episode.6
最初はただの新人だと思っていた
初めての配属がここなのは大変だな、なんて思い
慣れない手つきで仕事に励んでいる
そんな彼を見て少し微笑ましく思っている自分がいた
最初は
そんな彼に自分達の情報が探られているなんて思っても見なかった
この刑務所が彼の手によって破壊されようなんてもってのほかだ
でも…
俺達2人を前にして必死に何かを考える彼
俺達がここに来るのは想定外だったのだろう
冷や汗を流しながら必死に何かを考えている
彼はきっと2つの事で必死に思考を回転させているのだろう
1つは任務の事
2つ目は…多分、彼の仲間の事だろう
…仲間想いな奴だ
先に何かを仕掛けてくるのかと思っていたが
何か仕掛けてくる様子がない
彼ほどの実力者なら俺達を倒す事はできたと思うが
彼は謙虚だ
自分の実力を過信していないようだった
十分殺せただろうに
俺達としてもこのような実力者を失ってしまうのは惜しい
だから
洗脳することにした
俺達に従順な僕にする
これほど優秀な戦力はそうそういない
いふ
りうら
ドカッッ
りうら
バタッ…
予想外の事態に混乱している彼を気絶させるのは簡単だった
彼でも予想外だったのなら中々いい作戦だったという事だ
まぁ、予想外なのも無理はない
だってこれは
俺達の計画的犯行なんだから
後は気絶している彼に洗脳させる薬を飲ませるだけ
これで従順な僕の完成
気をつけなければならないのは
薬を定期的に飲ませないと効果が切れてしまうということ
といっても切れる前に飲ませるのだから抵抗なんてされないだろうけれど
本当にあいつがいなければ俺達は彼らの意のままだっただろう
彼の演技力…恐ろしいぐらいだ
しっかり役を作り上げ
少しずつ相手の信用を買い懐に潜り込んで来る
…でも、
多分あいつがいなくても彼の正体に気づく事ができただろう
彼は仲間に対して普段より気が緩んでいる
そんな素ぶりを見せていた
極力傷つける事はしない
でもこれは"新人だから上手くできない"という事もあるだろうが
仲間の前では役に成りきれていない様だった
まず…基本、挑発的な態度を取られていない
あいつらの声も表情も俺達の時よりも明るかった
そして彼も
仲間がこの刑務所に来た時や
俺達からの罰を受けた時に
驚きや悲しみの表情を一瞬見せていた
その他にも怪しい部分は注意深く見るとあった
それを見るに
俺達が彼の正体にあいつがいなくても気づく事ができたと思う
けれども、あいつがいなければ洗脳させる事はできなかっただろう
もちろん彼の正体に気づくのにも時間がかかっただろうし
この作戦を実行できたのは間違いなくあいつのおかげだ
欲しい情報があるであろう資料室に行くルートに
あえて誰も見回っていない空き時間を作り
その時間に行く様仕向けた
この作戦も全部
アニキの案だ
episode.6終了
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