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12月10日。
加納悠一郎
加納悠一郎
加納悠一郎
加納悠一郎
加納悠一郎
加納悠一郎
加納は少し声を強めて言った。
相手が老人の場合、耳が聞こえていない可能性も考えられたからだ。
しかし、相変わらず奥からは沈黙が流れた。
植田光紀
先輩の警察官、植田が大声に反応して近付いてきた。
加納悠一郎
加納悠一郎
植田光紀
加納から受話器を受け取った植田が独特の低い声で呼び掛けた。
植田光紀
植田光紀
数秒待ったが、やはり何も聞こえてこない。
植田は肩をすくめ、ゆっくりと受話器を元に戻した。
植田光紀
植田光紀
植田光紀
加納悠一郎
加納悠一郎
植田光紀
植田光紀
植田光紀
翌日、12月11日。
交番に再びコール音が響いた。
加納悠一郎
加納悠一郎
加納悠一郎
加納悠一郎
少ししてから加納はもしや…と昨夜の無言電話を思い出した。
これが正真正銘のイタズラ電話なら迷惑この上ないのだが、
植田から昨日聞かされた言葉を思い出し、とりあえず相手に合わせることにした。
加納悠一郎
加納悠一郎
ただのイタズラ電話になにを聞いているのだ、と自分に苦笑いした。
?
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加納悠一郎
?
加納悠一郎
加納が言い終える前に、電話は切られてしまった。
植田光紀
加納悠一郎
植田光紀
加納悠一郎
植田光紀
加納悠一郎
加納悠一郎
植田光紀
植田光紀
加納悠一郎
植田光紀
植田光紀
植田は半信半疑ながらも、本署に連絡を入れ指示をあおった。
本署から念のため調べるよう受け、加納は自ら自転車に乗りS公園へ向かった。
街灯のみに照らされたS公園は師走の風が優しく吹き付けるだけの静寂で、
当然ながら昼間は子どもで賑わう園内も今はひっそりと佇んでいる。
加納が公衆電話のそばまで行くが、誰もいなかった。
一応、周囲に懐中電灯を照らして見回ったが、やはり誰も見当たらない。
諦めて交番に戻り、結局今夜もイタズラ電話として処理された。
その翌日、12月12日。
夜の巡回を終えて戻った加納に植田が手招きした。
植田はテレビを見ており、ニュースがとある事件を写していた。
「誘拐の罪で逮捕された荒井真介容疑者の自宅にて、
今朝、捜索願いが届けられていた小学生男児2人が発見され、救助されました。
いずれも暴行された跡もなく、2人の男児は無事、元の自宅へと戻りました」
加納悠一郎
植田光紀
植田光紀
加納悠一郎
ニュースが続きを報道する。
「しかし、同じく誘拐されたと思われる小学生、古川修くんは依然として行方が知れず、
警察は荒井容疑者の取り調べと同時に、修くんの行方を捜しています」
そこでニュースは、古川修くんが遊んでいるホームビデオの映像を映した。
加納悠一郎
加納悠一郎
植田光紀
加納悠一郎
加納悠一郎
植田光紀
植田光紀
植田光紀
加納悠一郎
加納悠一郎
そのとき、交番の電話が鳴った。
2人は顔を見合わせてから、加納が引ったくるように受話器を取った。
加納悠一郎
数秒間の沈黙。
加納悠一郎
加納悠一郎
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加納悠一郎
加納悠一郎
加納悠一郎
加納悠一郎
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加納悠一郎
加納悠一郎
加納は努めて冷静に言うと、受話器を置いて自転車にまたがった。
加納悠一郎
植田光紀
植田光紀
2人はS公園へ向けて、急いで自転車をこいだ。
公衆電話がある場所まで懐中電灯を持った2人の警官が駆け付けた。
が、そこには誰もいなかった。
植田が露骨に大きなため息を吐いた。
植田光紀
加納悠一郎
植田光紀
加納悠一郎
植田光紀
植田光紀
加納悠一郎
加納と植田は懸命に薄暗い園内を見回った。
もしかするとじっとしていられず何処かでうずくまっている可能性も有り得たからだ。
突然、植田の大声が加納の名前を呼んだ。
加納が向かうと、植田は公衆電話横の花壇に光を当てていた。
加納悠一郎
植田光紀
加納悠一郎
植田光紀
加納はすぐそばの園芸店に走り、シャベルを2つ購入した。
ひたすら土を掘り返す加納と植田。
加納悠一郎
2人の不吉な予感は的中した。
「では、次のニュースです。
誘拐の罪で逮捕された荒井真介容疑者により殺害された古川修くん(11)の遺体が、
昨夜、S公園の公衆電話横の花壇の地面から発見されました。
発見したのは管轄内の交番に勤務する加納巡査と植田巡査長で、
調べによると加納巡査が12月10日に古川修くんからと思われる通報を受けましたが、
1日目は反応がなく、2日目に『見付けて』『S公園』と聞こえ、
さらに3日目には『公衆電話の横』という修くんの声が聞こえたと言います。
しかし、捜査本部が設けられた警察署で行われた荒井容疑者の自供によると、
古川修くんは最初の通報を受ける前日には既に殺害されており、
加納巡査の証言と食い違いが発生していることに疑問を抱いています。
SNSでは早くも、通報者が『修くんの亡霊』だと反響が響いており、
警察は悪質なデマが流れないよう事件の捜査とともに収拾に徹底しています」
2019.12.15 作