コンテスト受賞作品集

同性の女子とコミュニケーションをとることさえままならない私が、話したこともないクラスの男子と気負うことなく気軽に話せた。

その事実が私を温かい気持ちにさせた

だから何も考えずに その文字を打っていた

それなら告白される身にもなって欲しい

なんて言えるわけもなく

私が打った文章を大声で読まれる辱(はずか)しめにじっと耐える

私が口下手なのが原因なんだから、しょうがない。

それに私への嫌がらせなんてマシなほうだ

彼に比べたら

巻き起こる嘲笑の渦を意に介せず、落書きだらけの机に向かう

元クラスのアイドル 葉山将人

これが私のライン友達

公園のトイレで男性が若い女性にわいせつ行為。男性逮捕。

ゴシップ好きの行動力とは恐ろしいもので

逮捕された男性が葉山将人君の父親だと短期間で調べあげた。

なんでも器用にこなす葉山君に対する嫉妬心から

主に男子から手酷いいじめが始まった。

犯罪者の家族、それも痴漢 となると一斉に手の平返し

誰もがストレスの捌(は)け口に葉山君を利用した

どうしようもなく世渡りが下手な私は、見て見ぬふりしか出来ない。葉山君を助けることが出来ない。

なのに

葉山君とのラインを楽しんでいる自分がいる

学校でも葉山君を目で追ってしまっている

見て見ぬふりも立派ないじめだって言うから、

葉山君を助けようとしない私に 願うことは出来ない

恋仲になりたい、なんて そんな資格はない

葉山君とラインするたび、好きの気持ちが募るけど

送信ボタンを押すつもりはなかった。

見て見ぬふりをしている私には許されない行為

市村大輝 が莉子 を「2-6グループライン」に招待しました

市村大輝 が将人 を「2-6グループライン」に招待しました。

次々に届く4文字にして傷を抉るメッセージ

これを私が打つのだろうか？

手が震える。息が出来ない

痴漢撲滅 痴漢撲滅 痴漢撲滅 ： ：

刃物より深く傷を抉るメッセージの中に

葉山君のSOSを見つけた

嫌がらせを全く気にしていない葉山君が

いや、ずっと目で追ってしまっていた私にはわかる

葉山君はずっと 傷付いていた

それを知ってもなお見て見ぬふりをするのだろうか？

手が震える。息が出来ない。

募る好きが溢れ出る

クラスの人数36

既読：35