コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
交際を始めてから 初めての冬が巡ってきた クリスマスディナーの帰り道 僕たちは少し遠回りをして 夜景の見える公園のベンチに 座っていた
吐く息は白いが 繋いだ右手から伝わってくる唯の体温が心地よい
ポケットの中には 小さなベルベットの箱 今日、渡すと決めていた 何度も手の中でその感触を確かめるけれど、緊張で指先が震えてしまう
唯
唯は満足そうに夜空を見上げ、足をブラブラさせている この1年、僕は彼女の無邪気な笑顔を独り占めできることが、何よりの幸福になっていた
強気な彼女が 僕の前だけで見せる甘えた表情 それを一生守りたい
小松
唯
ゴソゴソと鞄を探ろうとする唯の手を、僕は慌てて掴んで止めた
小松
小松
唯
唯が不思議そうにこちらを見る その瞳に、街の灯りが反射してキラキラと輝いていた
僕は大きく深呼吸をした かっこいい言葉なんて浮かばない ただ、ありのままの気持ちを伝えるしかなかった
小松
唯
唯
小松
小松
僕の真剣なトーンに気づいたのか、唯の動きがピタリと止まった
僕はポケットから箱を取り出し 彼女の目の前でゆっくりと開いた 街灯の光を受けて シンプルな一粒ダイヤが輝く
小松
小松
静寂が降りた
風の音さえ止まったかのように、世界には僕と唯しかいない気がした
唯は目を見開いたまま 指輪と僕の顔を交互に見ている
やがて、その大きな瞳がみるみるうちに潤み始めた
唯
唯
唯
唯
小松
小松
僕は彼女の手を取り 薬指に指輪を滑らせた
サイズはピッタリだった
唯は自分の手を信じられないものを見るように見つめ それから両手で顔を覆って泣き出した
唯
唯
涙声で悪態をつく彼女がいじらしくて、僕は彼女を強く抱きしめた
コート越しに伝わる心臓の鼓動が、僕と同じリズムで刻まれている
小松
小松
唯
唯
唯は僕の背中に腕を回し、強くしがみついてきた
あの日のショッピングモールで
「…小松じゃん」と笑って 再会したあの日から
僕たちは少しずつ歩み寄り
今日
本当の意味で
家族になる約束を交わした