目黒蓮
………っ、
阿部ちゃんの前世は、俺が想像していたよりも遥かに辛く苦しいものだった。
ずっと信じてた人からいじめられて
必死に助けを求めても、誰にも信じてもらえなくて
むしろ、軽蔑されて…
目黒蓮
阿部ちゃん…
阿部亮平
はは…我ながら酷い人生だよ
目黒蓮
っ……
痛々しく笑う阿部ちゃんを見て、何故か泣きそうになった。
最近知り合ったばかりの俺が阿部ちゃんにしてあげられることなんて、ほんのひと握りだと思う。
でも、この人の力になりたい、この人を救いたいって、
本気で思ったんだ。
目黒蓮
阿部ちゃんッ……俺、阿部ちゃんを守りたいって言ったよね、
阿部亮平
………うん
目黒蓮
でも俺、…これから起きることから守るだけじゃなくて、
目黒蓮
過去の傷からも、阿部ちゃんを守りたい
阿部亮平
……めめ、
目黒蓮
だから、…辛いことも、苦しいことも、今みたいに俺に相談してほしい。
目黒蓮
やってほしいことがあるなら、なんでもするよ…!
阿部亮平
……ありがとう、めめ。
阿部亮平
…じゃあ、俺のお願い、1個聞いてくれる…?
目黒蓮
もちろん!1個とは言わずいくらでも聞くよ!
阿部亮平
あはは、ありがと。
目黒蓮
うん!で、どんなお願い?
阿部亮平
……あのね、
阿部亮平
……ふっかを…深澤辰哉を、殺してほしいんだ
目黒蓮
……え、?
阿部ちゃんを守りたい、阿部ちゃんの力になりたい。
だからこそ、これは俺の聞き間違いであってほしかった。
阿部亮平
実は俺、佐久間だけじゃなくてふっかとも前世で友達だったんだよね。
目黒蓮
……
阿部亮平
ふっかも、俺がいじめられてることは知ってたんだけどね、…助けてくれなかったんだ
阿部亮平
なんでだと思う?
目黒蓮
…巻き込まれたくなかった、とか、?
阿部亮平
うん、俺も最初はそう思ってた。
阿部亮平
でもね、…後から知ってびっくりしちゃった
阿部亮平
あの時俺が受けてたいじめは全部、__
目黒蓮
……は?
その時、聞こえてきたのは、自分から発せられたとは思えないぐらい、低くて重い声だった。
そして、頭の中が真っ赤になる感覚がした。
ふと自分の手を見ると、握った拳に力を込めすぎて血が出ていることに気づいて。
気づいたら、阿部ちゃんを抱きしめていた。
阿部亮平
……めめ、?
目黒蓮
…分かった。分かったよ、阿部ちゃん。
目黒蓮
今まで苦しかったね。辛かったね。
目黒蓮
でももう大丈夫、俺がいるよ
目黒蓮
俺が、…深澤辰哉を殺してあげる
阿部亮平
……ほんと、?
目黒蓮
もちろん
目黒蓮
俺は、阿部ちゃんの為ならどんなことだってするよ
この時、俺は初めて、人をこの手で殺してやりたいと思った。
そのぐらい阿部ちゃんが大切で、ふっかさんが許せなかった。
目黒蓮
大丈夫だよ。阿部ちゃんが感じた痛み、しっかり味わせてくるからね
阿部亮平
……うん、ありがとう
俺は、棚から小型のナイフを取り出して、部屋を後にした。
阿部亮平
……良かった、上手く騙せて