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改めて、優良賞おめでとうございます🎉🎉🎉 こんな素敵な作品と出会えて嬉しいです✨
汚れた心が浄化されました! 心地よい… カサミネさんのストーリーは心地よいなぁ
めちゃくちゃ好きです……!! 名前と性質が真逆と見せかけて、雨宮さんの名前が晴花ちゃん! 太陽に照らされて綻ぶ花のイメージで、さすがでした! 周囲の女の子達も優しくて素直で、グループ全員揃っていれば晴花ちゃんの内面に降る雨も、遠からず雲が晴れていきそうな余韻が素敵でした!!!(*´∀`)
行きたくない校外学習も
面倒くさい遠足も
私の思いとは裏腹に、必ず晴れに なった。
私はいわゆる晴れ女だった。
私の行く先はいつも晴れる。
どうせなら、雨女がよかった。
私には、雨のほうがよっぽど お似合いだ。
今回の遠足も、大雨でいけない 予定だったが
当日は雲一つない快晴だった。
学校での出発式。
グラウンドに、3学年の全員が 集まる。
朝陽 太陽
元気の良い大きな声で、
名を呼ばれた彼が前に出る。
朝陽 太陽
朝陽 太陽
ザーッ
彼が前に出たとたん、
空から滝のように雨が降ってきた。
周りの人たちから、どっと 笑いが起こる。
そう、こんな私に似た人が もう一人。
彼、「朝陽 太陽」は明るい性格に 似合わない雨男なのだ。
先生
朝陽 太陽
先生
雨宮 晴花
先生
周りに流されるがまま、渋々 朝陽くんの横に並んだ。
すると、たちまち空から光が 差し込む。
朝陽 太陽
ノリがいい先生たちも含め、みんなが 盛り上がった。
とまあ、こんなゆるい感じで我が校の 出発式を終え
バスに乗っている長い時間は 隣の席の子と話すなど
そこそこ快適な時間を過ごした。
午前の町巡り。
この時間は、誰とでも自由に まわっていいことになっている。
雨宮 晴花
クラスメイトの子たちから声を かけられ、私は驚く。
声をかけてくれた子たちの後ろを チラッと見ると
申し訳なさそうに笑う朝陽くん がいた。
朝陽 太陽
朝陽 太陽
朝陽 太陽
朝陽 太陽
彼はそう言って、にかっと笑った。
雨宮 晴花
声をかけてくれた子たちは、いわゆる〝イケてる子〟たちで
私なんかが一緒にまわっていいもの か、と気が引けた。
いや、向こうから誘ってくれたん だから
大丈夫だっていうのは分かって いるんだけど
みんながあまりにも笑顔で話しかけてくれるものだから
雨宮 晴花
雨宮 晴花
私はそれに応えることにした。
雨宮 晴花
雨宮 晴花
今は女子組で大仏を見に来ており、
男子組は少し離れたところでお土産を 買っている。
その子は、そう言うとにやっと 笑った。
雨宮 晴花
雨宮 晴花
雨宮 晴花
雨宮 晴花
雨宮 晴花
雨宮 晴花
二人は興味津々に頷く。
でも
自分が朝陽くんを好きになった ちゃんとした理由なんて
本当はなかった。
日陰のような私と
お日様のような彼。
人は、自分と正反対の者に
妙に惹かれるものだ、と思う。
私たちに気がつくと、
朝陽くんはこちらに向かって 手を振った。
私も言われるがまま、手を振った。
すると、朝陽くんが笑顔になる。
私よりもはしゃぐみんなを見て
私も、自然と笑顔になった。
みんなと話すのは楽しくて
本当に楽しくて
私はいつもより、沢山喋った。
でも、すこし調子に乗って しまっていたのかもしれない。
私なんかが。
だから、バチが当たったのだと思う。
トイレに行ってくると言って みんなの元を離れ
戻ろうとした矢先のこと だった。
一緒にまわっていた女の子が、二人で話しているのが聞こえた。
心臓が、止まったのではないかと 思った。
さっきまで温かかった体が、 急に冷えていく感覚に襲われた。
…あ、あぁ、
どうすればいいんだろう。
雨宮 晴花
雨宮 晴花
雨宮 晴花
走って、少し離れたお土産屋さんまで 逃げた。
一人になりたかった。
雨宮 晴花
雨宮 晴花
みんなと話すのが楽しくて、 調子に乗って
しかも勝手に逃げ出して。
みんなに迷惑がかかっていることくらい、分かっているのに。
雨宮 晴花
ポツ…
ポツ…
雨宮 晴花
最初は小さな粒だったものが
やがて大きなものになる。
ザーッ
大粒の雨が町を包み込んだ。
雨宮 晴花
雨なんて、久しぶりだった。
ざあざあと降りしきる雨は
まるで、今の私の心の中を映し出しているようだった。
そうだ。
私の心の中では、いつも雨が 降っていた。
遠足に行きたくなくなったのは いつからだっけ。
あまり人前で話さなくなったのは いつからだっけ。
どう思われているのか不安になった のはいつからだっけ。
分からないけど、
「晴花ちゃんてちょっとうるさいね」 と幼い頃に言われた言葉だけが
高校生になった今でも、いつまでも 耳に焼き付いて離れなかった。
雨宮 晴花
雨宮 晴花
お土産屋の屋根の下で、雨の降る 空を見上げた。
朝陽 太陽
雨宮 晴花
朝陽 太陽
彼はそう言って微笑むと
私に傘をかざした。
朝陽 太陽
さっきまで雨が降っていた私の心に
すうっと光が差し込んだ。
ああ、この人は
私の心を、快晴に変えてしまう。
朝陽 太陽
朝陽 太陽
朝陽 太陽
朝陽くんは、まるで太陽のような 眩しい笑顔でほほえんだ。
雨宮 晴花
朝陽 太陽
彼はそう言って笑った。
声のした方を振り返ると
走ってきたのだろうか、息を切らした 二人がいた。
そういうことだったのか。
彼女たちが悪いわけじゃない。
二人の話し方を聞いていれば、
そういう意味じゃなかったことくらい 分かったはずだ。
私があの言葉に過剰に敏感になって いただけだ。
雨宮 晴花
朝陽 太陽
朝陽くんが、パンっと手を叩いた。
雨宮 晴花
雨宮 晴花
朝陽 太陽
雨宮 晴花
雨宮 晴花
私の笑い声につられて、
みんなも笑いだした。
ふと視線を向けると
嬉しそうに笑う朝陽くんの姿 が見えた。
空は快晴だった。
雨上がりの、雨晴れの空が 広がっていた。
私の心が、晴れてゆく。