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ノリと勢いである
角度や順番のような小手先の技術など
俺達には必要ない
翠はカリスマ美容師のような手早さで側頭部の染色を終え
前髪の仕上げに突入した
桃
桃
桃が的確に現状を伝える
前髪を通過して顔面に射出されるスプレーの量で大体察しはついていたが
どうやら
今の俺はすすまみれに見えるらしい
翠
翠
紫
紫
俺は感謝の念を述べながら
紫の髪にスプレーを噴射した
同じように仕上がったのは言うまでもない
上半身がまだらに黒くなった俺たちを見比べて
桃は心底不安そうな声で問いかけた
桃
桃
桃
紫
紫
桃
紫
紫
桃
桃はなおも不満気な様子だが
やり直す時間も金もない
紫
桃
桃
言わずもがな
今生きている方の桃
つまりドッペルゲンガーの呼び名である
呼び方で混乱しそうなので
便宜上どっぺちゃと呼ぶ
俺は気を取り直して翠へ向き直り
最終確認を促す
紫
紫
紫
翠
翠
翠
翠は自信ありげに頷いてみせるが
桃の視線は冷ややかだった
それでも俺は軽い口調を維持して
桃に微笑みかける
紫
紫
紫
桃
桃
桃は自分の身体を抱き
思案するように俯く
そして
そのまましばし固まっていたが
天秤が僅かに俺たちの方へ傾いたらしい
桃は不安を吐露した
桃
桃