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いらっしゃいませー

今日は、何になさいます?

今日も店という名の 生け簀の中で

必死に媚を売る

すると上客の安藤が

安藤

そうだなぁ……

熱っぽい視線を 私に向けた

(嫌だな……)

その目が、不快だった

安藤

泉ちゃん、今日もキレイだね?

まあ、嬉しい!ありがとうございます

きらびやかなドレスに 身を包み

綺麗だね、美しいね

そう言われるのが

夢だったはずなのに

安藤

ホント、男の子には見えないよ

本当ですかー?

嬉しいです♪

両手を胸の前で組み

心にもない言葉を 笑顔で着飾る

安藤

ねえ、明日も……

安藤

会えるよね?

そう言って 安藤が身を寄せた

明日は、ちょっと。予定があって

安藤

それって、俺よりも大事な用事なの?

……ごめんなさい

結婚式なんです

友達の

安藤

本当に友達?怪しいなぁ〜

安藤

俺のこと、嫌いになった?

安藤さん……

するりと安藤の膝に 手を伸ばす

そんなはず、ないじゃないですか……

また、来てくださいね?

上目遣いで囁くと

安藤

も、もちろん!

安藤は満足気に 私の手を握り

太ももへと滑らせた

やだ、困ります……

安藤

いやいや!冗談、冗談!

安藤

本当、泉ちゃんはかわいいな〜

ふふっ、ありがとうございます

勘違いしてはいけない

目の前に居るこの男が 求めているのは

綺麗に着飾った「男」

私が「女」に 生まれていたら

この男の目に止まることは 無かっただろう

(それでも……)

(女に生まれたかった)

生物は何でも

雌雄を分けたがる

それは差別ではなく

区別するため

愛すべき者と

相容れぬ者とを

間違えてしまわぬように

仕事が終わって帰宅すると

宮本……

友達から連絡がきた

イズミ

お疲れ様

イズミ

今、帰ったところ

宮本

そっか

宮本

明日、来れそう?

イズミ

行くに決まってるじゃない

イズミ

私たち、親友なんだから

自分で言って、苦しくなる

私と彼は

永遠に『親友』のまま

決して交わる事のない

『平行線』の、まま……

宮本

式には、好きな格好で来いよ

イズミ

え?

イズミ

なによ、それ

宮本

気を使うなってこと

イズミ

(なんで、そんなに……)

イズミ

(優しくするの?)

それを聞かないのは 怖いから

「だって、親友だろ?」

そんな言葉が返ってくると 知っているから

イズミ

ありがとう

震える指で返事をして 会話を終わらせた

ふぅー……

チャットで良かった

宮本は、どんな私も 受け入れてくれる

今のままでも

充分、幸せ……

明日、何着ていこうかな?

式に呼んでくれる 親しい人など他に居ない

私はクローゼットから 派手なドレスと並ぶ

唯一の晴れ着に 手を伸ばした

これに、しよう

翌日

宮本

あれ、泉……?

宮本。今日は……

グイッ

宮本

いいから、ちょっと。こっち来い!

な、なんで?

宮本に手を引かれ

控え室へと連れて行かれた

宮本

どうしたんだよ!?
その格好……

へへっ、似合う……かな?

宮本

いいのか!?

宮本

男の格好で……

うん

(本当は、いいわけない……)

ずっと好きだった人の前で

メイクもネイルもせず

服だって、男物……

いいんだよ

だって、さ

新郎の友人が、女装してスピーチなんて

そんなの……

花嫁さんより、目立つでしょ?

宮本

それは、そうかもしれないけど……

(宮本は、優しいな)

だからこそ今日は

この場に 相応しい服を選んだ

優しい彼を

世間の冷たい目から 守るため

いいんだ、本当に

宮本

泉……

それにさ

私なら、スーツだって似合うでしょ?

宮本

はあ……

宮本

相変わらずの自信だな?

ふふっ♪

これでも店のナンバーワンなんで

宮本

……そうだったな?

宮本

今度、店に行くよ

宮本

今日の礼もかねて

本当に!?

ご来店、お待ちしておりまーす♪

宮本

お前、本当に商売上手だな?

まあねー?

うちの店、女の子もOKだからさ

奥さんも、連れて来てよ

宮本

ああ、そうするよ

(ありがとう、宮本)

(……大好きだったよ)

宮本のおかげで

ありのままの自分を 好きになれた

(だから……)

(これからも、そばに居たい)

愛される存在には なれなくても

君に相寄る

ただ一人の、友として

#TELLER文芸部

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コメント

13

ユーザー

社会的な「相応しいさ」を、自ら選んでしまう泉さんが悲しくも優しいです。そして式のスピーチをお願いするほどの関係性を築いている2人の絆に、思わずそれぞれの今後の幸せを祈ってしまいました。

ユーザー
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