ーーーー爾步(ニホ)ーーーー
そこは非常に日本と酷似した国 1000年前、長く続く平安の世に不満をもった二人の貴族、リン氏、ナ氏が太平洋を渡り まだ未開発だった遥俯大陸に たどり着いた。
繁栄を築いた爾步(ニホ)だったが 国に多く貢献するナ氏を よく思わなかったリン氏は 正妻に
"霧生の血"を無理やり飲ませた。
"霧生"とは平安のおぞましい怪物で その血を飲んだものは その怪物のようになってしまう…
血を飲み、しだいに原型をとどめなくなってしまった正妻は慌てて森に隠れたが
「おぞましい怪物をナ氏が匿っている」
そう言い放ち、 "ナ氏狩り"と称した反乱を起こすと 世はしだいに リン氏の天下になっていたー…
ーーーー現在ーーーー
"ガチャンッ"
管理人
管理人
少し濡れている床が歩くたび"ピチャン" と鳴る
管理人
管理人
管理人
"バタンッ"
ドアが閉まった。 今日はもうあの扉が開くことはもうないだろう
柚華
動く気力が出なかったが無理やりにでも足を動かす
1日一回届けられる食事 唯一これだけが命綱だ
毎日これしか動かないから筋力は衰え 膝立ちすらもままならず 私の足はアザ、傷が常に絶えない
"ぎぃぃぃ"
動くたび、足に繋がれた重く冷たい鎖が金属音を立てる
柚華
這いつくばりながらやっとの思いで パンを掴むと
一口サイズを口に入れ、無心でパンを頬張る
柚華
柚華
最初は何も感じなかったパンが 今はほんのり甘くて あの時離れてしまった母を思い出す
光が見えるのはあのドアを開けたときだけ いつも私の目の前は深い闇に包まれてる
いつになったら私は お日さまの光を見ることができるの?
ーーーーリン家、離れのお屋敷ーーー
リンドウ
リンドウ
レン(付き人)
リンドウ
レン(付き人)
レン(付き人)
レン(付き人)
リンドウ
リンドウ
リンドウ
レン(付き人)
レン(付き人)
レン(付き人)
凛憧(リンドウ) 天下のリン氏、次期後継者である
蓮(レン) リンドウの付き人でリン家最強の武道の実力を誇る
リンドウ
レン(付き人)
リンドウ
リンドウ
リンドウ
リンドウ
レン(付き人)
レン(付き人)
リンドウ
リンドウ
レン(付き人)
リンドウ
レン(付き人)
レン(付き人)
リンドウ
リンドウ
レン(付き人)
リンドウ
レン(付き人)
レン(付き人)
レン(付き人)
リンドウ
リンドウ
レン(付き人)
レン(付き人)
リンドウ
リンドウ
レン(付き人)
リンドウ
レン(付き人)
レン(付き人)
リンドウ
レン(付き人)
リンドウ
レン(付き人)
レン(付き人)
リンドウ
レン(付き人)
"ザッザッザッザ"
山に続く道はとにかく草が生い茂り 少々歩くのに不便を感じる
リンドウ
道はとても長くしばらく歩いていると 断崖絶壁のような道が現れ 下を見ると 思わず"死"を連想させる
リンドウ
レン(付き人)
リンドウ
リンドウ
レン(付き人)
リンドウ
レン(付き人)
レン(付き人)
リンドウ
どれだけ歩いただろうか…
何も変わらない道を歩き続け ようやくぼんやり明かりが見えた
あそこに2人ほど立ってるのは 警備の者だろう
警備の者
警備の者
レン(付き人)
レンは貴族の札を見せる。 すると、さっきの威勢はどこにいったのか警備の者は急にかしこまった
警備の者
警備の者
レン(付き人)
レン(付き人)
警備の者
レン(付き人)
警備の者
レン(付き人)
レンはその役人に ありたけの銭を握らせる
警備の者
警備の者
レン(付き人)
警備の者
"ぎぃぃぃぃ"
役人が重く分厚い金属の扉を開ける
中は火を灯さなければ何も見えない ほど暗く、空気も悪い 地面は湿っぽく 歩くと水音が"ピチャン"と響く
リンドウ
リンドウ
レン(付き人)
リンドウ
リンドウ
リンドウ
警備の者
警備の者
柚華
火が彼女を照らし出す
リンドウ
思わず息をのんだ。 白い肌、黒く長い髪、切れ長の目に ふっくらとした唇…
まさしくこれが美人というのだろう こんな美しい女(おなご)が ずっとこの檻に入っていただなんて…
女の哀しい表情は どこか 愛してやまない花「月下美人」を 連想させた
リンドウ
柚華
その女には手、足に痛々しいほど重い金属の鎖に繋がれ 女の足はアザや傷で真っ赤になっている
リンドウ
リンドウ
柚華
リンドウ
柚華
女は檻にしがみつきこちらに顔を 向ける 開かれた瞳はとても澄んでいて 見ていると 吸い込まれそうな感覚におちいる
相手は、あのおぞましい霧生の混血 なのに…
柚華
柚華
柚華
それは悲痛な叫びで 脳内に女の声がこだまする
リンドウ
何も言えなかった。ただ…
泣き叫ぶ女から目が離せなくて
俺は…恋に落ちてしまったんだ