私の好きは机から。

ｷｰﾝｺｰﾝｶｰﾝｺｰﾝ

机の落書きのことが、頭から離れなくなっていた。

「...は、はい！！！」

バンッ！と机を叩き、 私は咄嗟に立ち上がってしまった。

教室は、風の音だけが響いている。

先生は驚いた顔で、少しばかりこちらを見たまま黙っていた。

顔が熱くなるのがわかる。

私はそっと、なるべく音を立てないように座った。

ｷｰﾝｺｰﾝｶｰﾝｺｰﾝ

そして、古典の授業で頭から離れなかった、机の落書きを思い出す。

私は恐る恐る、自分の机に目を落とした。

「消し忘れちゃってすみません。 ホントですか笑 犬可愛いですよね。自分は犬派です。」

そこにはそう書いてあり、文字の隣には可愛い猫の絵が描かれていた。

胸の鼓動が徐々に高くなる。

段々上がる口角を、私は誤魔化すことはできなかった。

1ヶ月後

私はあの日から、ある人へ向けて机にメッセージを残すようになった。

その人の名前は、翔（かける）。バスケ部に所属しているらしい。

バスケ部かぁ、凄いね！ 中学からやってたの？

その文字と共に、何かそれ関係についての絵が描きたくて、かれこれ10分間も悩んでいる。

ｷｰﾝｺｰﾝｶｰﾝｺｰﾝ

私は、楓にそう言い残して教室を出る。

そして楓が追ってくるのを確認して、次の教室へ向かった。

私はワクワクが止まらなかった。

ｷｰﾝｺｰﾝｶｰﾝｺｰﾝ

私は自分の机を確認する。

「小学生の頃からやってるよ。 今度教えてあげるね」

そう綴られた文字の横には、私が描いた不器用なバスケットボールを使った男の子が描かれていた。

ﾄﾞｷｯ

私は咄嗟に、周囲に聞こえていないかを確認する。

私は、そう自分に言い聞かせた。

私は逃げるように、教室を出た。