い浮かばない
続きはご想像にお任せします
コメント
22件
最高です!フォロー失礼します
めちゃくちゃ最高でした、、! ブクマ失礼します!!
めちゃよかったです! 続き気になります👀