兄さんの特別

昨日は俺への噂が出回って、放心状態だった。

だから、兄さんとの約束も忘れてて。

それに···今の俺が兄さんと居ると兄さんもゲイだとか、男好きとか言われるから、離れるようにした。

もちろん、蛍とも。

まだあの場にしか広まってないお陰でバレー部の人たちには知られなかった。

ただ、不思議な目で心配している目で俺を見ている。

ﾀｯ

俺に近付いちゃダメなのに。

ゲイの俺に、近付いたら···嫌われる。

俺が、ゲイだから。

ゲイだから、悪いんだ。

ﾀｯ

違うんだ。

違う。

俺は···蛍や兄さんが好きなだけで、ゲイなんかじゃない。

俺は···っ。

やっぱ、違う。

俺は正真正銘···ゲイだ。

これから、どうしようっ。

聞きたくない。

柊翔の声も。

母さんの声も。

父さんの声も。

兄さんの声も。

自分の声も。

聞きたくなんか、ないっ。

ﾀｯ

気持ち悪い。

怖い。

苦しい。

もう、嫌だ。

こんな、人生···嫌いだ。

しに···たぃ。

ｶﾞﾁｬｯ

ｷﾞｭｯ

父さんに言われた通り、蛍や兄さんと話そうとした。

でも、柊翔が俺を睨んでくるから話に行けなくて。

実際言って、何を言おうかも思いつかない。

最近、吐くことが増えた。

咳も出てるし、体が重たい。

ただのすぐ治る風邪だろうと俺は無視している。

今日、は2人と話すんだ。

突然話しかけられた女子達に連れられ、空き教室までやって来た。

周りには味方が居るから。

同性愛者でも、異性を好きになっても。

俺は普通の人。普通なだけ。

それがただ、同性を好きになっちゃっただけだから。

こんな俺でも、周りの人達は俺の味方で居てくれる。

俺はただ普通に恋をしてるだけなんだから。