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『 贖 命 』

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『 贖 命 』

2 - 条 件 1

♥

373

2026年01月05日

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目が覚めた翌日。

青はまだ体が重くてふらついたが、学校に向かった。

時間がない。

神様が言った。

『1ヶ月以内』と。

青は、桃を見るなり、胃に嫌な痛みが走った。

桃は今日も人に囲まれている。

青は無表情を装いながら、内心で舌打ちする。

笑っている。

誰の話にも相槌を打って、

冗談みたいに軽く肩に触れて、

それでいて、誰か一人に深入りするわけでもない。

(信用出来ない……)

青は、そういう人間が嫌いだった。

誰にでも優しい人間は、

誰のことも本当には見ていない。

少なくとも、青はそう信じてきた。

(なんでこいつなんだよ……)

席に着くと、心臓の音がやけにうるさかった。

隣の席。

手を伸ばせば触れる距離。

「昼食をとるだけ」

そう言い聞かせる。

言葉にすれば簡単だ。

でも、その「だけ」が、

今の青には異様なほど高い壁だった。

昼休みが近くにつれて、呼吸が浅くなる。

(…断られたら?)

神の声が、頭の奥で反響する。

『達成できなければ、君は死ぬ』

青は、手を強く握りしめた。

昼休みのチャイム。

教室が一気に騒がしくなる。

桃は立ち上がり、友達に囲まれながら出口へ向かう。

ーー今だ。

青は、反射的に立ち上がった。

桃くん、!

自分の声が、思ったより小さかった。

ん?

振り返った桃の顔は、驚くほど自然だった。

どうした?

その「どうした」が、本当に心配してるみたいで、

青の神経を逆撫でした。

……昼、

言え。

生きたいんだろ。

…一緒に、食べない、?

一瞬、時間が止まった。

周囲の空気が、わずかに揺れたのがわかった。

桃は青をじっと見たあと、

少しだけ首を傾げた。

……急だな

……

悪い。今日は無理

その言葉は、驚くほどあっさりしていた。

青の胸の奥が、ぎゅっと縮む。

……そう

それだけ言って、座り直す。

分かってた。

期待なんてしていなかった。

これは想定内だ。

ーーそれでも。

昼休みが終わるまで、

青は何も食べられなかった。

次の日も、その次の日も。

青は、昼休みになるたびに桃に声をかけた。

理由を変えた。

言い方も変えた。

視線を合わせないようにした日もあった。

それでも、答えは同じだった。

「今日は無理」

「ごめん、予定ある」

「また今度な」

「また今度」は、来ない言葉だと知っている。

周囲はどよめき、噂になり、面倒な視線も増えた。

「え、青が?」

「なんで桃に?」

「そんなに仲良くないよね?」

青の精神がじりじり削られていく。

(昼飯くらい…いいだろ……なんでだよ)

神様の声が、喉に刺さる。

”条件を満たさなければ死ぬ”

それだけで足は動いていた。

そして四日目。

青は、もう開き直っていた。

(断られてもいい)

(とにかく、言う)

昼休み。

いつも通り、もの周りには人がいる。

青は、その輪の中に踏み込んだ。

青がまた「昼飯」と口を開きかけた瞬間ーー

……食うか、一緒に

……っ、!

青は一瞬だけ、息を忘れた。

そんなに俺と飯食いたいんでしょ

なら行こ

その瞬間、青の世界の音が、一気に遠のいた。

屋上。

風が吹いて、弁当の包がかさりと音を立てる。

二人きり。

青は、何を話せばいいのか分からなかった。

(条件……条件……条件……)

それしか頭にない自分が、酷く浅ましく思えた。

なあ…

……何

桃が話を始める。

お前、俺のこと嫌いだろ

心臓が跳ねた。

……は、?

……別に

顔に出てる

青は何も言えなかった。

ま、いいんだけどさ

桃は空を見上げる。

その時ーー

胸の奥で、”何かがカチリと外れるような音”がした。

『条件1クリア』

神様の声が遠くで響いた気がした。

……

青は、箸を持つ手をそっと握りしめた。

𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎…♡×300

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コメント

2

ユーザー

神様なにか絶対企んでますよね? 続きが楽しみです🎶

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