母親
ユタカ。あなたはね
母親
子どもだけがかかる、流行り病に感染したの…
母親
もう、一緒には暮らせない
ユタカ
…わかってるよ
ビョーキになって
ぼくは、町外れで リョーヨーする事になった
ユタカ
(知ってる)
ユタカ
(ほんとは、捨てられるってこと…)
ユタカ
(ここが、リョーヨーする所?)
あなたも、流行り病に?
ユタカ
うん
ユタカ
お母さんが、ここに居なさいって
…そうだったの
わたしは、ここの施設長よ
今日からあなたも、ここの住人よ。よろしくね?
こんにちはー
なかよくしてね
ユタカ
…うん、よろしく
安心して
わたしはね?
みんなを助けたいの
みんなを助けたいの
ユタカ
助ける?
そう。助けるの
あなたたちは、わたしの宝物だからね?
ユタカ
宝物…?
その意味は わからなかったけれど
女の人は、ぼくらを 大切にしてくれた
だけど…
ずっとここには 居られない
みんな、お迎えが来たわよ
宝だ…
宝物をみつけた!
ユタカ
(宝物…?)
毎年「よーし」に 出る子がいた
ユタカ
(ぼくもいつか、よーしに出るのかな?)
ユタカ
ユタカ
(ちょっとだけ、こわいな…)
それから10年後
聞いて、ユタカ!
嬉しい報せよ
ユタカ
なんですか?
ユタカがね?
次の養子に選ばれたの!
次の養子に選ばれたの!
ユタカ
(ぼくの、番…)
長かったわね…
明日には、お迎えが来るわ
ユタカ
ユタカ
わかりました
ユタカ
ぼく、準備してきます
ユタカ
養子になんて、
行きたくない…
行きたくない…
ユタカ
ずっと、
ここで暮らしたい…
ここで暮らしたい…
ユタカ
ユタカ
…離れたくなんかない
ぼくは自分の本音を 紙に書くと
それを飲みこんだ
翌日
子どもを迎えに来ました
ユタカ、お迎えよ。
ご挨拶して?
ご挨拶して?
ユタカ
…はじめまして。
ユタカです
ユタカです
ユタカは、とっても頭のいい子で
運動も得意なんです
まじめに働いてくれますよ?
それはいい…
約束通り、この子をもらうよ
ありがとうございます!
どうか、ユタカをよろしくお願いいたします
ユタカ…
幸せにね?
幸せにね?
ユタカ
…はい
じゃあ、行こうか。
ユタカくん
ユタカくん
ユタカ
あの…
ユタカ
これから、どこへ行くんですか?
素晴らしいところだよ
君が生きている秘密を知る場所さ
ユタカ
生きている、秘密?
さあ、着いてきて?
ユタカ
はい
その台の上に、
横になって…
横になって…
ユタカ
…はい
よし。いい子だ…
ガチャ
ユタカ
な、何するんですか!?
ぼくの手足は 鎖で、つながれた
ユタカくん…
「呪術」で生きるって、どんな気分?
ユタカ
…呪術?
驚いた。なにも知らないんだな?
まあ、いいさ
これで、秘密がわかる
ドンッ!
ユタカ
…ぐはっ!
振り落とされたナイフが ぼくの腹を切り裂く
…ん?
ユタカ
…やめて
手応えがないな?
ユタカ
…触らないで
おかしい…。体の中に、何か埋め込んでいるはずなのに
男がぼくのお腹の中を 探る…
ユタカ
やめて…!
それは、ぼくの…
それは、ぼくの…
なんだ、これ?
…は宝物。
あなたは。
…り、どころ?
あなたは。
…り、どころ?
ユタカ
……
…そうか!在り処!
宝物は、住みかだ!!
宝物は、住みかだ!!
あの施設に「呪術」の秘密があるのか?
ふふふ。興味深い…
おい、女!
なんですか?
騒々しい…
騒々しい…
命が惜しければ、よみがえりの「呪術」をよこせ!!
銃を向けるが 女は平然としている
…呪術?
それよりも。ユタカは、どうしたんですか?
あのガキか?
アイツの臓器、
空じゃないか
空じゃないか
…なっ
子どもの臓器売買か?
やることがエグいねえ…
やることがエグいねえ…
わたしは、そんな事してません!
臓器がなかったのに?
…身体が朽ち果てる時まで、生きるために
腐りやすい臓器を抜くのは、仕方のないことです
淡々と言うけれど、恐ろしい話だなー?
悪いが、俺は気が長いほうじゃねえ…
命が惜しければ、よみがえりの「呪術」の秘密を教えな!!
それは、できません…
なに?
秘密など、ないからです
わたしはただ、子どもたちを守りたい
そう念じて、子どもたちの魂と体を繋ぎ合わせているだけ
ふざけるな!
ただの人間に、そんな事ができるはすが無いだろう!?
教えろ!
その「呪術」の秘密を!!
その「呪術」の秘密を!!
ユタカは、もう。
この世には居ないのですね?
この世には居ないのですね?
ああ。アイツなら死んだよ
ならば、遠慮はしません
はあ?
バンッ!!
なっ!
ち、血がっ…
ち、血がっ…
子どもたちを守るため
武器の1つや2つ、持っていて当然でしょう?
ぐ、うぅ…
ごめんなさい、ユタカ…
わたしは、あなたたちに
労働者として生きてほしい
労働者として生きてほしい
そう願っただけなの
それが…
こんな事になるなんて…
こんな事になるなんて…
ごめんなさい、ユタカ…
わたしを許して…
わたしを許して…
ユタカ
ぼくのために、泣かないでください…!!
その声は、ユタカ!?
ユタカ
そうです
帰って来てくれて嬉しいわ…ユタカ
ユタカ
ごめんなさい…
ユタカ
ぼくは「体」を持って
帰れなかった…
帰れなかった…
…いいのよ
ユタカ
ユタカ
これ、読んでください
この紙は?
ユタカ
ここに書いてあること
ユタカ
それが、
ぼくの…気持ちです
ぼくの…気持ちです
ぼくは、宝物…
ユタカ
あなたにとって、
ぼくは「宝物」
ぼくは「宝物」
ユタカ
その言葉が、
ぼくの支えでした
ぼくの支えでした
あなたは、より処…
ユタカ
ぼくにとって、あなたは…
ユタカ
ユタカ
心の…より処でした
ユタカ…
ユタカ
この10年間
ユタカ
ぼくを育ててくれて、ありがとうございました
ユタカ
あなたは、ぼくにとっても「宝物」です
ユタカっ…
ユタカ
そして、この家は
ぼくの 「宝物の在り処」