黒side
辺りもすっかり暗くなって、 時々ちらほらと空の星が輝く。
街灯に照らされ、 必要なところだけ見えるようになっている道を、 俺__黒木悠佑は歩いていた。
初兎
悠佑
半額が多かったからな
悠佑
隣にいるのが俺の弟である、初兎。
俺より歳はだいぶ離れているが、 しっかり者で頼れる存在だ。
今は「一緒に行く」と言ってくれた初兎と、 夕飯の買い出しが終わった帰り道。
足りなくなっていたものも補充して、だいぶ買い込んでしまったので、 初兎が来てくれて本当に助かった。
夏の真っ只中の蒸し暑さを全面に感じながら、 結構な後悔を胸に歩き続ける。
「近場やからええやろ」と言って、 帽子も被らず出てきてしまったさっきの自分を、 責めたくなってきた。
悠佑
ハンバーグ食べような
初兎
悠佑
なんて他愛のない話をして、 家までの帰り道を歩いていると・・・・・・
悠佑
初兎が突如足を止めた。
不思議に思って俺が振り返ると、 初兎は俺の隣まで寄ってきて 「あれ、見て」 と一つの方角を指差した。
悠佑
俺は初兎の指差した方向に視線を移す
するとそこには__
悠佑
電柱の横で肩を並べて地べたに座り込んでいる・・・・・・
二人の男がいた。
初兎
初兎が耳打ちでそう言う。
その電柱の近くには街灯が無いから、 一瞬分かりにくかったが、 彼らの姿は酷くボロボロで、 見ているこちらが痛々しくなるほどのものだった。
初兎
悠佑
今こちらから見える範囲だと、 赤い髪の毛のまだ幼い感じの男の子が一人。
それから、彼の兄だろうか。
ピンク色の髪の毛を纏った、 赤髪の子より少し年上のような男の子が一人。
多分、二人とも成人はしていないだろう。
そう思ってしまうほどに、 彼らはまだ幼かった。
しかしあれだけボロボロの姿で、 こんな時間に二人道路に座り込んでいるなんて、 何をしているのだろうか。
たしかにバッグも何も持っていない姿は、 親との一時的な喧嘩により家出した子に見えなくも無いが・・・・・・。
ここまで服や体に傷が付くものだろうか。
なんだか不穏な空気感が二人の間には流れていて、 でも見つけてしまった以上見ないふりして通り過ぎるわけにもいかなくて・・・・・・。
どうしようか、 と思って彼らを見ていると、 ふとピンク髪の子と視線があった。
その瞬間、俺は身がゾワっとした。
彼の視線は酷く冷めきっていて、 光など無い。
生きることに疲れ果て、 まるで全てを悟ったような・・・・・・ そんな、瞳だった。
初兎
初兎が俺の服の袖を掴んで引っ張る。
「どうする」
彼はそう聞いたが、 きっと俺へ向けた真っ直ぐな瞳から読み取ると、 もう答えは出ていた。
悠佑
放っておくわけにはいかんやろ
悠佑
俺の言葉に、初兎はコクリと頷いた。