六月が終わり、夏が始まろうとしていた。 璃子と美咲は、毎日のように一緒に過ごすようになっていた。
放課後のカフェで宿題を広げたり、音楽の話をしたり。
美咲
璃子って、意外と真面目だよね
璃子
意外と、は余計
美咲
だって、いつもノートきれいに書いてるし。私なんかぐちゃぐちゃだもん
美咲が笑うと、璃子は少し恥ずかしくなって視線を逸らす。
最近はそんなやり取りが心地よくて仕方がなかった。
――でも。
美咲には、よく学校を休む日があった。 体調不良だと聞いていたけれど、理由を深く尋ねたことはなかった。
ただ、彼女がいない教室は不思議なほど静かで、璃子の心にぽっかりと穴が開いたように感じられた。