テラーノベル
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教室の後方。
そこが葵の指定席だった。
前に出しゃばりすぎる訳でもなく
壁に溶け込むような距離感でもない。
ちょうどいい。
全体が見える位置。
誰が誰と話していて、誰が浮いていて、誰が人気者か。
全部、見えてしまう位置だった。
そんな言葉は何度も聞いてきた。
笑顔の裏を見透かそうとする声。
明るさに隠された計算を探そうとする視線。
(私のどこかそんなに気に障るの?)
本音を言えばわかってる。
自分は好かれる要素だけを見せるのがうまい。
男子と話す時はツッコミを入れたり、
ちょっとした弱さを演じたりもする。
女子といる時は、少しだけ引いて話を聞く側に回る。
だけど、それは全部生き抜く術だった。
小学生のときの孤立。
中学での無視。
周りに合わせなきゃ生きていけない
って本気で学んできた。
だから。
朝霧 葵
そう、心の中でつぶやく。
でも口に出すことは無い。
だってそれすら言い訳って言われるから。
その日も昼休み、何となく一人で屋上へ向かった。
日差しが気持ちいい場所。
誰もいない、誰も責めてこない空間。
けれど
岩泉 一
不意にかけられた声に、
葵は僅かに眉を上げた。
朝霧 葵
バレー部副主将、岩泉一。
あまり喋るタイプでは無いけど
信頼の厚い男子。
体育会系で、女子とはあまり喋らないタイプのはず。
岩泉 一
岩泉 一
不器用な言葉だったけれど、悪意がないのがわかった。
だからこそ、あおいは苦笑いした。
朝霧 葵
朝霧 葵
岩泉 一
そう言って岩泉は彼女の隣に腰を下ろした。
何も話さない。でも何も責めて来ない。
葵は初めて沈黙を優しく感じた。
コメント
4件
岩ちゃんいい男すぎる
岩泉さんイケメン✨ 主人公の性格が好きだな…!