昭和の日とは、昭和の出来事を思い出し、未来のことを考える日。 ネットで検索するとそう出てきた。
昭和の日とは何なのか、ふと気になって調べてみたが、 平成生まれの俺には昭和の出来事など知るはずもない。
今年20歳になる俺、宮田恵吾は、『昭和』を知るために動き出した。
恵吾
現在42歳、 未だ社長になるという夢を諦めていない仕事熱心な父に聞いてみた。
父
髪を整えながら逆に聞き返してくる父。
恵吾
父
しわくちゃな笑顔でサシ飲みを提案してきた。
恵吾
父
父と約束を交わし、俺も大学へと向かった。
恵吾
現在56歳、俺が通う大学で一番話しやすいのが佐渡教授だ。
教授
恵吾
教授は口をぽかんと開けながら固まっている。
教授
恵吾
教授
教授は静かに語り始めた。
1985年、8月12日。 日本航空機が群馬県上野村御巣鷹山に衝突し、 乗員乗客524名のうち520名が死亡する墜落事故が起きた。
教授
教授は俺にコーヒーを差し出しながら、当時の新聞記事を見せてくれた。
恵吾
俺はその内容に釘付けになる。 どの記事も、この事故が相当悲惨なものだったことを示していた。
教授
確かに、こんな大規模な事故が起これば、飛行機に乗りたいとは思わない。
教授
俺は息を呑んだ。まだ世間には知られていない、何かがあるのだろうか。
教授
恵吾
教授
忘れてはならない。これは、知っておかなければならない大事なことだ。
教授
教授はコーヒーを啜りながら、深めの椅子に腰掛ける。
恵吾
俺は深々と頭を下げた。
教授
恵吾
教授の部屋を後にし、帰路についた。
家に帰ると、母が夕飯を用意して待っていた。
母
せっかくだし、母にも聞いてみよう。
恵吾
父と同い年の母。男と女では、また違う思い出が聞けるかもしれない。
母
恵吾
母
今でも何かと可愛らしい一面を見せる母だ、容易に想像ができた。
母
恵吾
母
母らしい話が聞けてよかった。
父
父が帰ってきたようだ。
1988年 ソウルオリンピック。 水泳、100m背泳ぎ、鈴木大地選手がバサロ泳法で金メダルを取った。
父
酒を飲んだ父は自慢げに語りだす。
恵吾
父
いつもと違って饒舌に話す父。俺はその変わりように少し戸惑っていた。
母
母が洗い物をしながら、俺たちの会話を呑気に聞いていた。
恵吾
母
そんなに、俺と話すのを楽しみにしていたのか。
父
学校のプールより長い。俺なんかカナヅチで25mを泳げたこともないのに。
父
先生の真似をしながら、父は楽しそうに語っていた。
その後、父は酔い潰れて寝てしまった。
母
母がそっと毛布を掛ける。
恵吾
母
恵吾
母
昭和の日。それは『昭和』を思い出すための日。 俺は平成生まれだけど、また一年後、『昭和』を思い出してみようと思う。
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