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小綺麗なリビングが紅く染まる

そこに立つのは一人の男

そして彼の足元には2人の屍が転がる

絶望の空間に1人立ちつくす男はこの状況で自分の今までの行いを思い起こす

人を殺すことでしか自分が生きてるという実感が出来なかった

ナイフで刺すたびに自分にかかる深紅の血しぶき

体にその血の温かさが伝わり刺された人間の悲鳴で快楽を得ていた

自分でもわかっている

俺はこの世に存在しては行けない存在なのだということ

人を殺すなんて倫理観に欠ける行為を平然と行う俺に人としての尊厳はない

そもそも人の作りだした倫理観に欠けるというものもそれ自体人のエゴだ

でもそんなことを言ったところで多数派が正義になり少数派は悪となる

これを肯定すれば殺人を肯定するのと同じことになるから否定されて当たり前

やはり自分は人の形をした人ならざる者

今更自分の行いに罪の意識が芽生えようが否が行った事実は消えない

そう考えながら男はある一点を見る

キッチンには一見誰もいないように見えるがそこまで行くとわかる

小さく蹲ってる一人の少女がそこにいる

彼女の存在を知っているにも関わらず男はその少女を殺そうとはしなかった

それが彼なりの贖罪なのかそれとも別の意図があってなのか

殺人鬼

………

殺人鬼

俺は…

殺人鬼

俺はこれからどうやって生きていこう

今の生き方に疑問を持っている時キッチンの方から物音がした

それとなく視線をそっちに動かすとぬいぐるみを抱えた少女がこちらに寄ってきていた

殺人鬼

なんだ…

殺人鬼

俺になにか言いたいことでもあるのか?

少女

………

少女

ありがとう

少女から予想のできない言葉が飛び出た

【ありがとう】

人を殺した自分に対して放たれる言葉では無いのは確かな事だ

しかし少女はちゃんと自分を見て誰が聞いてもそう聞こえる声でありがとうと言った

殺人鬼

なぜ俺は感謝された?

殺人鬼

なぜ君は俺にありがとうを言った?

少女

パパもママも嫌いだったから

少女

2人とも仲は悪いしケンカしたあとママは私をいっつも殴る

少女

全部私のせいだって…

その話を聞いたあと少女の体をよく見ると確かに殴られた痕がいくつも見える

少女

みんなみたいに普通の家庭ではなかった

少女

そんなの私でもわかった

少女

いつしか私は死にたいと願う

少女

しかし自分が死ぬ前にパパもママも殺してから死にたかった

殺人鬼

………

殺人鬼

それでたまたま俺がここに来て2人を殺した

殺人鬼

君の願いが叶ったってことか

少女

うん

殺人鬼

そうか……

男はその少女の境遇に自分に近しい何かを感じていた

こうなる経緯に男も少女と同じく虐待を受けていた

幼少期から愛情も何も注がれないで育ってきていたのだ

その影響で男は考え全てが変わっていった

初めて人を殺したのは自分の両親

優しさをくれなかった両親を殺し自分の境遇を知っていたのに助けてくれなかった

人たちも殺していった

そこから自分が生きてるという証明をするには人を殺すしかない

そんな考えが生まれていたのだ

殺人鬼

なぁ

少女

殺人鬼

君はほんとに今ここで死にたいか?

少女

殺人鬼

君を縛る鎖は俺が断ち切った

殺人鬼

君はもう自由なんだ

殺人鬼

暴言を吐かれたり暴力を振るわれたり

殺人鬼

そんな恐怖からは開放されたんだ

殺人鬼

それでもなお君は死にたいと願うか?

少女

………

殺人鬼

正直に答えて欲しい

少女

わたしは…

少女

わたしは………

少女

まだ生きていたい

少女

ようやく自由が手に入ったんだ

少女

だからまだ生きてたい…

少女

死にたくない!

殺人鬼

そうだよな……

殺人鬼

1つ提案があるんだ

少女

殺人鬼

君の両親を殺した俺だが

殺人鬼

共に暮らしてみないか?

少女

……

殺人鬼

俺は君と同じ人間だ

殺人鬼

人の優しさ愛情 温もり これらを受け取らないで今を生きてきた

殺人鬼

だから君の心情は分かってるつもりではいる

殺人鬼

気づいてないかもしれないけど

殺人鬼

君は優しさや温もりを求めてるはずだ

少女

…………

殺人鬼

その心の隙間を俺が埋めよう

少女

……

少女

うん…

少女

お兄さんになら私の心を埋められるかもしれない

殺人鬼

それじゃあこれからよろしくな

少女との生活が始まった

自分が与えられなかった優しさや温もりを彼女に沢山与えていった

日が経つにつれて彼女は出会った頃とは比べられないほど笑うようになった

それと同じように自分にも優しさや温もりを与えることの大切さが分かってきた

自分の行いがこの行為で許される訳では無いそれは確かな事だ

でも、それでもこの時は贖罪をしてる気持ちになれた

そんな幸せはいつしか終わりを告げる

当然の報いだとしか言えなかった

ある日突然玄関が強く叩かれその勢いに耐えきれずドアが蹴破られた

そこからぞろぞろと人が入ってくる

武装をした人が前に出てあるひとりの人物を守るような形をとっている

殺人鬼

……

殺人鬼

俺を捕まえに来たのか?

警察

残念ながら違う

殺人鬼

まぁそうだよな

殺人鬼

こんだけ武装してるヤツらがいたらな

警察

察しが良くて助かる

警察

お前は数多の殺人に少女の誘拐

警察

他にもいろいろな罪が課せられている

殺人鬼

ようやくツケが回ってきたようだな

警察

最期に言い残すことはあるか?

殺人鬼

後ろにいるこの子を…

殺人鬼

どうか幸せにしてやってください

殺人鬼

この子は優しさも温もりも与えられないで生きてたんです

殺人鬼

俺のやった事は許されることではない

殺人鬼

それは準々承知してます

殺人鬼

ですが俺のような大々的なものよりも

殺人鬼

子供に愛情を注がれない子供達を

殺人鬼

救ってやってください

殺人鬼

虐待をする奴らを許さないでください

殺人鬼

子供に罪は無いんです

殺人鬼

だから……

殺人鬼

俺が死んだあとその子と

殺人鬼

その子のような同じ境遇の子供を救ってください

警察

………

警察

最期に君のことを知れて私は満足だ

殺人鬼

それじゃあこの子を外に連れ出してください

殺人鬼

人の死ぬところなんてもう見せられないですから

警察

あぁそうさてもらう

少女

嫌だ!

少女

お兄ちゃん死ぬなんてヤダ!

少女

私お兄ちゃんとずっと一緒に暮らすの!

少女

だから死ぬなんて嫌だ!

殺人鬼

これはそういう運命なんだよ

殺人鬼

俺のことは忘れて幸せにな

少女

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!

警察

その子を早く外に連れ出しなさい

大の大人に子供が勝てる訳もなく

少女は抱えられて外にと連れ出される

殺人鬼

それじゃああの子を頼みましたよ

警察

責任もって大切に育てよう

殺人鬼

それを聞けたら俺は満足です

武装した数名が男に向かい銃を乱射する

彼は最期の最期に涙を流しそして笑っていた

温もりと優しさを少女に与えたこと

また自分でも与えられるということに満足したような顔で息を引き取った

警察

………

警察

君のことはこちらでよく調べさせてもらっていた

警察

君もあの少女と同じ境遇の1人だったのだな

警察

確かに君の行ってきた行為はゆるされらことではない

警察

だが、最期に人の心を持ってることが知れて

警察

私としては満足だ

警察

そして君達のような悲劇の子供を生まないように

警察

私達が必ず今の社会を変えていこう

男の遺体を武装した数名に担がせその人は直ぐにと退出していく

その時彼が一滴の涙を流したのは本人以外誰も知らない

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コメント

1

ユーザー

息抜きのつもりだったのに悲しすぎる話を書いてしまった

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