神と修羅

野生動物はけっして 遊びで殺したりはしない。 人間は同種族を苦しめて殺すこと、 それ自体を愉しむ唯一の動物である。

––– ジェームズ・フルード

住宅街

今、僕達は責任のなすりつけ合い をしているがこれには訳がある。

水鏡さんが仲間になった後 僕達は彼女が嘘を言っていないか 能力の確認をしていたのだ。

結果的に言葉で人を操ること、 姿を透明化することは 嘘偽りない能力だった。

しかし、僕は... 思わず面白くなってしまった。

だって突然、そういう能力が使える 人が現れたら色々な検証とか してみたくなるのが 男ってモンでしょ！？

住宅街に流れる 緊迫した空気。 何を言っているんだと 言わんばかりの彼女らの目線。

鬼のような形相で 僕を見つめる彼女に 思わず僕は目を逸らしながら 従う羽目になった。

親は連絡すると すぐ返信が来た。

僕の肩を組んで話す逃亡者と 嬉しそうに笑う誘拐犯に 僕は乾いた笑いしかできなかった。

突然、目の前に ピアスバチバチの タトゥーゴリゴリの 如何にも治安が悪そうな 女性が現れた。

それと同時に本能が叫んだ。

「逃げろ」と。

僕は２人の手を取ると その場を全速力で後にした。

路地裏

僕達は路地裏へ逃げ込むと 近くのゴミ箱裏へ隠れた。

そう言うと彼女は こちらへ駆け出すと 折りたたみ式ナイフを 僕達めがけて突き刺した。

水鏡さんはそう言うと 昼の検証時に行なった “複数人透明化”をし この場からの逃走を図った。