イタリアが、俺の手を引いて、ベッドの上に座らせる。
その手がやけに強くて、でも表情は驚くくらい柔らかかった。
ドイツ
改めて部屋を見てみると、本当にいい景色だった。
カーテンのひだに、絨毯の角度、タペストリーの高さ、なくす照明。
全てが計算されているかのようで、絶妙な調節だった。
ドイツ
イタリア
イタリア
へらり。
無邪気に笑うイタリア。
即席でこれは流石に整いすぎじゃないかとは思うが...
まぁ、イタリアのことだ。
絵も上手だし、きっとイタリアだから出来たのだろう。
イタリア
ドイツ
不意に、イタリアの手が、肩に触れる。
細くて綺麗な手が体に触れるとき、
心臓がドクンと大きく脈打ったかのような感覚があった。
イタリア
ドイツ
いつもより、近い。
顔が、息が、手が、指が。
いつもよりも、近い。
俺も平然を偽るのが段々と難しくなっていく。
近くなるのが、怖くて。
触るのが、怖くて。
…でも、嬉しくて。
イタリア
気がつけばイタリアは、俺の目の前に居た。
俺が顔を上げようとする前に、イタリアが俺の顔を上げさせた。
片手は俺の顎を、もう片方は俺の手首を掴んでいて、
まるで、あの夢のようで。
イタリア
イタリア
…久々に『僕』なんて一人称、聞いた気がする。
その一人称は、かつてのローマ帝国時代と変わらない一人称だった。
ドイツ
今から、何を言われるのか、検討もつかない。
ただ、部屋の不気味さと、綺麗な夜景に包まれて、
イタリアに______何故か、妖しい眼差しを向けられて。
何かがおかしいって、わかってた。
でも、高鳴る心臓が、本能が、『逃げたくない』って叫んで。
思考がだんだん塗り替えられて。
_____最終的に、逃げるなんて選択肢は、消えた。
イタリア
イタリア
イタリア
イタリア
柔らかな声。
綺麗な、繊細な声。
だけど、どこか変な声だった。
イタリア
ドイツ
急に話を振られ、ドキッとする。
少し迷ったが、本当のことを全て吐くことにした。
ドイツ
ドイツ
本音。
ぽつりと呟いた、本音。
誰かに本音をぶつけるなんていつぶりだろう。
下手したら、そんなこともなかったかもしれない。
これが、人生初だったかもしれない。
イタリア
彼は笑顔を見せた。
...だけど、目は笑っていなかった。
その時。
手首を掴む強さが、増した。
こんな華奢な腕のどこから、そんな力が湧いて出てくるのかわからないくらい、強かった。
骨がミシミシと悲鳴をあげるくらいには。
ドイツ
イタリア
彼は柔らかく、こぼした。
イタリア
イタリア
______ゆるやかに、目の前が暗くなるような錯覚。
あの日の、あの場所が見えているかのような、幻覚。
急速に、脳を駆け巡るトラウマ。
ドイツ
できることなら、手を振り払って、彼から逃げたい。逃れたい。
背中がじん、と凍る。
喉が強張って、声の出し方を忘れた。
『逃げろ』って頭が叫ぶのに、膝が硬直して動かない。
イタリア
甘い甘い、言の葉。
本能的な警鐘が鳴り響いても、それのせいで俺は、逃げられなかった。
コメント
2件
あ、これ今度はイタリアがドイツを監禁するパターンか()