泉
泉
今日も店という名の 生け簀の中で
必死に媚を売る
すると上客の安藤が
安藤
熱っぽい視線を 私に向けた
泉
その目が、不快だった
安藤
泉
きらびやかなドレスに 身を包み
綺麗だね、美しいね
そう言われるのが
夢だったはずなのに
安藤
泉
泉
両手を胸の前で組み
心にもない言葉を 笑顔で着飾る
安藤
安藤
そう言って 安藤が身を寄せた
泉
安藤
泉
泉
泉
安藤
安藤
泉
するりと安藤の膝に 手を伸ばす
泉
泉
上目遣いで囁くと
安藤
安藤は満足気に 私の手を握り
太ももへと滑らせた
泉
安藤
安藤
泉
勘違いしてはいけない
目の前に居るこの男が 求めているのは
綺麗に着飾った「男」
私が「女」に 生まれていたら
この男の目に止まることは 無かっただろう
泉
泉
生物は何でも
雌雄を分けたがる
それは差別ではなく
区別するため
愛すべき者と
相容れぬ者とを
間違えてしまわぬように
仕事が終わって帰宅すると
泉
友達から連絡がきた
イズミ
イズミ
宮本
宮本
イズミ
イズミ
自分で言って、苦しくなる
私と彼は
永遠に『親友』のまま
決して交わる事のない
『平行線』の、まま……
宮本
イズミ
イズミ
宮本
イズミ
イズミ
それを聞かないのは 怖いから
「だって、親友だろ?」
そんな言葉が返ってくると 知っているから
イズミ
震える指で返事をして 会話を終わらせた
泉
泉
宮本は、どんな私も 受け入れてくれる
泉
泉
泉
泉
式に呼んでくれる 親しい人など他に居ない
私はクローゼットから 派手なドレスと並ぶ
唯一の晴れ着に 手を伸ばした
泉
翌日
宮本
泉
グイッ
宮本
泉
宮本に手を引かれ
控え室へと連れて行かれた
宮本
泉
宮本
宮本
泉
泉
ずっと好きだった人の前で
メイクもネイルもせず
服だって、男物……
泉
泉
泉
泉
泉
宮本
泉
だからこそ今日は
この場に 相応しい服を選んだ
優しい彼を
世間の冷たい目から 守るため
泉
宮本
泉
泉
宮本
宮本
泉
泉
宮本
宮本
宮本
泉
泉
宮本
泉
泉
泉
宮本
泉
泉
宮本のおかげで
ありのままの自分を 好きになれた
泉
泉
愛される存在には なれなくても
君に相寄る
ただ一人の、友として
#TELLER文芸部
コメント
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社会的な「相応しいさ」を、自ら選んでしまう泉さんが悲しくも優しいです。そして式のスピーチをお願いするほどの関係性を築いている2人の絆に、思わずそれぞれの今後の幸せを祈ってしまいました。