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やはり伊独の絡みは最高ですね〜!はい。他の話も好きだけどやはり伊独伊に戻ってきてしまう……!! 最後の絵も美しくて、何より速筆過ぎません!?
秋の光は、赦しの色をしていた。
カップに落ちる琥珀の影の中で、誰かが小さく笑った。
あの笑顔を、僕は見ていた。
…でも、触れたら壊れそうで。
とてもじゃないけど触れたくなかった。
カランカラン。
昼下がりの喫茶店に、5名の客が入店した。
辺りは平日の昼下がり特有の静けさで広がっている。
残暑が残る中、涼しい風がひゅう、ひゅう、と不規則に吹いていた。
そんな静けさを破るかのような声が響いた。
イタリア
ドイツ
イタリア
ドイツ
イタリア
イタリアがわかりやすくシュン、と肩を落とすと、見かねたドイツが『あぁもう...わかったから落ち込むな!!』と肩を叩くとすぐ元気になった。
ロシア
ぽつり、とロシアが呟く。
それに賛同するかのように、同席していた日本やイギリスも喋り始めた。
日本
日本
イギリス
イギリス
ずっとそばに居た。
確かに、イタリアがWW1、2、をどっちも裏切ってもドイツは彼を信頼していたし、今だってこうして仲良くカフェに来ている。
ただ______日本やロシア、彼らはその奥までは知らない。
古代ヨーロッパを、彼らはよく知らないから。
ドイツ
それまでイタリアとじゃれていたドイツがイギリスに話を振った。
イギリス
イギリス
日本
日本が意外だ、というように声を上げた。
ロシアもそれに関しては少し_____
いやだいぶ引っかかったのか、水の入ったグラスを机において問い質した。
ロシア
ロシア
イタリア
あはは...と困ったように眉を下げるイタリア。
パフェを食べる手も止まったようで、食器の音もしなくなった。
…無理もないだろう。
彼も...というか、ドイツのためにも、昔のことはあまり言いたくはないだろう。
ドイツ
イタリア
ドイツ
イタリア
わざわざここで過去話をするのに躊躇いがあったのか、しばし迷っている声が聞こえる。
が、意を決したのか、イタリアが語り始めた。
イタリア
イタリア
ドイツ
______一体、彼らが今から語る過去に、なにがあったのかと息を飲む声が聞こえた。
ふと空を見上げてみると、紅葉に変色しつつある葉っぱたちが風に揺れていたのが見えた。
これは、ioたちの永い永い夢のお話。
…あれは、古代ヨーロッパ。ときは紀元前27年。
ioたちは、突如として生まれた。ローマ帝国の、擬体化として。
その時、一緒に生まれたのは、後の西ローマ、神聖ローマ...今のドイツだった。
ドイツはioの弟として、ioはローマ帝国の象徴として君臨していた。
あの時のドイツは、ioにくっついて回るような子だった。
ioも唯一、みんなの望む『ローマ帝国』じゃない一面をさらけ出せる相手だったから、嬉しかったけど。
...とは言っても、お前そこまで変わってなかっただろ。
日本とかロシアとかは想像つかないかもしれないが、一人称は私。
プライベートだろうが国民の前だろうが威厳があって、厳格で、優しい、でも敵には残虐になれる、本当に自慢の兄d______
ストップなんね!!!!!!恥ずかしいから辞めるんね!!!!!!!!!!
…こほん、それで...io…というかローマ帝国は東西に分断した...
その時にはもう正式に"兄弟"ではなくなってたかな。
それで、西はドイツ、東側はioで別れた。
それから、西ローマ崩壊までは一度も会わなかった...
...崩壊後、またドイツに会った。
会ったんだけど...ちょっと、変わっちゃってね。
ローマ帝国への強い憧憬と未練をもって、帰ってきたの。
もう過去は取り返せないって言っても聞かなくって
そんな時、神聖ローマ帝国が建国された。
...そう、『神聖でもローマでも帝国でもない』国
言わなくていいだろ...その言葉結構俺に刺さったんだからな...
ごめんごめん...でも、その国もフランス...
…というかそのお兄さんのお陰で解体。
後にプロイセン、ドイツ帝国、ワイマール...が建国されたんだけど...
その頃のドイツ、っていうか特にWW1のioの裏切り直後、精神が結構不安定で。
...あの時どうしてたの?
あの時、か...そうだな。
まぁ自殺も考えたが、それはローマ帝国の再構築ができなくなるから...
9割くらいは気合と根性だったな
...ごめんね
いや、いい。終わったことだ。
それに、俺達は政治には介入できない
...まぁ、それもそうだけどさ。
あ、話を戻すね。
で、そんなドイツを本当の本当に自殺に追い込んだことがあって。
...それが、WW2。
ioとドイツは枢軸側として参戦したんだけど...
あ、日本は知ってるかな?その頃のドイツ。
なんていうか...すごく、ioが大好きでね。
当時のドイツは敬語なんて使わなかったのに、ioにだけは使ったの。
なんというか...すごく、ioに心酔してた。
その頃のio、国旗にも性格にもローマの面影なんて無かったし、WW1で裏切ったのに
で...io、また裏切ったの。連合軍に降伏する形で。
イそしたらね、ドイツに捕まって...監禁、されちゃったの。
どんなに謝っても、また裏切るかもしれない、って聞いてくれなくて...
まぁ、当然かな。
ioはずーっと枢軸側だった。
...それで、ドイツが降伏した日。
覚えてる?...その時に、拳銃を頭に突きつけて、バンッ!!!...って。
ioの前で、何も言わずに
...まぁ、死ねなかったけどな。国だし。
それでも、他界した国はいたけどな。
______2人くらい。
ioは生きててくれてよかったって思ってるけどね。
…あぁそれで、io、思わず叫んじゃって。
防音の部屋だったのに、泣いて叫んでたら、声が届いたのか救援隊が来てくれて。
ioもドイツも病院送り...
それが遅れてたら、今頃、ドイツも亡くなってたかも
でね、数年後、再開したんだ...
相変わらずドイツの精神状態は酷かったけど。
それでもioたち、ちゃんと話し合えてさ。
その時、ようやくioもドイツも...また、立ち上がれた。
イタリア
イタリア
ドイツ
イタリア
照れくさいのか、ぽこぽことドイツを叩く。
話の途中、日本やロシアは若干...
というかかなり昔の彼らの性格に驚いていたみたいだったけど、今では微笑ましいですね、と話していた。
イタリア
ドイツ
イギリス
それについてはイギリスも知らなかったのか、二人に聞いていた。
イタリアが『秘密なんね!!!』と言おうとしたが...
それはドイツによって暴かれてしまった。
ドイツ
ドイツ
その瞬間、イタリアが『恥ずかしいからやめてほしかったんね〜〜!!!』といいながら再びぽかぽかと叩き始めた。
時刻はそろそろ三時。
かなりの時間、彼らは話し込んでいたようだ。
ロシア
イタリア
ドイツ
日本
日本が『いつか、私もちゃんと謝れればいいなぁ』、とぼそっと言ったのを、僕は聞き逃さなかった。
…そして、僕は席を立って、彼らの方に向かった。
フランス
その瞬間、全員がこちらを向いた。
変にシンクロしてたから、思わず吹き出しそうになちゃったけどね。
吹き出すのを抑えるために、座っていたロシアに軽く寄りかかった。
ロシア
フランス
イタリア
いきなりの僕の登場に皆驚いたのか、日本なんてびっくりしすぎて少しの間フリーズしてた。
イギリスは、『...どこにでも居ますね、貴方』と若干呆れていた。
フランス
そう言って、僕は静かに店を後にした。
もうそろそろ秋だ。
店を出ると、少し早く紅葉となった葉っぱが、僕の足元に落ちてきた。
フランス
足元に落ちてきた紅葉を拾う。
いつか、すれ違った全ての兄弟が、彼らのように分かり合えるその日を信じて。
ドイツ
イタリア
なにも、連絡していない。集まる予定もない。
イタリアはただ、ふらふら、ふらふらと、歩いているだけであった。
今はWW2後。
イタリア、ドイツそして、日帝が降伏し、数カ月後の、11月27日。
なんの記念日でもないそんな日に、ドイツと再開した。
...といっても国旗も姿も変わっていたから、一瞬わからなかったが。
ドイツ
かつての自身の名で、彼にそう呼ばれる。
次の瞬間、彼は駆け寄り、押し倒し、自分の胸ぐらを掴み、
かつて自身の頭を撃ったその拳銃を、今度はイタリアに向けた。
イタリア
ドイツ
ドイツ
辺り一帯に響く、弟の怒号。
彼は今、怒り狂っている。
その拳銃を、自分に突きつけて_____そして、泣いていた。
ドイツ
イタリア
ドイツ
イタリア
ドイツ
イタリア
彼の言葉を、遮る。
今の"イタリア"ではきっと彼は止まることを知らなかっただろう。
...下手したら、その拳銃を発砲していたかもしれない。
__________だが、かつての"ローマ"なら?
まだ彼を裏切っていない、綺麗なままのローマなら...
綺麗なままの、かつての自分ならば。
現に、彼の恐ろしい怒号は...止まっていた。
イタリア
イタリア
久しく思う。こんな口調でドイツに語りかけたのは...
いいや、ドイツ関係なく、誰かの前でこんな口調で話すのは本当に久々だった。
多分、西ローマ崩壊以来じゃないかとすら思う。
だから内心、全然慣れていなくて結構緊張していた...が、そんな弱音を今は言ってられない。
ドイツ
イタリア
イタリア
押し倒された状態で、彼の頬に手を添える。
彼は驚くくらい冷たかった。
イタリア
イタリア
イタリア
イタリア
ドイツ
イタリア
イタリア
ドイツ
彼は目を伏せた。
きっと今、元兄であるイタリアが悪い、だなんて認めたくない気持ちがあるのに、
イタリアによってつけられた自身の癒えぬ傷を見返して...
相当、苦しんでいるのだろう。
無論、その苦しみはイタリアにはわからないことだった。
ショックな出来事があったとしても今まで彼はケロッと立ち上がり、
憧れた相手もかつての自分以外存在しなかった、イタリアにとっては。
__________ただ、イタリアだって、傷はある。
それは、ドイツに監禁されたこと。
どんなにドイツの精神を壊したとしても、イタリアは最後まで彼を肉体的に傷つけることはなかった。
逆に、ドイツはイタリアの精神を壊したことはないが、彼はイタリアに肉体的な傷を与えた。
つまり______原因はイタリアにあった、が。
だとしても、彼もまた被害者なのだ。
それでも、イタリアは自分が始めた物語であると考えていた。
イタリア
ドイツ
イタリア
ドイツは目を見開いた。
余裕ができたのか、イタリアは内心で、表情をコロコロと変えて、可愛い弟だ、と思っていた。
...いや、もしかしたら彼はドイツに押し倒されたときも冷静だったのかもしれない。
ドイツ
ドイツ
先程も涙を流してはいたが、今度は大粒の涙をポロポロとこぼす。
やがてドイツはイタリアから離れ、跪き、その場でイタリアに泣きついていた。
イタリアもそんな彼を抱き寄せ、優しく言った。
イタリア
イタリア
______暫くの間、二人は抱きしめ合っていた。