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香苗

あれ…

香苗

香苗

今日、晴れるって言ってたのに…

透き通る、青い空の向こうから

ポツポツと雨の雫が落ちてきた。

空は青く晴れて、雲一つないのに

何故こんなに雨が降るのだろう…。

私が1人空を見上げていると、1人の老婆がこう言った。

おばあさん

あぁ…これは狐の嫁入りやねぇ?

香苗

え、何です?おばあさん。

パラつく雨の霞みがかった向こう

1人の老婆が空を見上げ呟く。

おばあさん

知らんかいね?

おばあさん

狐の嫁入り。

香苗

…いいえ?

香苗

私はここではなく北の生まれなのでこの土地の風習には疎くて…。

おばあさん

ふふ、

おばあさん

風習ねぇ…

おばあさん

そう言われれば、そうなのかもしれんねぇ。

香苗

あの、おばあさん

香苗

狐の嫁入りってなんです?

おばあさん

ええねぇ、

おばあさん

それはお狐様達が皆に隠れて行う婚姻の事だと言われておってね…

おばあさん

いつの時代にもそう、こう、晴れた曇り空の一つとない時に通り雨のように降って過ぎ去る雨を「狐の嫁入り」と言っておったんよ…。

香苗

…へぇ。

香苗

何かすごく幻想的ですね…。

おばあさん

ふふ、そうかい?

おばあさん

でも本当はそんなんじゃなくてね…

おばあさん

私達の時代には「狐の涙」と呼ばれておったんよ…。

香苗

狐の涙…?

おばあさんは遠い空の向こうに過去を捲るように話し出した。

おばあさん

おばあさん

昔この地域はね、貧しい貧しい農村ばかりで、食料不足や過剰な税の取り立てて苦しむ家が後を絶たんかったんよ…。

おばあさん

生まれた子供にもロクに栄養をやれず、その頃、5歳を迎える頃にゃ奉公に行かされるのがその頃のこの地域の風習でねぇ…。

おばあさん

特に力が弱く、農業に向かんオナゴ達は遊郭や武家に高く売りつけておったんよ…。

おばあさん

おばあさん

幼き心は純真にも、家族のためだとオナゴ達は必死に働いた…。

おばあさん

いつか、きっと迎えに来る…きっといつか自由を得れると…。

おばあさん

自分が売られた事も知らずにね…。

おばあさん

おばあさん

そして幾ばくかの時が流れ、女達はその鳥籠の中から恋を見つけるの。

おばあさん

それはお互い通じ合えるものいれば、ひたすらに思いを募らせるもの、鉄格子の檻の中から女達は必死に手を伸ばし愛を伝え唄ったという…。

おばあさん

おばあさん

でもね、悲しいかな、そこは籠の中。

おばあさん

女は美しくなる度に買われて行き、何一つとして叶う恋などなかった…。

おばあさん

おばあさん

やっと出られた籠の外、しかし繋がれた手錠は思い人ではない。

おばあさん

おばあさん

そんな女達の嫁入り前の顔はひどくてねぇ…

おばあさん

いくら化粧をしても涙ですぐ取れてしまったんだという…。

おばあさん

それに困った役人達は、その泣き顔に白く美しい狐の面を被せ、この嫁は美しすぎて周りに顔は見せられないと男達は大前を張ったという。

おばあさん

おばあさん

女達はその狐の面の下に愛しの人と結ばれなかった悲しみを呪い、その涙が天へと登り雨を降らせた…。

おばあさん

おばあさん

それが、この地域に纏わる狐の嫁入りの伝承なのよ…

香苗

…へぇ。

香苗

じゃあ、今もこの空の下に望まない結婚をして泣いてる人がいるって事なのかしら?

おばあさん

さぁねぇ…

おばあさん

それは分からないけどね…。

おばあさん

おばあさん

狐の涙は短い通り雨。

おばあさん

涙を流してもすぐに晴れる

おばあさん

女は強い生き物なのよ…。

おばあさん

きっと雨上がりに露が燦めくよう、虹がかかるように、その人生を輝かせる力はあるのかもしれないわね…

香苗

香苗

もしかして…

香苗

おばあさんも…?

おばあさん

ええ、どうだったかねぇ?

おばあさん

最初は忘れたわ。

おばあさん

でも今でも主人を愛してる。

おばあさん

それだけは変わらないのよ。

香苗

香苗

狐のお嫁さん、

香苗

幸せになるといいですね…

おばあさん

ええ、

おばあさん

きっと大丈夫。

おばあさん

おばあさん

ほら、晴れてきたじゃない…

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コメント

13

ユーザー

おばあさんの「今は愛している」と言う言葉が素敵ですね✨✨

ユーザー

廓の中に限らず、許嫁、政略結婚などなど望まない結婚はありますよね… でもめげずに自分の運命の中で生きていく… 女は強し、ですね!

ユーザー

とってもいいお話ですね…✨

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