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「人間失格」

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「人間失格」

2 - はしがき__

♥

151

2024年06月30日

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ー はしがき ー

私は、その男の写真を三葉、見たことがある

※ 三葉 ・・ 三枚

一葉は、その男の、幼少期時代、 とでも言うべきであろうか、十歳前後かと推定される頃の写真であって、その子供が大勢の女のひとに取りかこまれ、(それは、その子供のあねたち、妹たち、それから、従兄弟たちかと想像される)

庭園の池のほとりに、荒い橋の袴をはいて立ち、首を三十度ほど左に傾け、醜く笑っている写真である。

醜く?

けれども、鈍い人たち(つまり、美醜などに関心を持たぬ人たち)は、面白くも何とも無いような顔をして、

「可愛い坊ちゃんですね。」

といい加減なお世辞を言っても、まんざら空お世辞に聞こえないくらいの、謂わば通俗の「可愛らしさ」みたいな影もその子供の笑顔に無いわけではないのだが、しかし、いささかでも、美醜に就いて訓練を経て来たひとなら、ひとめ見てすぐ、

「なんて、いやな子供だ。」

と頗る不快そうに呟き、毛虫でも払いのける時のような手つきで、その写真をほうり投げるかもしれない。

まったく、その子供の笑顔は、よく見れば見るほど、何ともしれず、イヤな薄気味悪いものが感ぜられて来る。

どだい、それは、笑顔でない。

この子は、少しも笑っていないのだ。その証拠には、この子は両方のこぶしを固く握って立っている。

人間は、こぶしを固く握りながら笑えるものでは無いのである。

猿だ。猿の笑顔だ。ただ、顔に皺を寄せているだけなのである。「皺くちゃ坊ちゃん」とでも言いたくなるくらいの、まことに奇妙な、そうして、どこかけがらわしく、変に人をムカムカさせる表情の写真であった。

私はこれまで、こんな不思議な表情の子供を見た事が、 いちども無かった。

この作品はいかがでしたか?

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コメント

16

ユーザー

待って人間失格大好きだから嬉しすぎる、

ユーザー

す、好きだぁっ!!((

ユーザー

ちょっと思い出してきたかもです...

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