自身の周りに立つ中級兵は次々と地面に倒れる下民の元へと歩いて行く
そんな中、レッドは動く事もできずにただ茫然としていた
ミスターレッド
死体処理なんて…………

ミスターレッド
無理に……決まってんだろ…

目の前を行き交う中級兵は皆無表情のままそれぞれの仕事へ向かう
きっと、この中級兵達もとっくの昔に壊れてしまったのだろうか
だが、この状況を見ると僅かながらに同情の余地がある
レッドはこうして立ち止まって居る間にも、労働に向けての準備が着々と行われている
ミスターレッド
動かねぇと………

ミスターレッド
今回の目的はエリート共の中に内通者を作る事だ………

ミスターレッド
でも…でも……

ミスターレッド
こんな労働……できる訳ねぇだろ…

ミスターレッド
止めねぇと……止めねぇといけないのに…………

ミスターレッド
でも………

ミスターレッド
ここで俺が反抗でもしたら…………

ミスターレッド
俺だって………………

ゴミは部位ごとに切り刻まれ始め、内部に詰まっているドロドロとした物は引っ張り出されている
ミスターレッド
っ………………!

だが、ゴミの処理から目を逸らし何とか気を紛らわそうとする
ミスターレッド
(どうする………?どうすれば良いんだ…?)

ミスターレッド
(この場から撤退するしかねぇのか…?)

ミスターレッド
(逃げ出して……もう一度作戦を立て直せば良いのか?)

ミスターレッド
(じゃあ……此処に居る奴らを見捨てるのか?)

ミスターレッド
(クソッ…………クソッ……)

???
ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!

ミスターレッド
っ……!?

鬼島
嫌だ………嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ……!

鬼島
死にたくない……!

鬼島の内蔵が、皮膚を捲られた事により顕になっていた
ミスターレッド
は………………!?

中級兵
健康体50代男内蔵の様子確認

中級兵2
了解

中級兵2
保存状態の良い内臓は薬に漬けて保存しておいてくれ

鬼島は内臓が綺麗に引っ張り出され、そのまま動かなくなった
どうやら、待遇の良かった人間もゴミになり得るらしい
ミスターレッド
(どうすりゃあ………良いんだよ……!)

ミスターレッド
(誰か………誰か助けてくれ……!)

周囲の人間はまるでロボットにでもなったかの様に無表情で動き続けている
周りで人の様で人で無いものが這いずり回っている様な感覚
ミスターレッド
(通信機………通信機を使えば……)

レッドは耳から手を離し、ポケットの通信機を手に取る
ミスターレッド
っ………………

プルルルルルルルルルル………プルルルルルルルルルル……
親も助けに来なければ家族も助けに来ない、大切な仲間も助けに来ない
今まで自身が何に恐怖していたのか、疑問に思い始める
自分の中の感情の核の様なモノが薄れていくように感じた
レッドは恐怖という感情を乗り越え無を感じ始めていた
ルカ
待てよ……!待てよ…!

ミスターレッド
はっ……!?

ミスターレッド
今の……声…

聞き馴染みのある声で自身の置かれている現状を思い出したのだ
ミスターレッド
そうだ………俺……

ミスターレッド
今俺は………自分の感情の様なモノを失いかけた

ミスターレッド
多分…中級兵の奴らはもう………

きっと、中級兵の無機質さは恐怖を超えた何かだったのだろう
ミスターレッド
ルカの声が無ければ……俺も今頃…

ミスターレッド
こんな場所で疼くまってる場合なんかじゃねぇ………

ミスターレッド
俺は………この島から脱出しなきゃいけねぇんだ

ミスターレッド
まずは………ルカと合流しないといけねぇ…………

ミスターレッド
まず………今まで想定していた計画は失敗だ

ミスターレッド
俺もルカも……こんな仕事に手を染める訳にはいかねぇ…

ミスターレッド
作戦を立て直すのは……ルカと合流したその後だ…

ミスターレッド
どうにかして……此処から脱出して…

ミスターレッド
それから……………

此処から逃げ出せば、エリート兵との交流はまた先になってしまう
ミスターレッド
ちっ…………

ミスターレッド
今は考えてる場合じゃねぇ…

ミスターレッド
とにかく……ルカに会わねぇと……!

レッドはルカの向かっているであろう方向へ走り続ける
視界にはずっと、解体された既に人では無くなってしまった物が入り込む