彰人
丁度いい、あんたには聞きたいことが山ほどある。
彰人
あんた、俺の事知ってんのか?
類
…
彰人
どうも気持ち悪いんだよ。あんたの事なんか知らないはずなのに、なんていうか…
彰人
……駄目だ、分かんねぇ
類
…すまない、本当にすまない
彰人
何に謝ってんだよ
類
僕は…逃げたんだよ
彰人
はぁ?
類
…僕、17歳なんかじゃないんだ
類
カイトさんよりは年下だけど、もう100年は生きてる。
彰人
は?!けど、あんたどう見たってまだ10代…
類
僕は少々、自分の体を弄っていてね。普通じゃないんだ。
彰人
…
類
聞きたいかい?もう人間でも何者でもなくなった実験体の話を
彰人
…あんたがいいなら。
類
…僕の父さんは魔術師だった。
類
父は医者の様な事をしていてね、魔術で病を治したりしていたんだ。街の人からとても信頼されていた。
類
だけど、ある日貴族がやって来たんだ。子供の死体を持ってね。
類
それで言うんだよ、その死体を生き返らせろって。笑っちゃうよね。そんなこと、出来るわけないのにさ。
類
もちろん、父さんはできなかった。貴族は激怒し、父さんに子供の殺人罪をかけ、処刑したんだ。
彰人
は?!
類
フフ、本当に理不尽だよね。父さんの才能は失われるべきではなかったのに、何も知らない馬鹿に殺されたんだ。
彰人
(この人が貴族を嫌う理由はそれか…)
類
それから…そうだ、僕は拉致されたんだ。とある博士にね。
類
僕は牢に閉じ込められ、毎日注射を打たれ、手術を繰り返し、人間じゃなくなっていった。
類
眼球をくり抜かれ、三千里先まで見えるようにされた。足の神経を弄られ、とてつもない跳躍力を持った。筋肉にも何かしら投与され、スプーンは握っただけで砕けた。魚の臓器をいれられ、多少は水でも呼吸が出来るようにされた。
類
これが人間と呼べるかい?
彰人
…
類
自分でも気持ち悪いんだ、この体が。大嫌いだった。今は消したけど、ツギハギも酷かったんだ。僕はもう、そうだな…人形のようだったよ。
類
いや、人形のが美しかったな。僕は醜かったから。
彰人
…俺の話はいつになったら出てくる?
類
ごめんね、もう少し先だよ。色々ありすぎて、説明が長くなってしまうんだ。
類
その博士は最後に、僕の心を弄ろうとしていた。きっと、殺人兵器でもつくるつもりだったんだろうね。けど、僕はそれに抗った。
類
結果、その博士はもちろん建物内にいた全ての人間を殺し、僕は自由になった。やっぱり、僕は殺人兵器だったんだよ。
類
そして…森でカイトさんに出会った。僕はあの人の使う魔術に感動した。父さんの魔術に似ていたから。だから弟子入りして、父さんになろうと思った。
類
カイトさんは色々な事を教えてくれた。父親みたいに。きっと、父さんが生きてたら……ううん、これは関係ないね。省略するよ。
類
弟子入りして10年くらいかな、経った時に、僕の時が止まった。博士に不老の呪いをかけられていたのに気が付かなかったんだ。だから僕はずっと、17歳のまま。
類
それを機に、僕は旅に出た。カイトさんも、世界を見ておいでって言ってくれたから。僕はやりたい事があったんだ。
類
最初にたどり着いた国は、流行病で死ぬ人が多かった。僕は魔術で治し続け、次の国でも同じ事を繰り返した。
類
何カ国目だろう。分からないけど、ある国での事だ。僕は女王の治療を頼まれた。重い病だったが、治せないことはなかった。
類
女王は言ったんだ。「殺してくれ」ってね。驚いたよ、そんなこと言う患者はいなかったから。理由を聞いた。疲れた、もう、楽にしてくれと。確かにその女王はもう90歳。病でなくとも寿命で終わりが見える歳だ。
類
女王は優しかった。だからこそ、僕は選びたくなかった。けど、彼女の願いも聞き入れたかった。結局、僕は彼女を治さなかった。
彰人
…
類
けれど、国が納得するはずが無かった。僕は追放され、次の国へ行った。だが、その1件が僕にとっては枷になっていたようで、なんと失敗してしまったんだ。
類
1つ、命を救えなかった。そのまま死んでしまった。僕は耐えられなくなり、イタリアへ行き、ひっそりと暮らした。
彰人
イタリア…!
類
そう、君の故郷さ。ここからやっと、君の知りたい話だと思うよ。
類
イタリアはいい街だった。けれど、政府が無意味な政策をし、税だけが上がるものだから、街人は苦しんでる様だった。
類
ある日、僕が買い物をしていると、うっかり袋から林檎を落としてしまった。拾おうとすると、ある少年に出会ったんだ。
類
その子は林檎を拾ってくれてね。お腹が空いていた様だから、僕は落ちてない方の林檎をその子にあげた。それからその子はよく、家へ来るようになった。
彰人
それが俺だって言うのか?
類
…ああ、そうだ。君は僕の家によく来ていた。
彰人
ならなんで、俺は何も覚えてねぇんだよ。
類
ちょっとまって…ちゃんと全部説明する。そういうせっかちなとこは、変わってないね。
類
僕は君にせがまれ、魔術を披露した。するととても喜ぶんだ。とても楽しそうに笑ってくれるんだ。それがとても嬉しかった。
類
ある日、君は僕にこう聞いてきた。「姉の病気を治して欲しい」とね。
彰人
!
類
僕は……怖かった。また失敗してしまうこと、出来ないと言って君に失望され、嫌われることが。本当に怖かったんだよ。
類
だから……僕は「忘却」の能力で君の記憶を弄った。僕との記憶を別の記憶にすり替えてね。そしてすぐその街から出たんだ。
彰人
…なんでだよ、
彰人
なんで記憶なんて消したんだよ
類
…僕が逃げるためにだよ。
彰人
だから_
類
僕は街を出たあと、とある怪盗に出会った。その怪盗はとても強欲で、国中の宝石を盗んで回っているようだった。
類
僕は暇つぶしにその怪盗より先に宝石を盗んでみた。すると、その怪盗は僕を見るなり「お前、俺のものになれ」と言ったんだ。
彰人
その怪盗ってのが、あんたらのリーダーか?
類
ご名答。彼の名は天馬司と言った。僕は最初、「は?」って思ったよ。いきなり俺のものになれなんて言われたらびっくりするもんね。
類
けれど、面白そうだったから少しだけついて行ってみたんだ。
類
すると…彼は本当に僕のことが好きみたいでね。僕のこと、「綺麗」って言ってくれるんだ。魔術を褒めてくれるんだ。
類
次第に、僕も彼に惹かれていったよ。だって、とても素敵な人なんだから。僕は自分のこと気持ち悪いと思っていた。けど、それを彼は叱ってくれたんだ。
彰人
…その惚気はいつまで続く?
類
フフ、ごめんね。昨日の事のように覚えているものだから。それから彼が秘宝に興味を持ち始め…僕は「悪夢」の能力に目覚めてしまった。
類
そこで依代の人形、寧々を作り僕の幼馴染って事にして、司くんと3人で情報を集めた。それでまぁ…今に至るかな。
類
さぁ、これで君の欲しい情報は手に入ったかな?
彰人
…分かんねぇことはまだある。
彰人
あんたが俺らを助けたのは、俺への償いのつもりか?
類
それもある。けど、それだけじゃない。
彰人
あんたの計画ってのは、なんなんだ?
類
…僕が、みんなと一緒にいられるようにするための計画さ。
彰人
…それは、お前らの目的だろ?
類
違うんだよ。これは、僕が幸せになりたいだけの身勝手な計画さ
類
まず、君たち全員を利用して秘宝を手に入れる。そして…秘宝を使って、僕は人間になるんだ。
類
そしてこの僕の勝手な物語に終止符を打つのさ。そのために…これは渡す訳にはいかないんだ。
彰人
…それは、世界に関係あるか?
類
それは…どういう事かな?
彰人
あんたの願いで、世界が滅びるようなことはあるか?
類
……ない。関係あるとしたら、僕と司くんたち3人だ。
彰人
……あー、俺今ちょっと具合悪いかもー
類
??
彰人
これならあんたが願い事しても止めらんねーなー
類
!
類
彰人くん……君、
彰人
聞こえねー
類
……フフ、ありがとう
類
悪魔の秘宝よ、これが最後の願いだ。
類
どうか……僕を普通の17歳にしてくれ。司くんたちと同じような人間に。
チカッ
類
!!
類
ここは……さっきまで魔界にいたはず
司
類!
えむ
類くーーーん!!
寧々
類!大丈夫!?
類
3人とも…
司
俺たちはさっきまで魔界にいたはずだが、何か心当たりはあるか?
類
…僕が最後の願いをしたんだ。
類
あっ、そうだ。司くん、スプーン持ってるかい?
司
スプーンだと?
えむ
あっ、私持ってるよー!!
類
ありがとう。ちょっと握ってみてもいいかな?
寧々
え、何する気?
類
確かめたいんだ。
類
…………
司
ただスプーンを握ってるだけのようにしか見えんのだが
類
…フフ、あははっ!本当だ!普通に握ってるだけだね、
えむ
…類くん?なんで泣いてるの?
類
……僕の願いが叶ったからさ。そうだ、僕は普通の人間なんだ…!
類
フフ、ねぇ司くん!ちょっと僕、海に行ってくるね!
司
ん?!?!何をする気だ?!
類
飛び込んで呼吸してみるよ!
司
出来るわけないだろ!?!?
司
あっ、おい待て!!死ぬぞ!!
寧々
はぁ、本当に騒がしいんだから
えむ
えへへ!なんだか類くん、すごく元気だね!
寧々
うん…えむの願いが叶ったのかな
えむ
うん!きっとそうだよ!
彰人
!
彰人
ここ……謙さんの店!
杏
いったーい!もう!急に何?!
こはね
あれ、ここ謙さんのお店…?
冬弥
彰人、さっき何があったか覚えているか?
彰人
…あー、悪い。覚えてねぇわ。
冬弥
…そうか。
彰人
(あ、そういや冬弥は心読めるんだっけ。)
杏
父さんいないのかな。とうさーーーん!
こはね
…見当たらないね。
客
あれ、あんたたち帰ってたの?
杏
あっ、お久しぶりです!
客
まぁまぁ!なんだか逞しくなっちゃって!
こはね
そ、そうですか?
彰人
あの、謙さんどこにいるか知ってます?
客
?何言ってるの?
客
謙なら3年前からずっと帰ってないじゃない。今はインドにいるって言ってたわね。
こはね
え?!
客
「え?!」って……知ってたでしょ?見送りしたじゃない。
冬弥
……たしかに、そういえばした気が、、
杏
あっれー?なんで今まで忘れてたんだろ
杏
たしかに父さん、今いないや…
彰人
……なら、俺らに秘宝を探しに行かせたのは誰だよ?
……
杏
え、やだ怖いんだけど
冬弥
あれはたしかに謙さんだった気が…
こはね
そ、その時だけ帰ってきてたとか…はないか…
彰人
なーんか記憶が曖昧だな。
杏
ねー、なんだろ
こはね
…まぁ、一旦帰ってこれたんだし、休憩しない?頭休めようよ。
冬弥
そうだな。
彰人
あ、俺冬弥に話あるから同部屋で
杏
えっ、なになに告白〜?!
彰人
なわけねぇだろ
杏
なーんだ。ま、いいや!こはねも私と同部屋ね!
こはね
う、うん!杏ちゃんが良ければ…!
冬弥
俺も彰人がそうしたいなら構わない
彰人
おー、じゃ、一旦解散
彰人
わー、久しぶりだな、この部屋も
冬弥
彰人、話とは?
彰人
ま、一旦座ろうぜ。疲れたし
冬弥
聞きたいことは大体分かってる。だからこそ、早く聞きたいんだ
彰人
……分かった
彰人
まず、お前が悪魔だっつーことは、間違いねぇな?
冬弥
ああ。
彰人
んで……お前、どうすんの?
冬弥
どうする…とは?
彰人
ここに残るのか、向こうに戻るのか
冬弥
……
彰人
俺的にはまだお前と居たいし、残って欲しい。けど、お前のばあちゃんが言った通り、俺とお前の時の流れは違う。
彰人
それが嫌なら、向こうに戻ればいい
冬弥
…俺は、彰人と、まだ4人で一緒に居たい。
冬弥
けど……彰人が死ぬところは見たくない
冬弥
俺は……分からない
彰人
…分かんないじゃなくて、お前が選ぶんだよ。
彰人
大事な事は自分で決めねぇと。な?
冬弥
…俺は
冬弥
ここに、残りたい
彰人
おう。じゃ、またこれからもよろしく。
彰人
それだけ確認しときたかったんだ。
冬弥
_ありがとう。
杏
うーー!疲れたね!
こはね
だね!
杏
……ねぇ、今までのって全部、現実だよね
杏
冬弥が悪魔で…秘宝も存在してて、夢じゃないよね?
こはね
うん…多分、現実だよ。
杏
こはねー!ちょっとほっぺつねってみて〜
こはね
え?!い、いいの?!
杏
うん!思いっきりお願い!
こはね
じゃ、じゃあ遠慮なく…
杏
……いただッ!
こはね
わっ、ご、ごめん!
杏
ううん、大丈夫……これは現実だわ
杏
私頭使うの苦手なんだよなー
こはね
私も…今日は頭働かないや
杏
寝よ寝よ!こはねおいで!
こはね
え?!わ、私は下のベッド使うからいいよ…?
杏
一緒に寝よーよ!
こはね
…じゃ、お言葉に甘えて、、
続く!!