郁人
な、なんだよこれ…
郁人
なんでこんなこと
俺は震えながらテントににじり寄った
郁人
息──してない
郁人
あいつに殺されたんだ
郁人
でもなんで…?
郁人
なんでだよ!
郁人
起きろよ
郁人
起きてくれよ!
惨たらしい死体を揺さぶる
郁人
お願いだから──
その時、強引に口を塞がれた!
郁人
(だ、誰だ!?)
『音を立てるな!』
─数時間前─
郁人
理沙、ちょっと待てよ!
郁人
あんま遠くに行くなって!
浜辺を駆けていく妹を追いかけ──
郁人
おい、理沙っ!
理沙
っ!?
郁人
遠くに行くな
腕を掴んだまま、ゆっくりと言い聞かせる
郁人
(でも久しぶりに見たかもな)
郁人
(理沙の笑顔)
郁人
(俺とは年が8つも離れてるから、喧嘩することもない)
郁人
(学校に馴染めないのか、ずっと元気なかったんだよな)
郁人
あとでドローン飛ばすか?
同じ目線で俺が言うと、理沙はこっくりと頷いた
母さん
2人とも、ご飯できたわよー!
郁人
理沙、母さんが呼んでる
郁人
飯だって
郁人
よーい、ドン!
駆け出した瞬間にわざと転んだ
郁人
(理沙が笑ってる)
郁人
負けたら飯ぬきだぞー!
母さん
はい、カレー作ったわよ
郁人
おっ、うまそ!
父さん
外で食べるご飯は格別だろ?
郁人
うん、まぁ…ね
郁人
キャンプなんてダルいって反対して悪かったよ
郁人
まさか父さんが、こんな本格的にやってるって知らなかったし
父さん
少し前に会社の同僚に誘われてな
父さん
自分でもこんなにハマるとは思わなかった
母さん
お母さんも、お父さんがテントとか手際いいからビックリよ
父さん
みんなで来たかったからな
父さん
理沙、美味いか?
理沙がにっこりと頷いた
郁人
てか、こんな良いとこなのに他に誰も居ないの?
父さん
実は父さんも初めて来る島なんだ
母さん
無人島なのよね?
父さん
地図に名前もなくてな
郁人
穴場ってわけか
母さん
夜、熊が出たりとかしないわよね?
父さん
死んだフリをすればいい
母さん
ちょっと、やめてよ!
郁人
母さん、マジになってる
母さん
えっ、冗談なの?
父さん
大丈夫だよ
母さん
もう、2人とも母さんをからかって!
郁人
なんだよ、理沙
郁人
熊が怖いのか?
母さん
まだ9歳だもんね
郁人
心配するな
兄ちゃんが守ってやるから
理沙
スー、スーッ
郁人
(遊び疲れてグッスリ眠ってる)
母さん
よく寝てるわね
父さん
連れてきて良かったな
母さん
郁人もありがとう
郁人
えっ、俺なにもしてないけど?
母さん
あんまり気が進まなかったのに、理沙のために来てくれたでしょ?
母さん
ドローン持ったまま離さないのよ
父さん
郁人は妹思いだからな
郁人
別にそんなんじゃないし
郁人
あんまり父さんがしつこく誘うからさ
母さん
ふふっ、理沙もお兄ちゃんのことが大好きだから
父さん
これからも理沙のこと頼んだぞ
郁人
頼まれなくても分かってるし
母さん
さっ、私たちも寝ましょう
父さん
明日は釣りだからな
郁人
大物を釣ってやるよ
父さん
おう、期待してるぞ
すぐに眠りについた──…
郁人
あぁ、寒っ!
郁人
トイレしたくなってきた
俺はテントから出ようと──
郁人
(えっ、理沙がいない)
郁人
(ドローン入れたリュックもないな)
郁人
(トイレか?)
郁人
理沙ー?
郁人
…いない
郁人
どこ行ったんだ?
郁人
おーい、理沙ー?
郁人
ダメだ、森のほうにも居ない
郁人
一体、どこに──?
母さん
理沙ー?郁人ー?
郁人
あ、母さんだ
郁人
一回、テントに戻るか
そう言って来た道を戻りかけた時だった
母さん
いゃあああああああー!
郁人
か、母さん!?
郁人
母さん!
郁人
──母さん?
郁人
(静まり返ってる)
郁人
(いや、なにか聞こえる)
郁人
(低い唸り声のような…?)
郁人
母さん、大丈夫?
テントに近づくと、誰かが立っていた
郁人
父さん?
父さん
…くと
郁人
理沙がいないんだ
郁人
早く皆んなで探さないと
父さん
いく…と
郁人
父さん?どうしたんだよ!?
郁人
母さんの悲鳴も聞こえたし、何かあったのか?
父さん
に…げろっ
郁人
えっ?
父さん
早く逃げ──ぐはっ!
郁人
(口から血を吹き出した!)
郁人
父さん!
駆け出そうとした俺は、思わず足を止めた
郁人
(誰かいる)
郁人
(暗くてよく見えないけど、誰かが父さんの後ろに──?)
郁人
誰だ!?
懐中電灯を向けた
???
ぎぃやぁあああああー!
郁人
(な、なんだこの化け物!?)
郁人
(まさか、母さんも?)
父さん
ぐふっ…
郁人
(首に噛みつかれた!)
郁人
(でも足が震えて動かない)
郁人
(た、助けないと…)
郁人
と、父さん?
俺が声を発した瞬間!
???
ぎぃいいいいいーっ!
郁人
(こ、こっちに来る!)






