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rara🎼
nmmn注意⚠️ キャラ崩壊注意⚠️ 誤字脱字注意⚠️ 翠×桃(桃様は喋りません) 二次創作
rara🎼
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第5話『あたためて待ってる』
午前11時。
春の陽がやわらかく差し込む病室に、ふわりと出汁の香りが広がった。
すち
すち
静かにそう呟いて、すちは魔法瓶の蓋を開ける。
途端に、ふわりと立ちのぼる湯気。
やさしい香りが、静寂に包まれた病室にそっと溶けていった。
中には、白米と野菜と鶏肉で丁寧に煮込まれた、やさしい色合いのおじや。
ほんのり生姜の風味も効かせて、冷めにくいように工夫してある。
すち
すち
そう話しかけながら、ベッドに目をやる。
けれど、そこに横たわるらんは、今日も微動だにしなかった。
目を閉じ、白いシーツに包まれて眠る姿は、いつもの明るくて、元気で、ちょっとおちゃらけたらんとはあまりにも違っていた。
その手は細くて、少し冷たくて。
何度もマイクを握ってきた指が、今はただ、静かに重なっていた。
すちは、おじやを一口、スプーンですくって――すぐに、それをそっと元の容器へ戻す。
すち
すち
微笑みながら肩をすくめるその表情には、いつもの落ち着いた雰囲気の奥に、どこか切なさが滲んでいた。
すち
言葉を紡ぐすちの声は、やさしく、静かだった。
けれど、その裏側にある“想い”は、確かに深く熱かった。
すち
すち
ベッドの脇に椅子を引き寄せ、すちはそこに座る。
そして、そっと微笑んだ。
すち
すち
すち
すち
すち
すち
魔法瓶をやさしく閉じ、布でくるんでトートバッグに戻す。
すち
すち
そっと、らんの枕元に視線を向けながら、すちは続ける。
すち
すち
窓の外では、春風が新芽の葉を揺らしていた。
木々がざわめくその音は、静かな病室に寄り添うように響いていた。
すち
すち
すち
すち
そう言って、小さく笑った。
すち
すち
懐かしそうに、そして、少し切なそうに目を細める。
すち
視線を落とし、そっと目を閉じた。
その声が、ほんの少しだけ震えた。
すち
すち
すち
すち
震える声でそう言うと、すちは、らんの手に自分の手を重ねた。
そっと包み込むように、確かめるように。
すち
すち
すち
すち
……だけど、らんの瞼は動かない。
今日もその目は閉じたまま。
あの優しいツッコミも、甘えた声も、返ってこない。
静かに、時間だけが流れていく。
すちは、ほんの少しだけ長く、その手を握りしめて――
そして、静かに立ち上がった。
すち
すち
すち
すち
すち
すち
笑って言いながら、病室の扉へと歩いていく。
その背中はまっすぐだったけど、 どこか……ぽつりと、寂しさが滲んでいた。
そして、扉を開ける直前――
ふと立ち止まり、振り返って。
すち
優しいその声が、病室に残った。
香りはまだ、ほんのりと出汁の匂いを残していた。
それは、どこか「帰る場所」の気配に似ていた。
あたたかくて、懐かしくて。
まるで「また会える」って信じているような、そんな匂いだった。
第5話・了
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𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝♡60
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コメント
4件
めちゃ涙溢れてくる
やばい泣き止めない。