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楡井
蘇枋
結局、決意が固まらず、制服のポケットに遊園地のチケットを突っ込んだまま学校へと来てしまった。 教室に入るなり、 ぴょこぴょことくせっ毛なたんぽぽ頭の少年が、元気よく挨拶をしてくれる。
蘇枋
楡井
蘇枋
気づけば彼を探してしまう自分に気づいてしまい、 思考を振り払う様、左右に頭を軽く振った。両耳に着いているタッセルピアスがゆらゆら揺れて、楡井は何か不思議なものを見る様なきょとりとした表情を見せた。 彼との関係も、前と今じゃ全然違うものとなっている。だからなのだ。
桜
楡井
噂をすれば!と桜の元へしっぽをブンブン振るう子犬の様に駆け寄っていった楡井に、桜は頬を赤く染め上げ、ちけぇ!!っと叫んでいた。
楡井
桜
バツが悪そうに目元を擦る桜に、 擦っちゃダメですよ!と楡井が心配そうな声を上げている。
桜
楡井と桜の騒ぎように、クラスメイト達がそれぞれ桜を心配し始める。 寝不足にはビタミンCだぞ!!と言いながら、桜にジュースを渡す者や、 授業が始まるまで仮眠を取るのはどうかと進める物もいた。 たくさんに人に囲まれ愛される姿を見て、なんだか微笑ましい気持ちに包まれる。
蘇枋
いつこれを渡そうかとずっとタイミングを伺っていた。 制服のポケットに入っていた小さな紙切れ2枚。 ニコニコと胡散臭い笑顔を貼り付けながら、つらつらと適当な言い訳を並べる。
蘇枋
蘇枋
蘇枋
もう少し交友関係を広めたかったが、これ以上近くにいると、きっと彼の顔色が悪くなる。そう考え、それじゃあ。と小さく挨拶して、桜の元から離れようとしたところで、制服の袖をぴっと何かが小さく引っ張った。
桜
頬を少し赤らめ蘇枋の袖を小さく引っ張る桜のことを、冷えた目でじっと見つめた。赤い隻眼がその表情は自分には見せるなと桜に訴えかける。 それでも、桜は怯まない。 彼はこれくらいじゃ引いてはくれない。それは蘇枋とてよく知っている事だった。
うるさいほどに騒がしかったクラスメイト達は、桜と蘇枋の様子に、ぐっと息を飲んだ。
桜
あぁ、初めて名前を呼ばれた。彼が俺の事を忘れてから、初めて。 この気持ちは歓喜、だろうか。 いや、今はこんなちっぽけな事で喜んでいる暇は無い。 まずは目の前の彼を何とかしないと。
蘇枋
桜
そんなことを気にしているのだろうか。 君が無理してまで、俺と一緒にいることなんて、もうないのに。
蘇枋
蘇枋
桜
蘇枋
これ以上話すことは無いと言わんばかりに、蘇枋は桜に背を向けた。そこから少しも桜の方を振り向くことなく、 教室を出ていってしまう。
桜
2人の様子を静かに見守っていたクラスメイト達か、ワラワラと桜のまわりに集まり始める。 「なんだ蘇枋の奴、どうかしたのか?」 「やっぱり喧嘩でもしてんのか?」 桜と蘇枋を心配する言葉でその場が溢れかえる。
楡井
桜
桜が小さく呟いた声は、 誰の耳にも届いていなかった。 蘇枋の顔は、桜なんかよりずっと苦しそうで、ぐっと何かを堪えているかの様だった。 何かを隠す大きな壁がある笑顔、 あの赤い隻眼の奥に、彼は何を隠しているのだろうか。
桜はじっと考える。 自分のなくした記憶の中に、 もしかしたらその答えがあるのではないかと。 それでも、いくら考えたって、桜が捜し求める答えが出てこない。
教師になどこれっぽっちも呼ばれていはいないが、先程、教室から脱出するために、1番有り得そうな言い訳がこれだった。 蘇枋はその性格からか、頻繁に教師から集めたノートを運ぶのや、部品整理などを頼まれる。蘇枋にとって1番不審がられないで教室から抜ける理由はこれだ。
蘇枋
抜け出した教室にすぐ戻る気にもなれず、このまま学校を抜け出してしまおうかと考えた。 今回担当する見回りも、きっと桜やクラスメイト達がいるから大丈夫だと。そう信頼できる。
彼ら自身の実力を信じているから。
このまま少し離れた公園へ気分転換に散歩がてら寄るのもいいかもしれないし、 近場のショッピングモールで新しい茶葉を買うのもいいだろうか。 悩みながら蘇枋は学校を出る準備をした。
このままどこへ行こうか? 「少し離れた公園」 「ショッピングモール」
アナタノキモチハ誰にもワカラナイ。
コメント
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