名も無い時代の集落の
名も無い幼い少年の
誰も知らない
おとぎばなし
産まれついた時から
忌み子鬼の子として
桃
う"ッ
その身に余る
罰を受けた
悲しい事は何も無いけど
夕焼け小焼け
手を引かれてさ
桃
(知らない)
桃
知らない
僕は何も知らない
ボカッドカッ
桃
ッ……ゴホゴホッ
お前のためを思ってやってるんだからなナデナデ
桃
……
叱られた後の優しさも
雨上がりの手の温もりも
桃
でも、
本当は本当は本当は本当に
桃
寒いんだ、
死なない死なない
桃
僕は
何で死なない?
桃
夢のひとつも見れないくせに、
誰も知らないおとぎばなしは
夕焼けの中に吸い込まれて
消えてった
ドガッボコッドカッ
青
う"く"ッ
吐き出すような暴力と
蔑んだ目の毎日に
君はいつしか
青
……
そこに立ってた
青
(話しかけちゃだめなのに、)
青
君の名前が知りたいな、
桃
ッ……
桃
(ごめんね)
名前も
舌も無いんだ
僕の居場所は何処にも無いのに
青
一緒に帰ろう
手を引かれてさ
青
行こ
知らない知らない僕は何も知らない
桃
(君はもう子供じゃないことも)
青
ギュッ
桃
……
慣れない他人の手の温もりは
ただ本当に本当に本当に本当のことなんだ
やめないやめない
桃
(君は何でやめない?)
青
……
桃
(見つかれば殺されちゃうくせに、)
雨上がりに忌み子がふたり
夕焼けの中に吸い込まれて
消えてった
日が暮れて
夜が明けて
遊び疲れて捕まって
こんな世界僕と君以外皆いなくなればいいのにな
青
皆いなくなればいいのにな、
知らない知らない声が聞こえてさ
僕と君以外の全人類
抗う間も無く手を引かれてさ
夕焼けの中に吸い込まれて消えてった
知らない知らない
青
僕は
何も知らない
青
これからのことも
青
君の名も、
青
……
青
今は、今はこれでいいんだ
ただ本当に本当に本当に本当に思うんだ
知らない知らないあの耳鳴りは…、
またねッ
青
ッ……クル
青
……
青
またなッ
夕焼けの中に吸い込まれて消えてった