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遊園地の内部は荒廃していた。かつて大勢の来園者を乗せて稼働していたであろう観覧車は完全に錆びつき、落下したリフトが倒れ込むようにして広範囲に転がっている。
Kotoka
スカジャンを掴む指の力が強まる。
Doppio
コトカが付いてこれる範囲の速度で足を進めていく。端末の表示が正確なら、もう少しでドーム状の建造物が見えてくるはずだ。
Kotoka
Doppio
Kotoka
Doppio
Kotoka
コトカが指を差した先の家型の建物の3階の窓の内側には、確かに何かが吊り下がっていた。
Kotoka
顔面蒼白になりながら、震える手でスマホを操作している。 そんな中でオレは軽く屈伸をした。
Kotoka
Doppio
助走を付けて地面を強く蹴り上げ、ボルダリングの要領で壁を駈け上がる。3階部分の隣の窓枠の下部に手を掛けて、指先に力を込める。 背筋を反らして姿勢を反転させながら、靴底で硝子を蹴破った。
Doppio
不穏な影の正体を確認した後、破壊した窓枠から外部へ声を掛ける。
Kotoka
Doppio
Kotoka
その言葉を待つ事なく、まるで前転をするかのように窓枠を通り抜け、数メートル下の地面へと着地する。
Doppio
Kotoka
Doppio
Kotoka
Doppio
コトカが前を向いて歩き出す。 目的の建物は、すぐ先にあった。
巨大な建造物の正面にあるメッキの剥がれた豪奢な扉を押し開けると、無数の観客席が広がっていた。
Kotoka
Doppio
上部の窓から僅かに光が漏れるだけで、昼過ぎとは思えない陰鬱さが漂っている。
Kotoka
コトカが通路左脇の段ボールを無造作にひっくり返すと、砂埃が舞った。
Kotoka
Doppio
解体作業をする予定だったのか、赤色のコーンや鉄パイプが通路脇に乱雑に積まれている。
Doppio
通路脇から観客席の間に向かおうとしたその時、大きな音を立てながら入口の扉が閉まった。
Doppio
Kotoka
舞台が複数のスポットライトで照らされる。電気は閉園時に止まっている筈だ。
Doppio
唇の手前に人差し指を置き、小声でそう伝えると、コトカはコクコクと無言で俯いた。
Doppio
意図的に足音を立てながら、観客席の間を通り舞台へと向かっていく。 その言葉に応えるように、何も無かった舞台上に何かが出現した。
bonny
青い鳥の着ぐるみそうが告げた後、Lucky、Happy、Funnyと名前を付けた着ぐるみがが次々と現れた。
bonny
Doppio
僅かに笑みを浮かべながら言葉を返し、最前列に腰掛けて腕を広げる。
bonny
スポットライトの色が次々に変わり、ショーが始まる。歓迎の歌を終えると、ジャグリングや簡単なマジックが次々と披露されていく。
Doppio
視界の端でキラキラと輝く何かに視線を向けると、舞台脇の小道具入れの中に細かな箔の装飾がついたメリーゴーランドが入っていた。
Doppio
funny
ショーの終わりに向かっていく最中に、ラジオのノイズが混じったような声が聞こえてくる。
happy
funny
観客席に背を向けて、着ぐるみ達が鉄パイプやハンマーを手に取り出す
happy
視界の中に何かを捉え、咄嗟に首を傾けると、少し前に首のあった位置にレンチが深々と突き刺さった。
Doppio
座席から立ち上がり、黒のスカジャンを脱ぎ捨てる。垂直に立てた指先を手前に向けた後に拳を握った。
Doppio
その挑発に乗るかのように、Happyが鉄パイプを振り下ろす。だが、それは空を切った。
happy
半身をずらして回避したドッピオの蹴りをまともに食らい、舞台奥の壁に叩きつけられた。
funny
動かなくなった着ぐるみは、闇の中に溶けるように消えていった。
funny
Funnyが工事現場用の柄の長いハンマーを構える。ドッピオは座席から跳躍し、舞台の中央に降り立った。 その場所目掛けて、ハンマーが力任せに振り回される。
Doppio
ポケットに両手を突っ込んだまま、バックステップで全て回避する。
funny
振り回したハンマーの重みでFunnyがよろめいた瞬間、ドッピオが瞬時に左のストレートを放った。 背まで貫通する威力がある拳を受け、着ぐるみが霧散していく。
Doppio
背を目掛けて飛んできた鋭利な鉄パイプを掴んだ後に、Luckyを睨みつける。
Doppio
右足を大きく踏み込み、槍投げの要領で鉄パイプを投擲する。 回避する間を与えられる事もなく、3体目の着ぐるみが崩れた。
Doppio
bonny
Bonnyは何も言わずに姿を消した。
Doppio
Kotoka
Doppio
舞台脇にあったメリーゴーランドの玩具を手に取り、光が差し込む扉の方へと向かう。
Kotoka
Doppio
Kotoka
薄汚れたグローブの上に、小さな手が重なる。劇場の外の空は、夕暮れに染まっていた。
Kotoka
Doppio
Kotoka
何かに覆い被せられた後に、鈍い衝撃を感じた。暖い何かが、アタシじゃない方から流れてくる。
Doppio
Kotoka
ドピちゃんは、右のお腹の辺りを押さえて蹲っていた。訳の分からない量の血を流しながら。
Doppio
不気味な鳥の鳴き声が聞こえると同時に、黒い光の矢がアタシのすぐそばの壁に当たった。
Kotoka
Doppio
Kotoka
なんでなの なんでアタシはいつもこうなの 誰の役にも立てないなんて
Kotoka
浮かんだ涙を腕で擦り、ポケットからスマートフォンを取り出す。 フラッシュをONにして、2人が画面に挟まるように腕を掲げる。
Doppio
Kotoka
フラッシュが焚かれると同時に、黒い矢を受けたスマートフォンが粉々に砕け散った。
bonny
???
身体が持ち上がる感覚と、聞き覚えのある声を耳にしながらオレは意識を失った。