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最初の文から引き込まれました。 旅人に出会ってから、女王が改心していく話なのかなーと思っていたら、まさかの旅人は騎士で、しかも女王は亡くなったので驚きました! 読み終えた後は、一つの映画を観たような感覚でしばらくぼーっとしてしまいました…✨
人間の強欲とか、醜さとかが表されていていいですね。 まさかの展開で驚きました。 作品作り頑張ってください!
驕った女性が自分と重ねた存在の崩落を目の当たりにして取り乱す、愚かですよね…
――ここに記すのは、私の懺悔と、告発の記録である。
民
民
騎士
騎士
騎士
騎士
騎士
騎士
この国に女王が即位し、何年になるだろう
名君と讃えられた、前王の娘
彼女が国を治めるようになってから
我が国は恐怖による支配が続いている
まるで児戯のごとく人命を奪う女王に、誰が注申できようか
今もまた、宮殿前の広場に詰め込まれた人々が
兵士に取り囲まれながら声を張り上げている
女王は讃えられていなければ気が済まないのだ
父王の才覚を受け継がなかった自身を知り
恐怖で民を締め付けている
騎士
民
民
民
騎士
騎士
民
民
あぁ、また一人処刑台へ送られる
騎士たちとて、本当はあのような事をしたくはないのだ
けれど騎士一人につき、処刑する者を一人は差し出さねばならぬ
でなければ、今度は騎士自身が処刑されるのだ
罪深い
なんと罪深いことか
見目麗しくも触れる者を傷つける女王も
我が身かわいさに他者を差し出す騎士も
そして口だけの懺悔を並べつつ、己の手を汚さずにいる私さえも
彼が訪れたのは、ブドウ畑の紅葉も美しい、晩秋の頃だった
美しいものを求めて世界を放浪しているという彼は
女王への謁見を願い出た
普通、素性もわからない男が王に謁見などできるわけもない
しかし彼は、いかに女王の美貌を切望しているかを熱く語り
ついにその希望を叶えてしまった
旅人
旅人
旅人
旅人
旅人
旅人
旅人
旅人
女王
女王
女王
旅人
旅人
旅人
旅人
旅人
女王
女王
女王
旅人
旅人
女王
旅人
旅人
旅人
旅人
旅人
女王
女王
旅人
女王
女王
旅人
旅人
旅人
女王
旅人
旅人
旅人
女王
女王
女王
女王
旅人
彼の提案に、その場にいた誰もが耳を疑った
この冷徹な女王のために、好んで破滅を選ぼうという
さらに自ら北に赴き、水晶の運搬まで買って出た
旅人の正気を疑わぬ者は、きっとその場にいなかったろう
しかし彼は真冬のある日
確かに巨大な水晶を持ち帰ったのだ
旅人
旅人
旅人
旅人
旅人
旅人
それきり、彼は作業場と称した小屋に閉じこもってしまった
小屋は宮殿前広場の中央に建てられ
そのため、女王を讃える馬鹿げた催しは取り止められ
それゆえに処刑される民もいなくなった
それでも女王が満足できたのは
毎日届けられる、素晴らしいデザイン画のおかげだったろう
やがて長く続いた雪がやむ頃
彼は胸を張って除幕式を行った
旅人
旅人
旅人
旅人
旅人
ばさりと音を立てて外された幕に
思わずどよめきが上がる
それはあまりに美しい女神像だった
女王
女王
女王
女王
民
民
女王
女王
女王
女王
旅人
旅人
旅人
女王
旅人
旅人
旅人
それきり、彼はこの国を去った
――異変が起こったのはそのあとの事だ
女王
女王
女王
騎士
騎士
騎士
そう、像は水晶などでなく
巨大な氷でできていたのだ
磨きあげて永劫の王位を示すはずが
かけられた水でみるみる溶けてしまった
女王
女王
女王
女王
声を出すこともできなくなった女王は
ただ静かに、家臣たちに消えるのを待たれた
美しくも冷酷だった女王は、その冷たさ同様
まさに氷像とともに溶けて消えたのだ
どんな気持ちだったろうか
それまで命を踏みにじる側と信じていた自分が
助けの手も差し伸べられず、崩れていくのは
結論として、国には新たに王が立った
女王の若い姪であり、聡明な女王だ
広場に集まった民は、狂喜せんばかりに歓迎した
それを見下ろし、私は静かにつけ髭をつける
騎士
騎士
連絡に来た騎士に小さく頷き、クローゼットを閉める
そこには、あの旅人の着ていた装束が隠されていた
反旗を翻す仲間と集い、呪術を学び
ようやく誰の手も汚さず倒した愚王
しかし私は思う
このような手で王を廃した我々こそ、卑怯な悪ではないかと
だからこそここに懺悔と告発を記す
我々は哀れで矮小な子悪党であり
そして影から王を刺し貫いた、反逆者であると