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教室の一番奥――窓際の席に座る琉來(るく)は、静かに文庫本を開いていた。 誰かが机を動かす音、段ボールを引きずる音、スプレーのキャップが外れる音。周囲の空気が“文化祭モード”に切り替わっていくのが、音でわかる。 でも、琉來はその波に乗らなかった。乗る気もなかった。

琉來.

(……騒がしいな。みんな、楽しそう)

そう思いながら、ページをめくる手を止めた瞬間、声がした。

凛.

「……あれ? 琉來じゃん」

不意にかけられたその声に、肩がピクリと反応する。顔を上げると、目の前にしゃがみこんでいたのは、凛(りん)だった。

凛.

「ひとり部屋、満喫中?」

琉來.

「......は?」

琉來は少しだけ眉をひそめた。

凛.

「いや、ごめんごめん。静かすぎて、空気違ったからさ」

琉來.

「……別に、ていうか、ここ俺の場所じゃない」

凛.

「でも、なんか“入っちゃダメな結界”みたいになってるよ?」

琉來.

「気のせい」

凛.

「気のせいかなー? いや、でも俺、ずっと気になってたんだよね。琉來って、いつも一人だけ空気違うよなって」

琉來.

「……悪い意味で?」

凛.

「むしろ良い意味で。俺、そういうの嫌いじゃないし」

琉來.

「……わからない」

凛.

「うん、わかんなくていい。俺は喋ってみたいと思ってただけ」

凛は机の横にぺたんと座り込んだ。教室の隅で、人気者の凛が床に座る光景に、何人かがチラッとこちらを見ていた。

琉來.

「……なんで、ここに来たの?」

琉來は本を閉じて、小さく問う。

凛.

「逃げてきた」

琉來.

「逃げた?」

凛.

「うん、ポスターのアイデア出しで揉めててさ。誰がリーダーとか、色合いがどうとか、もううるさくて」

琉來.

「……得意じゃないの? そういうの」

凛.

「得意だけど、疲れるときもある」

凛は壁にもたれて、天井を見上げた。

凛.

「だから、ちょっと静かなとこに来たくて。そしたら、琉來がいた」

琉來.

「……最悪だったね」

凛.

「むしろ当たりだった。だって、こうして喋れてるし」

琉來.

「……俺、そんなに面白いこと言わないよ」

凛.

「そういうとこがいいの。嘘がないって感じ」

琉來は言葉に詰まり、視線を外す。

琉來.

「……凛って、誰にでもそうなの?」

凛.

「どーいう意味?」

琉來.

「距離詰めてくるの。……急に」

凛は少し考える素振りを見せてから、言った。

凛.

「うーん……たしかに俺、距離感おかしいかも。でも、話したい人にしかこうしてないよ」

琉來.

「なんで、俺なの?」

凛.

「気になったから」

琉來.

「理由になってない」

凛.

「なってるって。俺の中では充分」

沈黙が落ちる。 でも、不思議と嫌な空気ではなかった。

凛.

「琉來ってさ、本読むとき、眉ちょっとだけ動くよね」

琉來.

「……見すぎ」

凛.

「観察好きなの。嫌だった?」

琉來.

「……別に」

凛.

「よかった」

凛がふっと笑ったそのとき、教室のほうから誰かが呼ぶ声がした。

凛.

「あ、やば。行かなきゃ」

凛はすっと立ち上がり、ちらっとこちらを見る。

凛.

「また来てもいい?」

琉來.

「……勝手にすれば」

その返事に、凛は嬉しそうに笑った。

凛.

「じゃ、また」

そう言って、凛は騒がしい教室へと戻っていった。 るくは再び本を開いたけれど、もう文字は頭に入ってこなかった。

琉來.

(また来てもいい?……って)

知らない感情が、胸の奥で少しだけ騒いでいた。

ここまで読んでくださり感謝です! 次回あらすじ ⬇ 『準備室の隅で、ふたりきり』 放課後、ふたりで過ごす準備室。 静かな空間に、ふと漏れる言葉が、距離を近づけていく──

次回も楽しみにお待ちください!

『一人が好きな君と、一人にさせたくない僕』

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