朝のホームルームが始まっても、ゆいの席は空いたままだった。
……おい、ゆい今日休み??
瑞稀がそわそわと足を揺らす。
珍しくない?ゆいが休むなんて
大輝が教科書を開いたまま、全然内容が頭に入っていない顔をする。
星輝は窓の外に目を向けて、小さくつぶやいた。
川崎星輝
その瞬間、9人の表情が一気に固まった。
え、昨日ゆいちゃん泣いたの?
周りの女子たちも騒ぎはじめる。
男子9人に取り合われて大変だよね
そりゃ休むわ…メンタル死ぬって
心配というより“興味本位”の声が耳に入ってきて、9人はさらにイライラした。
涼が机をドンと叩いて立ち上がる。
橋本涼
クラスの空気が静まり返る。
休み時間。 9人だけが昇降口の前に集まっていた。
放課後、ゆいの家に行こうと琳寧が言う
「いや、いきなり行くのは重い」通陽が反対する。
「でもこのままじゃ気まずいままじゃん!」と瑞稀が言う
3人が言い争い始めた頃、克樹がぽつりと言った。
本髙克樹
急に本質を突かれ、みんな黙る。
好きだからだろ
涼が低く言う。
誰も否定できなかった。
そこへ、大輝が気まずそうに戻ってきた。
今野大輝
「なんて?」 全員が一斉に身を乗り出す。
大輝は小さく紙を開き、読み上げた。
“今日は行けません。しばらく学校、休みます。”
その一文が、空気を真っ白に凍らせた。
菅田琳寧
矢花黎
川崎星輝
9人はお互いを責めるでもなく、ただ沈黙する。
ふと、涼が言った。
橋本涼
その言葉は残酷なほど真実味を帯びていた。
井上瑞稀
本髙克樹
稲葉通陽
9人の心が珍しくひとつになった瞬間だった。
ただ、一番冷静な悠仁だけが呟いた。
鈴木悠仁
誰も答えられなかった。
その沈黙だけが、やけに重く教室に残った。
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