1歩を踏み出して

昨日好きって、気づいたばっかなのに、翌日に一緒に帰るなんて...

そ、そんな...

好きな人と一緒に帰るなんて...

俺、まともに帰れるのかな...

だけど俺はまだ知らなかった

これが、後に後悔する選択をしているなんて...

放課後

なに、「先生に呼ばれてたんだよ」みたいなテンション感でいってるの！？

それに...

ま、気のせいか！

帰り道

”あの事”があってから、テニスから目を背けてきたけど...

けれど、せめて、桃くんの応援くらいはしたいと思った

小2......か...

まさか...いや、そんなはずない...

こんな事、聞かなければよかったのに...

それでも俺は聞いてしまった

きっと”違う人”だ

そう信じたかった

けれど...

現実は、そう甘くなかった

やっぱり、違くなかった...

桃くんの口からでた名前は

紛れもない”父さん”の名前だ

スタスタ

赤くん宅

赤くんの部屋

バタン

聞きたくなかった

だって...

俺は...俺は...

大好きな人の憧れを”殺したんだ”

俺は、家を飛び出した...？

回想

俺の父さんは、世界的に有名なテニスプレイヤーだった

そのため、家に帰ってくるのは半年に1度ほどだった

それが俺の合言葉だった

当時の俺は、父さんに勧められて、テニスをやっていた

まぁ、父さんは、母さんと結婚する前から選手で

結婚した事は公表してなかったため、俺が父さんの子供だという事は黄ちゃんしか知らないものだった

そのため、通っていた練習場所の人も、テニスがすごく上手い少年、くらいにしか思っていなかったと思う

俺は、半年に1度会える日を毎日、楽しみに待っていた

けれど、そうもいかなくなった

丁度、小学校2年生の頃

父さんが4大大会を制覇した時...

当然、そうそうとれるものじゃないし、ましてや日本人がその快挙成し遂げたのだ

もちろん、メディアからのインタビューの量も凄かったし、密着取材も多々来ていた

そのため、父さんは家に帰ってくるのが難しくなった

当時の俺にとって、それは余程ショックな事だった

父さんに会える

それを楽しみに頑張ってたのに

いつ会えるか分からない状況になって

...正直、テニスを辞めたくなった

だけど、そんな時

そう、母さんが声を掛けてくれた

この返事をしてから2年...

俺は、小学4年生

水犬くんは、小学2年生になった

それもそうだ、水犬くんが最後に父さんに会ったのは幼稚園の年中

俺でさえうろ覚えなのに、水犬くんが覚えている訳がなかった

そして、いよいよその日は来た...

ピンポーン

そこには

会いたくて、会いたくてたまらなかった人がいた

どうやら、母さんと父さんがサプライズしようと計画していたらしい

けれど...

久しぶりに会ったお父さんは、俺に見向きすらしてくれなかった

......あれ？

思い...出せない...

俺、父さんと親子らしい事した事なかったんだ...

また...そうやって...

テニステニスって...

今思うと、あそこまで言わなくて良かったかもしれない、でも...

その時の俺は、目の前の事でいっぱいだった...

大嫌い！！！

この時の俺は走ってるだけで精一杯だった...

信号が赤なのにも気づかずに...

キキーーッ！！

そこには...

俺を庇って、血まみれになった父さんがいた...