何時もの日課で 彼女の顔を眺めてしまう
僕より遅く登校した卯恭が
教室に入る音でぶるり 、と 肩が震え黒板に視線を戻した 。
朝の挨拶を僕にも欠かさず 、
荷物を置く也 駆け足で直ぐ様寄ってきた 。
友人と思う人物にこんな言い方は
あまり控えたいが 、虫のようだ
美味しい蜜の在り処を知り 寄ってくる蜜蜂のように見える
僕は狙われた地味な花
美味しくなるように 、
不味い所を全力で隠す花だ 。
卯恭 ウキョウ
そんなことは君よりも
数十分以上早くから知っている 。
けれど飽く迄今は ‘ 卯恭の恋愛相談相手 ’
として肯定も否定もしない
慧 ケイ
卯恭 ウキョウ
思う理由なんて見つかる筈が無い 。
恋敵の応援なんて 彼女に言われてもNoと答える
慧 ケイ
巫山戯ては誤魔化す
そうすれば 心臓も少しは持つだろう
君を想う気持ちも爆発しない 。
皐 サツキ
背中辺りから青空のように 澄んだ声が聞こえた
其れは僕の動きをも止めた
後ろを速度を落として振り返れば 、
花の香りが漂う 絶世の美少女が立っていた 。
皐 サツキ
皐 サツキ
人の目を見つめて 言ってくれているのに
僕はどうにも目を逸らしてしまう 。
ほんの少し 、微弱でも つり上がった口角から
僕の苗字が紡がれた
決して有り触れた人が
持っている苗字じゃないから
カンチガイが 起こってしまうじゃないか 。
慧 ケイ
皐 サツキ
ふふ 、と弧を描かれた口から洩れる
そして重そうに椅子を抱えて 黒板の前迄やってきた
皐 サツキ
皐 サツキ
可愛いのに美しくて
柔らかい空気を 纏わせている筈なのに
君は只管に ‘ 華 ’ だった 。
慧 ケイ
一言だけ放った後
全力で動揺を隠し乍 、 席に着く
そして新鮮な場所に立つ横顔を
また見つめてしまう 。
僕の体内時間は約5秒
次の授業の予鈴が鳴った 。
彼女はもう席に着き 準備を終えているのに
僕は5秒を君に費やしてしまった
コメント
2件
寄ってくる蜜蜂 とか 不味い所を全力で隠す花 とか 植物系の使い方ほんと綺麗で尊敬 😖 ♡ 体感5秒