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家族(前編)

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家族(前編)

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2018年09月01日

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あぁ、本当になんでこんなことになってしまったんだろう。

今さら後悔しても遅い。

あのとき、もう人を傷つけたくない。

こんな辛い思いはしたくない。

そう、誓ったはずなのに。

俺が小学生の頃、父は病に侵されていた。

昔はとても元気だった父親も、病気を発症してからとても辛そうだった。

もうあまり覚えていないが、2、3年は病と戦っていたのではないだろうか。

そんな父の姿を知っていたのに俺は…。

父親

はぁ…。

父は最近よくため息をつく。

俺はこうやって辛いアピールや、しんどそうにしている人間が嫌いだ。

本当に辛いときも、どうせ心配してほしいんだろ。

そう思ってしまう。

(ほんと毎日毎日うざいな、しんどいなら黙って病院行ってこいよ)

思っても口に出すことはない。顔には出ているかもしれないが。

そんな生活が1年程続いた。

俺の今でのイライラも限界を迎えていた。

父親

あぁ…!!うぅ!!

父は部屋から出なくなり、寝ることが多くなった。

部屋から聞こえるのは、辛そうな呻き声だけ。

この時も俺は、『うざい』そう思ってしまった。

少し前までは、一緒にアニメを見ていた。

一緒にキャッチボールもしていた。

その辛そうな姿を認めたくなかった。

だから俺は、『うざい』という感情に置き換えて『心配』をしなかった。

『心配』をしたら父の病気を認め、もう長くはもたないことも認めてしまうようで怖かったからだ。

この日の晩飯は、異様だった。

元気な時から父は仕事で忙しく、晩飯を一緒に食べることは少なかった。

そして病気を発症してからは一緒に食事をすることは、もう無いと思っていた。

だが違った。

俺の目の前に父が座っている。

父が部屋から出てきて、父の席に座り一緒に食事をしているのだ。

俺はとても嬉しくなった。

あぁ、父親はもう大丈夫なんだ。

元気になったんだ。

そう思った。

心無しかいつもより、元気そうだった。

次の日

父の症状は、お世辞にも良い状態とは言えなかった。

母親も仕事で家にはいない。

今救急車を呼べるのは俺しかいない。

俺は悟ったのだ。ここで病院に連絡を入れるべきだと。

一見いつもと変わらないが、俺には分かった。

このまま放置したら大変なことになると。

だが、それはできなかった。

怖かった。

認めるのが。

嫌だった。

父が元気でないことが。

父親

ああ!!うぅう!

また呻き声だ。

『うざい』

うっせぇな!!!死にそうならさっさと死ねよ!!!

こっちの身にもなれよ!!うざいんだよ!!

俺は絶対に言ってはいけないことを、口走ってしまった。

俺はそのまま部屋に篭った。

その言葉を父が聞こえていたかは、分からない。

そしてなぜ俺が、こんなことを言ってしまったのかも分からない。

気付けばもうすぐ母の帰ってくる時間だった。

父の部屋からは呻き声は聞こえず、ただ寝息だけが聞こえていた。

俺はそれに安心したのか、寝てしまった。

母親

翔!!!

母親

ちょっと留守番してて!!!

それは怒鳴り声にも似た母の声だった。

僕は飛び起きて、リビングに向かった。

ど、どうしたの?

こんな時間から出かけるの?

母は仕事から帰ってくる時間は、早くはない。

もう外は真っ暗だ。

母親

うん

母親

もう、ちょっと様子がおかしいから病院行ってくるわ

……。

すると母のいる先には、ぼんやりと上を向く父の姿があった。

虚ろな目をしていて、生気を感じられない。

その時の目に俺はとても恐怖心を抱いた。

…わかった。大丈夫。待ってる。

それだけ言い残し、また部屋に篭った。

そして半ば無理矢理、意識を手放した。

気付けば朝になっていた。

今日は月曜日。

学校に行かなければ…。

俺は父の部屋を覗く。

そこに父の姿は無かった。

リビングだろうか。

きっとそうだ。

昨日病院に行って、注射でもなんでもして、元気になったんだ。

元気だった頃の父に戻ったんだ。

おはよー!

そこに父の姿は無く、1人母がいた。

あれ?父さんは?

母親

昨日病院行ったら、入院だって言われて

俺はその言葉が信じられなかった。

いや、信じたくなかったのだろう。

そ、そっか…!

俺は自分の気持を隠し、気丈に振舞った。

その後学校に行ったが、何も身にならなかった。

何事もなく学校を終えた。

ただ、嫌な予感だけはしていた。

学校から帰ろうと、門を出たとき

そこには母の車があった。

どうしたの?今日休みだったの?

母親

…。父さんが血吐いたって。だから、今から病院行くよ

きっと、それだけじゃない。

そう悟った。

俺には難しいと思って、簡単な説明しかしないのだろう。

だがもう小5だ。

母が思うより子供が成長するのは早いものだ。

もう色々と理解はしていた。

そこからは、無言で病院に向かった。

父は相変わらずベッドで辛そうに呻いていた。

母親

翔…。ちょっと良い?

母は俺を連れ、病室をでた。

なに?母さん

母親

あのね、父さんは、正直言ってもうあんまり長くないの。

…うん。分かってた

母親

…そっか。もってもきっと小学校の卒業式を迎えられるかどうかだと思うわ。

……うん。

そんなに早いとは思ってもなかった。

残り1年…。

その1年は、どのように過ごすのだろうか。

病院で?家で?

できれば、家で1年父と過ごしたい。

そして、謝りたい。

あの時の心無い言葉を。

数十分後

父の容態は急変した。

病院の人達が忙しなく、父の病室からでたり入ったりしている。

父はどこかに連れていかれた。

そして、また数分後。

医者らしき人と母親が話していた。

母は今まで見たことのない顔をしていた。

驚き。悲しみ。不安。

そして、覚悟。

そんな表情だった。

母がこちらに向かって歩いてくる。

いやだ、来ないでくれ。

何も言わないでくれ。

母親

…。

母親

家族だけの時間にしてくれるんだって。

母が言ったのは、その一言だけだった。

その時の母の顔は、見れなかった。

俺たち家族が呼ばれた。

この時には、父の姉の家族も来ていた。

母が連絡を入れたのだろう。

もう悟っていた。

最期に「ごめんね」って謝って、「ありがとう」って感謝して…。

それだけは、言おうと覚悟していた。

部屋に入った。

とても呼ばれるまで時間がかかっていた。

落ち着くまで、時間がかかったのだろう。

と、父さん…?

寝ているのだろうか。

よかった。寝られるぐらい安静になったのだろう。

気持ちよさそうに寝ている。

呻いてもいない。辛そうな顔もしていない。

うぅ…と、父さん…!!!

起きろよ!!!

起きろよ…!!

弱々しく叫んだ。

家族だけの時間で、残りの最期を過ごす。

そう思っていたのに、

そこにはもう、父の姿はなかった。

気付けば、母も父の姉の家族も。

みんな、泣いていた。

何もかもが崩れていったような気がした。

元気だった頃の父と過ごした期間は、10年にも満たなかった。

父と過ごせたのは、たったの11年間だった。

その11年間のうち、元気だった頃の記憶は…。

あれ…?

父さんの顔は?

父さんの声は?

生きていた頃の父の顔が思い出せない。

もう何も思い出せない。

ごめん…父さん…!!

本当にごめん!

父さん…起きてよ……

寝てるだけなんだろ!?

父さん!!!!

本当にごめんね、父さん…。

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