テラーノベル
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あの日は、
とても暑くて
生ぬるい風が頬を撫でていた
空には綺麗な花が
いくつも咲いていて__
まるで、一つの花束みたいだった
ふと、隣を見る
そこにも、一つの花が咲いていた
名前もまだよく知らないけど
ただ静かに夜空を眺めていた
___その時
風が急に強くなった
思わず目を閉じて
もう一度目を開けたときには
隣に咲いていた花も
空に咲いていた花も
全て暗闇の中に消えていた
母
母
絹原 光夏 キヌハラ ヒナ
絹原 光夏 キヌハラ ヒナ
母
夏休みは、あまり好きじゃない
長い休みのはずなのに
特別やることは
何もない
ただ
暑くて、
だるい
宿題だけが
やけに現実的にそこにある
___楽しくない
もうすぐ祭りがあるみたいだけど
行く気なんて最初からなかった
ただでさえ暑いのに
人が集まれば
もっと暑くなる
それに_____
人混みは苦手だ
近くにいるだけで
頭がくらくらして
自分がどこにいるか分からなくなる
だから、私は
そういう場所には行かない
気づけば、外に出ていた
家にいてもやることは変わらない
ただ時間が過ぎるのを待つだけ
だったら少しだけ
風に当たろうと思った
人がいない場所を選んで
私は歩く
神様に願えば
この世界は少しは変わるのだろうか
_____そんな訳無い
分かっていても
足は止まらなかった
やがて、小さな神社の前で立ち止まる
静かで、
誰もいなくて
この場所だけ
時間が止まってるみたいだった
神様の前に立つ
願う
"世界よ、変われ"
と
そして、ふと横を見ると___
知らない少女が
木に寄りかかっていた
まるで、最初からいたみたいに
風に揺れる髪も、
夕日に染まる横顔も
全部が、どこか現実じゃないみたいで
___なのに
その子は私を見て笑った
_____.
意味が、わからなかった
今、なんて…?
_____やっと来た?
_____.
少女は当たり前のように
そう言った
絹原 光夏 キヌハラ ヒナ
そう聞いたはずなのに、
声は思ったりより小さくて、
頼りなかった
少女は少しだけ首を傾げて
楽しそうに笑う
水瀬 琉南 ミズセ ルナ
まるで、名前を教えることすら
最初から決まっていたみたいに
絹原 光夏 キヌハラ ヒナ
水瀬 琉南 ミズセ ルナ
即答だった
会話が噛み合ってない
なのに、その違和感が
なぜか嫌じゃなかった
水瀬 琉南 ミズセ ルナ
心臓が一瞬止まった気がした
絹原 光夏 キヌハラ ヒナ
水瀬 琉南 ミズセ ルナ
彼女は少しだけ目を細める
夕焼けの光が
その瞳に溶けていた
水瀬 琉南 ミズセ ルナ
意味が、分からない
分からないはずなのに___
なぜか逃げようとは思わなかった
水瀬 琉南 ミズセ ルナ
彼女が一歩近づく
水瀬 琉南 ミズセ ルナ
その言葉は、軽いはずなのに
どこか
"それしかない"みたいに響いた
断る理由なんて
山ほどあった
知らない人だし、
変なこと言うし、
普通に考えれば
関わらないほうがいい
_____なのに
絹原 光夏 キヌハラ ヒナ
気づけばそう答えていた
彼女はぱっと顔を明るくして笑う
水瀬 琉南 ミズセ ルナ
その笑顔は
さっきの夕日よりも眩しくて
少しだけ目を逸らした
その時はまだ知らなかった
この出会いが
私の世界を変えることも
この夏が
二度と戻らないものになることも
ただ一つ確かなのは
___あの日から
私の夏は
少しだけ、動き出していた
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