月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
注意!! ・地雷さんはUターン! ・🎲様能力者パロです ・白水 ・水くんの体調不良ネタ ・nmmn
月見。
赤くん→火を操る能力 水くん→植物を操る能力 白くん→毒を操る能力 桃さん→重力を操る能力 青さん→一度見たものを完全に覚えられる能力、水を操る能力(温度変化により氷の操作も可能) 黒さん→言霊(言葉で人を操ったり言ったことが現実になったりする)
月見。
いむくんが風邪を引いた。
朝から何だか様子が変だと思ってはいたが、やっぱり思った通りで、お昼前にはバタンキュー。彼の他に僕と悠くんが家にいたのが不幸中の幸いだった。
何か風邪を引くようなことしただろうか。と考えてみるが特に心当たりは無かった。
まぁ絶対風邪を引かないようなタイプでも無いし、色々疲れが溜まっていたのかもしれない。最近風邪引いたりしてなかったもんな。
まろちゃんがここにいたら、馬鹿は風邪引かないって言うのにな、と笑ってまた喧嘩が始まっていた気がする。いなくて良かったもしれん。
白
いむくんをベッドに寝かせている悠くんの元へ駆け寄る。
黒
白
黒
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早速部屋を出て行こうとする悠くんを止める。
黒
白
黒
悠くんを一人で外に行かせたとまろちゃんが知ったら僕がなんて言われるか。想像したくもない。
能力者狩りの動きが広がっている最近では、外に出る時はなるべく二人以上で出かけるようにしようとないちゃんがこの間言っていた。
しかも悠くんの能力は強いが代償がある。体に負荷がかかることはあまりさせたくない。僕自身が心配だし、まろちゃんに怒られるのも嫌だ。
黒
白
黒
ひらりと手を振る悠くんに手を振り返し、僕は部屋を出た。
幸い近くのスーパーに行くまでに能力者狩りや変な能力者にも会わず、僕はほっと息を吐いてカゴを手に取った。
冷えピタや風邪薬なんかをカゴに入れていき、ゼリーなどが置かれているコーナーへ。
白
ぽつり、声を漏らす。
目の前に並ぶプリンの列から、一つを取り出した。
いつもいむくんが買っているやつだ。プリンを買うときはいつもこれ。お気に入りらしい。
これ大好きなの!初兎ちゃん一口食べる!?
しょおちゃぁ〜ん、いふくんに僕のプリン食べられたぁ〜〜
んふふ、美味しい〜
白
気付けば、二つもカゴに入れてしまっていた。
自分も大概甘いなぁなんて思いながら、彼の笑顔が見れるならそれも良いか、と思ってしまった。
黒
苦しそうに顔を歪め眠るほとけに、こちらまで表情が歪んでしまう。
体温計に示された数字はさっき測った時よりも大きくなっている。
黒
あいつのことだし、ほとけが好きな物をそんなに食えんやろってくらい買ってくるんだろう。甘いからなぁ。
他の3人は仕事やら学校やらでいないし、今日は俺と初兎がしっかりほとけの面倒見てやんなきゃな。
黒
朝から具合が悪そうだったから仕方ないが。出来れば少しでもちゃんと食べて欲しい。
お粥とか、食べれるだろうか。
まぁ食べれなかった時はその時だ。と俺は立ち上がる。
黒
その綺麗な水色の髪を撫で、俺はキッチンへと向かった。
その頃、僕はまだ“普通”だった。
優しくて気さくな友人達に囲まれて、特別じゃないけど楽しい毎日を過ごしていた。
───そんな当たり前が崩れたのは、確かにあの日だった。
水
水
笑いながら差し出された手に、顔を上げて笑った。
水
伸ばした手も、お礼の言葉も、全て中途半端な形で終わってしまった。
水
突如として湧き出したツルが、差し出されたその手に絡み付いていたから。
目の前の友人が、信じられないと言うように目を見張った。
恐らくその瞬間、僕が彼らと築き上げて来たものはあっという間に崩れ去った。
水
どん、と力強く体を押され、床に倒れ込む。打ち付けられた体の痛みに顔を歪めた。
水
明らかに好意なんて含まれていない声に、ビクッと肩を揺らした。
水
何も分からなかった。能力者の存在なんて噂に聞いた程度。周りにそんな人はいなくて、大学でも聞いたことが無かった。
キィ、と音を立てて、部屋の扉が閉まって行く。
水
必死の懇願も、彼らには響いてくれなかった。
忌々しいものを見るかのような目が、最後まで僕に向けられていた。
完全に閉まった扉。その後に聞こえて来たのは鍵を閉める音か。
水
好きで能力を使った訳じゃない。使うタイミングも出す植物も何もかも、僕には操れない。何も分からない。
能力者は基本生まれ付きその能力を持っているが、一般人でもある日突然能力を手に入れる例外もあるらしい。
自分がその例外であることくらい、嫌でも分かってしまった。
こんな場所にひとり、閉じ込められるくらいなら。友達だった筈のみんなからあんな目を向けられるなら。こんな思いをするくらいなら。
水
息苦しい。この箱の様な空間が。
なんで、僕がこんな目に。僕、何かした?知らない間に誰かを傷付けたの?なんで、なんで、
閉じ込めないで。置いていかないで。嫌だよ、僕、僕は。
水
そう叫んだ瞬間、僕の耳に激しい音が届いた。
ギュッと強く瞑っていた目を開くと、目の前には。
広がった緑と、壊された扉。
水
長く伸びた木が、その扉を壊し外まで広がっていた。
凄い音がしたぞ!なんだ!?
あっちの方からだ!!
水
大きな音に気付いた人達の声や足音が、遠くから近付いてくる。
逃げなきゃ。
咄嗟にそう思った。ここにいたら、また捕まるだけだ。もしかしたら、今よりも酷い扱いを受けるかもしれない。
その恐怖心だけが、僕の体を動かしていた。僕は立ち上がり、全力でその場から逃げ出した。
後ろを確認する余裕すらなく、我武者羅に走った。ただ抱いていたのは、あの息苦しい部屋にもう二度と戻りたくないと言う強い気持ちだった。
水
乱れた荒い呼吸。バクバクと速いスピードで動く心臓。
背中は汗でびっしょりで気持ち悪い。手が小刻みに震えていた。
体が熱い。怠い。そう言えば僕、朝からなんだか気持ち悪くて、それで・・・。
気持ち悪いんだよお前・・・!
水
突然フラッシュバックして来たその声に、ひゅ、と息が詰まる。
違う、あれは昔の話だ。今はもう、彼らはいないし、みんなは僕を理解してくれる。
なんとか自分に言い聞かせて落ち着こうとしながら顔を上げた僕の目に映った、閉められた部屋の扉。
ずっとそこにいろよ
水
嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
一人は、嫌だ。助けて、ここから、ここから。
水
溢れ出す緑を、僕はもう抑えることが出来なかった。
黒
無事お粥が完成して、ほっと息を吐いた。味見もしたし大丈夫だろう。そろそろほとけが起きる頃だろうか。
それにしても初兎遅いな。寄り道でもしとんのか?美味そうなスイーツ見つけてほとけ用に買ってるとか?あいつなら充分有り得る。とりあえず早く風邪薬持って来いよ。
一旦ほとけの様子を見に行くか、とお粥を一旦置いておき、キッチンを出ようとした時。
黒
ふと足を止めて、耳を澄ませた。
なんだか一瞬、声が聞こえた気がしたのだ。それも只事じゃない、何かに懇願するような、泣いているような。そんな声が。
・・・気のせいだろうか。
とりあえずほとけの部屋に行こう。そう思って、俺は今度こそキッチンを出た。
また熱上がってないかな、なんて心配に思いながら、ほとけの部屋の近くまで来た時だった。
バァン!!!
目の前で、ほとけの部屋の扉がぶっ壊れた。
黒
唖然とする俺の前で、無数の植物が部屋から溢れ出し、蠢いていた。
黒
白
スーパーでもそこそこに買ったのに、帰り道にあるケーキ屋さんで新作が出ていて、思わず買ってしまったのだ。
いやだって、いむくんが好きそうやったから。偶にはええやろ?
スマホを見れば、家を出てからもうすぐ1時間が経とうとしていた。やばい、時間かかり過ぎだ。早く風邪薬寄越せって怒られる。
白
悠くんは優しいから結構心配性で、あまり行動には出さないが誰かの帰りが遅いとその表情が不安に曇り出す。
今から帰るということだけでも連絡を入れた方がいいだろう。そう思って、悠くんに電話をかけた。
しかしいつまで経っても、スマホからはプルルルル、という無機質な音しか聞こえて来なかった。
白
おかしいな、と思いながら電話を切った。お粥でも作ってる最中だったのだろうか。それでいむくんの部屋にスマホ置きっぱとか?まぁ有り得る。
なんにせよ早く帰らねば。両手に持った袋を改めてしっかりと持ち直し、歩を進める。
走ろうにもケーキが心配で上手く走ることが出来ず、僕は出来る限りの精一杯の早歩きで家を目指した。
白
玄関の扉を開け、ほっと一息ついた僕は、目の前に広がる廊下の様子に言葉を止めた。
・・・いむくんの部屋の前に落ちている扉は、なんだ?
いむくんの部屋の方を見る。扉は付いていなかった。
目の前に広がる状況に混乱する。壁から外れてしまっているその扉は、何か強い衝撃を受けたように中心部が凹んでいた。
どういう、ことだ?
一向に状況を理解できないまま、僕は手に持っていた荷物を投げ出すようにして、靴を脱ぎ捨てて走った。
2人に、何かあったのなら。
白
部屋に飛び込んだ僕が、目の前にしたのは。
白
無数に生える、蠢く緑。
その中心には、ベッドの上に座り込む愛しい彼。
広がる植物の中のとあるツルが、“誰か”に絡み付き悠々とその体を持ち上げている。
白
その体がぐったりと力無く垂れているのは、間違い無く悠くんだ。
白
水
顔を上げてこちらを見たいむくんの目の冷たさに、思わず息を呑んだ。今の彼は、いつものいむくんじゃない。
・・・能力が暴走してる。
それ以外考えられなかった。じゃないと彼が悠くんに手を出すなんて考えられないし、そんな顔をする筈がなかった。
黒
白
掠れた声と共に、ぴくりと動いた体。悠くんは顔を歪めながらなんとか顔を上げた。
黒
白
はは、と乾いた笑いを溢す彼。自分の不甲斐無さに呆れてるんだろう。
でも、僕は分かる。言霊の力を有する彼が、なんでこんな目に遭っているのかを。
悠くんは優しいから。それが仮に僕達の為になることだとしても、僕らに対して能力を使うことを躊躇する。
おまけに、相手は自我を失っているいむくんだ。躊躇っている悠くんを、あっという間に植物で囲ってしまったんだろう。
白
水
久しぶりに聞いた彼の、その声の冷たさ。
水
いむくんが叫ぶと同時に、植物の勢力が増した。感情によって動かされてしまう程に力が抑えられなくなっている。
白
水
聞き慣れない大声に、ぐっと口をつぐんだ。
水
白
その声の奥底にある深い悲しみに、僕は確かに気が付いた。
目の前の初兎ちゃんが何かを訴えるが、僕には響かない。彼の言葉が信じられない。
だって、あの頃だってそうだった。ずっと友達だって言って、毎日笑い合ってたのに。
関係を、絆を作り上げて来た時間よりも遥かに短いほんの一瞬で、それは崩れてしまった。
この能力があるから?
この植物達が、気持ち悪いの?
・・・これを操る、僕が?
みんな、みんなそうなんだ。
そうやって、みんな僕のこと。
水
友達だって、仲間だって言ってたくせに。この植物を見て、みんなみんな、僕を変な目で見るんだ。
ああ、僕は怖かった。ひとりで過ごす箱の様な空間が。
今なら、前までないちゃんを困らせていた、毎朝暴走した自分の能力の原因がよく分かる。
ただ能力が扱えなかっただけじゃなくて、僕自身も気付かないうちに、この部屋と言う閉ざされた空間が怖かったから、朝起きるといつも能力が発動していたんだ。この孤独の箱から、自分を守る為に。
最近はそんなことなくなったのに、あの夢を見て、今こうやって思い出してしまった。
あの冷たい床の感覚を、今も簡単に思い出せる。
水
その人を大切だと思っていればいるほど、傷みは増す。
傷付くくらいなら、いっそ最初から無かったことにして。
白
思わず溢れた暗い溜息。眉を顰めた。
さっきから、黙って聞いていれば。
白
今胸で渦巻いている感情は、なんだろうか。
なぁ、気付いてる?
悠くんに絡み付くツルの力が、そこまで強くないこと。
さっきから蠢いている植物が、目の前にいる僕にいっさい襲い掛かろうとしてこないこと。
今君が、泣きそうな顔をしてること。
本当は傷付けたくなんかないくせに。離れて欲しくなんかないくせに。
“近付かないで”?
ふざけんな。あの日、シェアハウスを始めた5人にすら、自分から近付こうとはしなかった僕にぐいぐい距離を縮めてきておいて。
過去の記憶と自分の能力に蝕まれていた僕を、意図せず救っておいて。
自分だけ恐怖に支配されたまま離れようだなんて、絶対に許してやらない。
だから僕は、一歩を踏み出す。
戸惑いに揺れるその瞳を逃さないように真っ直ぐ見据えて、近付く。離れてなんかやるものか。
白
黒
黒
水
いむくんと植物がその動きを止める。その一瞬で僕は彼との距離を一気に詰め、その手首を掴んだ。
白
水
ほら、今だって泣きそうな顔をしてる。
白
思ってもないこと言うな。君らしくもない。
白
水
白
黒
近くにあったツルを引っ張り、自分の首の前へと持って来た。
白
とっくの昔に覚悟は決めている。僕の運命なんていむくんにくれてやる。
・・・でも君は、そんなことしないんだよな。
その顔がくしゃりと歪み、目が潤む。するすると植物達が勢いを無くし、その姿を消していく。
水
白
水
白
水
その手を引っ張り、ぽすんと腕の中にいむくんを閉じ込めた。
白
お互いが大事だからこそ、距離を置こうとする人達もおるけどな。
白
辛い時でも、僕が笑顔にして見せるから。
“普通”に成りきれない僕達だけど、支え合って生きて行こう。
君がいればなんでも出来るなんて、くさいこと思っちゃうくらいには、僕は君が好きだから。
・・・ほら、耳に届く嗚咽すら愛おしい。
水
白
水
一瞬強くなった彼の力がふっと緩んで、僕にかかる重みが増した。
白
聞こえてくる規則正しい寝息。おでこに手を当ててみればまだ熱い。家を出る前より熱い気がする。熱あるのに無理するから。
白
また、君の笑顔が見たい。
ふっと口元を緩めて、その頭を撫でる。柔らかな水色の髪が、とても心地良かった。
もう、怖い夢なんて見せないから。
数時間後
桃
水
白黒