テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
rara🎼
nmmn注意⚠️ キャラ崩壊注意⚠️ 誤字脱字注意⚠️ 二次創作
rara🎼
rara🎼
rara🎼
第64話『静かな余韻』
目を覚ますと、静かだった。
昨日まで熱に浮かされていたこさめは、もう布団の中で安らかに眠っている。
頬に赤みは残っているが、呼吸は穏やかで、額の熱もかなり引いていた。
らん
らん
枕元に置いた冷えピタがはがれかけているのを直し、らんはそっと立ち上がる。
昨晩の光景がふと蘇る。
――雷鳴のように響いた、いるまの怒鳴り声。
胃のあたりがきゅっと縮む。
あれほど怒鳴られたのは、記憶にある限り一度もなかった。
いや、記憶にないからこそ余計に響いて離れないのかもしれない。
静かな朝の空気の中でも、耳の奥でまだ反響しているようだった。
昼。
こさめの体調は目に見えて回復してきた。
布団の上に座り直し、スルメを齧りたいと冗談を言うほどだ。
すち
すち
すちは安堵しながらも、念のために病院で検査を受けるよう強く勧めている。
らん
こさめ
こさめ
こさめ
そんな軽いやり取りができるくらいに、空気は柔らかくなっていた。
ただ、その輪の中にひとりだけ入ってこない影がある。
いるま。
朝からほとんど口を開いていない。
見舞いには来たけど、この部屋にはいない。
パソコンの前に座り、作業をしているふりをしているが、指は止まることが多く、画面をじっと睨みつけているだけの時間が長い。
らんが視線を送るたびに、どこか気まずそうに逸らす。
らん
胸の奥の重みは増すばかりだった。
夕方。
こさめがようやくぐっすり眠った頃、部屋には静寂が落ちた。
すちも買い物に出かけ、みこととなつもそれぞれ別の用事で席を外している。
残されたのは、らんといるま。
不自然なほどに沈黙が続く。
らんは耐えかねて、声を絞り出した。
らん
机の上で止まっていたいるまの指が、わずかに震えた。
けれど、すぐには言葉が返ってこない。
らんはそれでも続ける。
らん
らん
らん
深く頭を下げる。
目を閉じたその瞬間、椅子の音が鳴った。
顔を上げると、いるまが立ち上がっていた。
鋭い視線が突き刺さる。
怒鳴られる覚悟をした。
だが、次に響いた声は意外なほど低く、押し殺したものだった。
いるま
息を呑む。
その声は、怒気ではなく苦悩を帯びていた。
いるま
いるま
その言葉は雷鳴ではなかった。
胸の奥にずしりと落ちる、静かな衝撃だった。
いるま
いるま
いるまはそれだけ言うと、背を向けて部屋を出て行った。
閉じた扉の向こうで、足音が遠ざかっていく。
残されたらんは、その背中を追うこともできず、ただ立ち尽くしていた。
胸に残ったのは、怒りの残滓ではなく――確かな温もりだった。
らん
呟きながら、らんは自分の胸に手を当てた。
鼓動が早まっているのを感じる。
失ったはずの記憶の断片が、そこに微かに響いた気がした。
雷鳴の翌日に残ったのは、静かな余韻。
その余韻は、らんの心に深く刻まれていった。
第64話・了
rara🎼
rara🎼
𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝500
rara🎼
rara🎼